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アメリカで老後を送るために知っておきたいこと(2)- 老後の健康&ライフスタイル

アメリカで老後を送る

老後の生活は自分にとってはもちろん、親や子供にとっても避けては通れない道。アメリカで生きることを決めたあなたへ、今からできる備えを先輩シニアと専門家がアドバイス! (情報は2011年8月時点のもの)

※料金を含む掲載情報は2011年8月時点のものです。サービスや価格などの情報は変更、または閉業されている場合があります。

アメリカで老後を送るために今から知っておきたいこと |ページ1 »ページ2 »ページ3 »

 

年を取るにつれてかかりやすくなる病気は?

<回答|成人一般内科医 吉岡みのり先生 >

老化により病気になるリスクは高まっていきます。かかりやすい病気は人によって異なるので、年に1回は健診を受け、医師に相談しましょう。

体の老化 専門家からのアドバイス

脳梗塞・心筋梗塞

脳と心臓の病気は全く別なようですが、実は同じ原因によって起こります。ドロドロ血や喫煙によってできたプラークなどのせいで脳の血管が詰まると脳梗塞、心臓の血管が詰まると心筋梗塞に。生活習慣病(後述)の改善・治療や禁煙により、リスクを減らすことができます。

生活習慣病

糖尿病、高血圧、高コレステロール血症も年齢と共に増える傾向にあります。特に女性は閉経後に突然発症することもあるので注意してください。

がん

40歳以上で、あらゆるがんの発生率が上昇し始め、消化器系のがん(胃、大腸、肝臓)、乳がん、子宮がん、前立腺がんが上位を占めています。アメリカでは個人の定期健診(Annual Physical)でがん検診も行いますが、日本と違うのは、アメリカでは胃がんがとても少ないために胃がん検診という概念がありません。しかし、日本と同じ検査はできますので、40歳から胃がん検診(バリウム造影か胃内視鏡)を年に1度受けましょう。また近年、ヘリコバクター・ピロリという菌の感染と胃がんの関係が指摘されています。簡単な血液検査でわかるので、まだ受けてない人は1度検査を。ピロリ菌は簡単に除菌できます。

骨粗鬆症

年を重ねることにより誰でも骨の量は減ってきます。しかし、皆同じではなく、体質や生活の仕方、持病が関係して個人差が出るものです。一般に骨粗鬆症は女性に多く見られる病気で、元々骨が細いうえに閉経によって骨を作る助けとなる女性ホルモンの分泌が突然減ることが理由に挙げられます。卵巣などの手術で若いうちに人工的に閉経した場合も同じです。予防のためには運動、カルシウムの摂取(毎日1,000~1,500mg)、ビタミンDの摂取(毎日1,000~2,000IU)が大事。骨密度は簡単なX線検査でわかるので、女性は閉経後の50~60歳頃に検査します。閉経前の女性や男性も、なりやすい原因のある人は検査する必要があるかどうか医師に相談しましょう。

関節炎

長年使った関節の軟骨がすり減って、痛くなったり変形したりするのが関節炎です。特に肥満があると、関節への負担が増えるので、膝や股関節の関節炎になりやすく、ほかにも手の親指の付け根や首、腰などでよく見られます。太り気味なら体重を減らすことが重要です。

吉岡みのり先生

岡山大学医学部卒。都内の国立国際医療センターで内科研修を終えた後に渡米し、バージニア・メイソン・メディカル・センターで研修。2007年9月から同院内科外来にて勤務。 

Virginia Mason Medical Center
TEL : 206-583-2299 
www.virginiamason.org

 

老化による目と視力の変化

<回答|眼科医 ゴーント千明先生 >

40~50歳を過ぎてから、目の老化による病気も増えてきます。症状がなくても、年に1度は眼科検診を受け、早期発見に努めましょう。

老眼

年齢と共に起こる目の調節力の低下が原因となる老眼は、平均して40歳過ぎから徐々に進行。遠近のピントの切り替えがしづらくなり、すでに遠視や正視のある場合、近くが裸眼で見えにくくなります。無理をして老眼鏡をかけないでいても進行は遅くならず、むしろ頭痛、眼精疲労、肩凝りなどが起こる原因に。近視を持つ人は老眼により元来の近視が顕著となり、裸眼のリラックスした状態で本が読めるなど、初めは日常生活に支障は出ません。老眼を改善するためのコンタクトレンズ、白内障手術時に挿入する多焦点レンズ、レーザーその他の角膜屈折矯正手術などが現在開発中ですが、後者ふたつは結果がまだ不安定で1度施術を受けるとやり直しが簡単ではありません。

白内障

白内障は年齢と共に水晶体が濁ることを指し、「目の白髪」のようなもの。ただ著しい変化は視力を損ねるので、病気として手術治療をするわけです。手術は近年、とても安全に短時間で行えるようになりました。屈折異常の部分的矯正も白内障の治療と共に行えます。

加齢性黄班変性症

網膜の中心部、ものを見るうえで最も大切な役割を担う黄班が高齢になって徐々に変性していく難病。原因は遺伝的要素と環境的要素があるようです。比較的進行の遅いドライ・タイプには直接の治療法はなく、特別な調合のビタミン剤を内服することで幾分進行を遅らせることができるとされています。ウェット・タイプの場合、異常な血管が網膜下に生じ、これが浮腫や出血を起こして急速に視力が低下。このタイプに限り、異常血管を抑制するため眼球内に注射する治療薬が使われ、ある程度の効果が期待できます。近い将来には治る病気にするべく、世界中で黄班変性症の治療薬や人工網膜、幹細胞の利用法などが研究されているところです。

眼瞼下垂、たるみ

眼瞼(まぶた)の皮膚はとても薄いので、加齢性変化が早期にたるみとなって出現しがちです。加齢により上眼瞼挙筋が弱くなり、下がってくることもあります。これらは手術で効果的に矯正でき、視野欠損を起こしている場合は美容形成とは考えられず保険治療が適用されます。

ゴーント千明先生

京都大学医学部卒、医学博士。アメリカ眼科アカデミー・フェロー。ロンドン、ニューヨークを経て、2008年末にウィッビー島で開業。2011年9月半ばからグループ・ヘルスのキャピトル・ヒル・キャンパスに移り、診療を開始する。

Chiaki Gauntt, MD, PhD / Group Health Capitol Hill Campus 
TEL : 206-326-3000 
https://wa.kaiserpermanente.org/

 

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シニアとしての生き方|“老いの才覚”とは

<回答|カウンセラー 角谷紀誉子さん>

「世話をしてもらうのが当たり前」という甘えを捨て自立すべき、と書かれた曾野綾子著『老いの才覚』が日本でベスト・セラーとなっています。アメリカに住む日本人シニアはどうあるべきなのでしょう。

アメリカは車社会であることを認識する

病気やけがをきっかけに高齢者向け施設に入居し、「こんなところに来たくなかった」と何も楽しもうとしない人がいますが、自立を失うことが精神的影響を与えた例と言えます。日本のようにリハビリ後は近くのコンビニに行ける、という状況なら自立は再開できますが、アメリカで車も運転できず、歩ける範囲に店がなければ自立は成り立ちません。年齢と共にできなくなることは増えます。それを否定したり嘆いたりする前に、歩いて生活できる環境に引っ越すことを早いうちから考えましょう。

子供を自由に巣立たせる

言語や文化など、海外での子育ては大変。「育てるのに苦労したから、子供は親の面倒をみるべき」と考える人は多いでしょう。しかし、就職難や、夫婦共働きが当然の経済状況で、買い物や医者に連れて行ってもらう、などを期待するのは、時間的にも経済的にも現実的と言えるでしょうか。一方、1世の親の苦労話を聞かされて育つ2世の中には「親の期待に添えない罪悪感」と「自分の思うような人生が生きられない憤り」の狭間で苦しむ人がいます。それはアメリカが個人主義の国だから。子供が育った環境の価値観や考え方が理解できれば、「子供が~してくれない」と嘆くことはなくなります。子供も生きていくのに必死なのです。

新しい目的を持つ

私のオフィスに「手術してから母が引きこもりになった」「友達が亡くなった後、父が誰にも会おうとしない」などの問い合わせがあります。彼らはそれまで活発な人達でした。できていたことができなくなる情けなさと、長年の人間関係を失った辛さで別人のようになったのです。アメリカに住む日本人は、人間関係の幅が小さいためにその中で友を失うといきなり孤独、という人は多いでしょう。渡米したころ、「人と同じ人生は嫌」「自分を試したい」「外国で生活したかった」などの開拓精神があったはずなのに、仕事や生活に追われるうちに、いつの間にか「アメリカに住む日本人」になってしまった人もいるのでは。日本人だけでなく他人種にも目を向け、勇気を出して高齢者の集まりやサークルに参加してみましょう。ボランティアをしたり、新しい趣味を見つけたり、勉強を始めたりすると、「生きるハリ」も見つかります。そうした媒体があれば言葉の壁も低くなるものです。

「日本だったら」と向き合う 

「日本だったらいろいろできるのだけれど……」と思う人も少なくないはず。今まで「日本だったら」を背負ってきているなら、定年や子供の成人を機に、今後の人生を日本で過ごすことを真剣に考えてみましょう。永久帰国が無理でも、親が健在なら親孝行を兼ねて長期帰国する、亡くなっている場合は墓参りに、また旧友に会いに行くなどするのは精神的にも良いこと。アメリカで老後を過ごすと決めた人は「日本だったら」をきっぱりと捨て、開拓精神にもう1度働きかけ、上手に年を取ることを考えましょう。「明るくポジティブな年寄り」になることで、人は自然に寄ってきます。

カウンセラー 角谷紀誉子さん

ワシントン州認定臨床ソーシャル・ワーカー。サクセス・アブロード・カウンセリング社代表。著書に『在米心理カウンセラーが教える、留学サクセスマニュアル』(アルク社)などがある。オンライン、電話、対面カウンセリングで、海外生活の悩みに対応する。 

Success Abroad Counseling
TEL : 206-418-0600 
www.successabroadcounseling.com

 

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シニアとしての生き方|新1世は今、次世代のために何をすべきか

<回答|シアトル日系人会会長 佐々木孜さん >

戦後、日本の高度成長期にアメリカへ移住した“新1世”と呼ばれる日本人が続々とシニア世代へ突入。高齢の親、アメリカで育った子供を抱える今、私達は何を考え、行動すべきでしょうか。

私自身、1979年にシアトルに来た新1世です。シーファースト銀行(現・バンク・オブ・アメリカ)に1990年まで勤め、同僚と共にBBSインターナショナルを立ち上げて独立しました。同社は2006年に手仕舞いにするまで、それなりの成果を収めましたが、それも周りからの温かい励ましのおかげだと感謝しています。そのことが社会貢献に目を向けるきっかけとなり、以来今日までコミュニティー活動に取り組んできました。昨年から会長を務めるシアトル日系人会は役員約20名を中心に、日系コミュニティーのパイプ役として、各県人会、その他日系団体と協力しながら、奉仕活動を通して交流しています。日系人の皆さんとの関係は最近でこそなじんできましたが、最初は壁を感じました。しかし、懐に入りさえすれば尊敬の持てる方達が多く、いつも勉強させてもらっています。 現在、アメリカで私達が自由に仕事や生活ができるのは彼らの努力のおかげ。昔は情報がなかった分、日本人同士で助け合ったものですが、今はTVやインターネットがあり、みんなが個人主義の根無し草になっているように思えてなりません。また、新1世は何でも自分で切り拓いてきた“開拓者”であり、好き勝手にやりたいところもあるのでしょう。

しかし、今は日米関係が良好でも、いつどんな有事が起こらないとも限りません。いざという時のために何でも話し合って情報をシェアできる、日本人及び日系人のコミュニティー・ネットワークを持っておくべきです。特に子供達の世代は、片親のみが日本人のルーツを持つ人達も増えており、“日本”だけでつながるのは難しくなっています。彼らでも受け入れやすい形にして文化を次世代へ継承するのは、新1世の責任。私達の世代はまた、独自の文化を持つ日系人や地元の人達とのブリッジにもなれる存在です。別々に個人的なグループだけで飲み会やゴルフを楽しむのも良いのですが、そこから1歩出てコミュニティー社会とつながってみませんか。何をしても良い、何もやらなくても良い、それがアメリカです。若い時ならそれで構いませんが、そろそろ次世代のことを考えないと、それは無責任というもの。無料奉仕ですが、新しい人間関係もでき、何よりそこから得られるコミュニティーのつながりは何物にも代え難いはずです。

シアトル日系人会会長 佐々木孜さん

戦前の日本人会が再結集して戦後に設立されたシアトル日系人会で1990年代から役員、2010年から会長を務める。また、日米友好を目的に活動するワシントン州日米協会では1996~1997年度に日本生まれとしては初の会長に。日米環境専門商社、Ecore Global, Inc.会長。 

The Japanese Community Service of Seattle(JCS)
TEL : 206-323-0250

 

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