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2007年シーズンのシアトル・マリナーズ

※このページは、2007年シーズンのシアトル・マリナーズについて、2007年1月から10月にかけてのシーズン中に作成・掲載された記事を基に再編集したものです。

マリナーズは、オフ・シーズンも苦戦

  
 松坂大輔、井川慶、バリー・ジート、ジェイソン・シュミット。彼らの獲得が噂されながら、他チームにさらわれてしまったマリナーズ。このオフの補強は、シーズン同様に苦戦が続いた……。シーズンを前に、このオフの動きを総括する。
(取材・文/丹羽政善)※本文中のデータは2月5日現在のものです。
 
  
 

エース格に逃げられる……

オフの補強を振り返った時、「これで大丈夫。今季が楽しみ」という興奮がファンの間にあるだろうか。

先発投手が足りないと指摘されていた。マリナーズは、松坂大輔を見送り、井川慶のポスティングには参加したものの、ニューヨーク・ヤンキースに奪われ、大物フリー・エージェント(FA)と言われたジェイソン・シュミット、バリー・ジートにはオファーこそしたものの、それぞれロサンゼルス・ドジャース、サンフランシスコ・ジャイアンツに持って行かれた。

結果、先発ローテーションに加わるのは、ジェフ・ウィーバー、ミゲル・バティスタ、オラシオ・ラミレスという、なんとも中途半端な選手ばかり。ウィーバーは、昨年のプレーオフで優勝したセントルイス・カージナルスの一員として活躍したけれども、昨季半ばにロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイムを放出された投手。バティスタは36歳のベテランで、過去の成績を見ても68勝79敗と、パッとしない。この斜陽を迎えている投手に、マリナーズは3年で2,500万ドルも払う。

最後のラミレスは、03年に12勝4敗という好成績を挙げたが、その後はけがに泣き、昨年は5勝止まり。1年間通してローテーションを守れるのか懸念がある。ラミレス獲得で、マリナーズはセットアッパーのラファエル・ソリアーノを諦めた。右ひじの手術から順調な復調を示していた矢先のこと。これでマリナーズはセットアッパーの補強も迫られ、契約したのはクリス・リーツマ。05年にはアトランタ・ブレーブスで37セーブを挙げているが、やはり昨年は故障に泣いた。そんな投手に、マリナーズは重要な役割を託す。

リスク承知で故障明けの選手に投資

このオフ、マリナーズが契約した選手の大半が故障明けという状況。ライトを守る予定のホセ・ギーエンも、昨年半ばに右ひじを手術して、100試合ほど棒に振った。また、指名打者にとトレードで獲得したホセ・ビドロも、かつてはオールスターでセカンドとして活躍したが、最近はひざが悪く、守備に就けない。パワーも減退。そんな選手に、マリナーズはクリス・スネリングという有望な選手を、見返りとしてワシントン・ナショナルズに放出した。

ライトは、スネリングに託す手もあった。指名打者には、ベン・ブローサードがいる。なにゆえ、こうしたトレードを行ったのか。また、マリナーズが必要としていたのは、左の長距離打者。結果がギーエンとビドロなのだから、オフの苦戦ぶりがうかがえる。

確かに、このオフのフリー・エージェント・マーケットは人材に乏しく、補強が難しかった。ジートに対して、マリナーズは6年で9,900万ドルというオファーをしたという。それでも破格なのに、ジャイアンツは7年で1億2,600万ドルを提示し、ジートをさらった。年棒にして1,800万ドル。過去4年では、オークランド・アスレチックスに所属しながら、9つしか勝ち星が先行していない投手に払う額としては、明らかに異例だ。そんな市場に対して、マリナーズは他チームが契約をためらうけが人と契約するなど、リスクを知りながらもクリエイティブな投資をしたと言える。が、それでも若い有望な選手を諦めるなど、マイナスも多い。

イチローはどう判断を下すのか?

プレーオフを今季も逃せば、オフの陣頭指揮を取ったビル・バベシGMは解雇されるだろう。しかし、有望な若手は消え、残るのはベテランや、けがを抱えた選手達。それらの選手の契約を抱えたうえで、新たなチーム編成を誰が好んでするだろう。辞めれば済む問題ではない。将来への根も絶やしてしまったかもしれないこのオフの動きには、やはり失望感がある。

イチローにはこのキャンプ中に契約の更新交渉を行う予定という。彼は、チームの将来をどう判断するのか。その決断は、このオフの動きを評価するものともなりそうだ。

ついに開幕!今年こそプレーオフ出場を

  
 4月2日に開幕。オープン戦序盤の不安な立ち上がりは、「負ける」という免疫に弱くなったマリナーズ・ファンを心配させる。
2007年は、最低でもプレーオフ出場が目標。そのチーム状態を検証した。
(取材・文/丹羽政善)※本文中のデータは3月12日現在のものです。
 
  
 

投手陣の仕上がりはまずまず

3月12日の試合を終えて、マリナーズのオープン戦の成績は3勝10敗で、アリゾナで行われているカクタス・リーグの最下位。オープン戦の開幕から6連敗を喫するなどして、その後も連勝がない。オープン戦を直前に控え、マイク・ハーグローブ監督は「勝敗は関係がない。調整がすべて」と話したが、3年連続最下位に甘んじているチーム。負け癖の払拭ができぬまま、シーズン開幕を迎えたくはない。たかがオープン戦といえども……。

勝敗とは対照的に、不安視された先発投手陣の調整が順調だ。「去年は、デブだった」と自虐的に昨年の調整失敗を語るフェリックス・ヘルナンデスは、10キロ近い減量に成功して、12日現在、9イニングを投げて防御率2.00と、コンディショニングの良さをうかがわせる。新加入のミゲル・バティスタも、2試合で投げて、5回を1失点。3試合に登板したオラシオ・ラミレスも、7回を投げて、1安打、無失点という仕上がりだ。

昨年から加わったジャロッド・ウォッシュバーンも、2試合に先発して、3安打、1失点と申し分ないが、唯一、ジェフ・ウィーバーだけが4日の対サンフランシスコ・ジャイアンツ戦で、2回を投げて5安打、3失点と打ち込まれ、不安を残した。ただ、たかが1試合でのこと。まだ、調整の時間は十分にある。

投手陣の好調さもオープン戦ゆえか? そうとらえたくはないが、否定できない面もある。オープン戦の序盤は、投手陣の調整のほうが打者を上回る。オープン戦の勝敗同様、結果だけを鵜呑みにして、大きな期待を抱くことはできない。「けがなく、順調に開幕を迎えてくれれば」という、ハーグローブ監督の言葉程度のとらえ方がちょうどいい。

イチロー、城島は?

オフェンスに目を転じれば、ラウル・イバネスの好調さが際立つ。7試合に出場して、16打数8安打、1本塁打、3打点。実績もあり、これがフロックである可能性は低く、この調子なら、今年も信頼できるだろう。そのほか、主力組では、ホセ・ロペス、新加入のホセ・ビドロらがしっかりと結果を残している。リッチー・セクソンだけが、1割台の打率にあえいでいるが、毎年スロー・スターターだけに、心配はないだろう。ただ、開幕ダッシュのためには、昨季後半のセクソンが必要。できれば、開幕までにもう少し打率を上げて、リズムをつかんで欲しい。

イチロー、城島健司に関しては、全く不安を感じさせない。オープン戦でも、例えば打率をひとつの目安とするなら、22打数8安打で、打率3割6分4厘。イチローはどんな試合でも、イチローなのである。今年のオフは、フリーエージェントになる。残留は問題ないと思われるが、自ら「節目となる」と公言しているだけに、さらに飛躍したイチローのプレーを期待して良さそうだ。

2年目のシーズンを迎える城島は、昨年とは違い、リラックスした雰囲気でキャンプを過ごしていた。やはり、昨年の実績が自信。正捕手の座は揺るぎなく、「今年は無理する必要がない」と、マイペースの調整で開幕に照準を合わせる。今年は、開幕7番が予定されているが、打率2割9分1厘、18本塁打、76打点の打者が7番に座るなら、チームのオフェンスは、確実にアップする。昨年同様、クリーンアップが崩れて、城島が4、5番を打たなくてはならない場合、チーム全体の得点力が低下するだけに、「城島・7番」がシーズンを通して固定できれば、マリナーズ打線は脅威になるだろう。

さあ、開幕。4月2日からは、いきなり苦手のオークランド・アスレチックスとの3連戦が控える。昨年は、8月中旬までア・リーグ西地区の首位争いに加わったが、調子を上げるたびに、アスレチックスに足元をすくわれて、浮上のきっかけを逃した。

今季を占ううえで、まずは大事な、大事な、戦いになる。

マリナーズ、天候にたたられながらも、無難な出だし

  
 16日現在、マリナーズは5勝3敗で、地区のトップ。通常、日によって変わるこの時期の順位が大きな意味を持つわけではないが、3年連続最下位を味わったチームにしてみれば、結果が必要。
悪天候にたたられて、試合消化に苦労しているが、まずは無難な出だしを切ったと言えそうだ。
(取材・文/丹羽政善)※本文中のデータは4月16日現在のものです。
 
  
 

悪天候で選手は調整に苦慮?

4月15日までにマリナーズは、13試合を消化するはずだったが、開幕3試合を勝ち越して訪れたクリーブランドの地で大雪に見舞われると、4試合すべてが中止に。また、対ボストン・レッドソックスの3試合目も雨のために中止となり、計5試合が消えた。そのためにチームは、16日現在、5勝3敗と勝ち越しているものの、まだ開幕10試合にも届かない。
試合間隔が開いた関係で、打者がむしろ、リズムを狂わされたと言えよう。例えばイチローは、4月10日の対レッドソックス戦で3三振を喫すると、13日のテキサス・レンジャーズ相手にも3三振と精彩を欠いた。10日は3打席連続空振りの三振で、これはメジャーに来てから初めての珍事。またこれまで、6年間で4度しかなかった1試合3三振を、3試合というスパンで2度も記録してしまったのだ。間隔が開いたことは、「関係ないですよ」と話したが、実際に試合が続くと当たりを取り戻している。

イチローが導くオフェンス

もちろん彼は、同時に微調整をしながら、軌道修正を試みていた。キャンプから、やや背中を丸めたフォームで2007年型のイチローを作ってきたが、17打席ぶりにヒットが生まれた14日の試合から、背中をピシッと伸ばす、昨年までのスタイルに変わっている。例年、4月は助走期間ととらえており、まだ試行錯誤なのかもしれないが、少しずつ、方向性が見えてきているのかもしれない。チームがまだ、戦い方を確立できない中で、イチローの復調は大きな意味を持つ。15日の試合では、イチローが出塁することで、ことごとくマリナーズはそれを得点に結び付けた。初回の先頭打者本塁打も含め、その後も、セーフティーバントで塁に出るなど、チームのオフェンスの流れを作る。今年からチームに加わり、その日に2本塁打を放ったホセ・ビドロが言っている。「彼が塁に出ると、いろんな得点パターンをクリエイトしてくれる」春先は、選手同様、チームも勝ちパターン、リズムを模索する。イチローに当たりが出始めるまで、チームは舵を失ったヨットのようだったが、彼の出塁でチーム自体も勢いづいた。

城島は隠れ首位打者?

序盤のマリナーズでは、城島健司の好調さもまた際立つ。打率だけならイチローを上回り、15日も3安打を放つと、打率は4割7分6厘にまで上昇。規定打席には1打席だけ足りないが、15日現在、メジャーの隠れ首位打者となっている。開幕当初はヒットが続かなかったものの、勝手知ったる松坂大輔と対戦してから、本来のリズムを取り戻した。
その城島は、捕手としても素晴らしい開幕を切った。昨年は期待を裏切ったフェリックス・ヘルナンデスをうまくリードすると、彼を開幕2連勝に導く。松坂と投げ合った4月11日の試合では、レッドソックス打線を1安打完封したことは、記憶に新しい。
また、先発投手5人のうち、3人が入れ替わったが、軟投派のホラシオ・ラミレス、ミゲル・バティスタらをうまく導き、早い段階で白星を付けた。城島は、「先発投手にとって、白星は打者のシーズン初安打と同じで、早く付けたかった」と話し、彼らが勝った日には、「まだまだ」と注文を出しながらも、満足そうな笑みを浮かべていた。

過密日程がもたらす影響は?

今後は、ぼんやりと見え始めたチームの勝ちパターンを確立することだが、4月上旬の天候不良が、どうチームに影響をもたらすのか。ひとまず、5月3日に対レッドソックス戦が組み込まれたが、そのためにチームは、5月1日から移動日なしで13連戦を強いられる。また、クリーブランド・インディアンズとの4試合はどこで行われるか未定で、終盤になればなるほど貴重な休日に、そうした試合が組み込まれる可能性もある。
マリナーズは今後、日程ともにらみながらの戦いが続きそうだ。

勝ち方と課題が見えたマリナーズ

  
 勝ちパターンが確立し、貯金を重ねるマリナーズ。しかしながら、投手陣の懸念は払拭されない。好調な打線の陰に隠れてはいるが、リリーフ投手陣の登板過多が心配だ。
今月末のトレード・デッドラインに向けて、戦力補強のポイントがはっきりしてきた。
(取材・文/丹羽政善)※本文中のデータは6月15日現在のものです。
 
  
 

あとひとり、投手がいれば……

この号が出るころ、貯金が「10」を超えているかもしれない。6月中旬、「9」までいって跳ね返されたが、今のマリナーズなら、その数字が壁になることはない。しかし、夏場以降の戦い方には若干の不安を覚える。

まずは、先発投手。ジェフ・ウィーバーが復帰して、少し計算できるようになったのはうれしいが、やはり先発投手陣の駒が足りていない。フェリックス・ヘルナンデスとは言わなくても、ジャロッド・ウォッシュバーン級の投手がもうひとり欲しい。ミゲル・バティスタ、白嗟承にそこまでの安定感はない。

そうした投手を獲得するにはトレードしかないが、トレードに出す戦力がいないのも今のチームの悩み。アダム・ジョーンズを出せば、それなりの投手を獲れるかもしれないが、マリナーズとしては、仮にイチローがいなくなった場合のことを考えて、踏ん切りがつかないのだろう。

ア・リーグ西地区を勝ち抜くにしても、ワイルド・カードでプレーオフに進出するにしても、ある程度勝ちの計算できる投手が欲しい。ニューヨーク・ヤンキースが、井川慶のトレードを画策していると言われるが……。

登板過多の中継ぎ投手

先発以上に不安なのは、中継ぎ投手陣か。接戦をものにするゲーム展開が増えたが、新人のブランドン・モロー、J・J・プッツ、ジョージ・シェリルの登板過多が気に掛かる。63試合を消化した時点で、プッツとシェリルは29試合に登板。モローも23試合に登板している。

より心配なのはモローのほうで、6月中旬に訪れたシカゴでは、明らかに疲れが見えていた。疲れが出れば、スピードも落ちるし、制球も定まらなくなる。さらに今は、けがという見えない不安もある。まだ、メジャー1年目。これだけの戦いを経験したことがない。登板過多による故障は、昨年のマーク・ロウで苦い思いをしているマリナーズ。モローは、来年の先発候補にも挙げられている逸材だけに、慎重な起用が求められる。

一方で、ロウがオールスター・ゲーム前にも復帰できるのでは、という憶測がある。彼が加われば、モローらの負担は軽減されるが、ロウに昨年のデビュー時のようなピッチングを期待するのは無理。登板できるようになっても、昨年のように97、98マイルのストレートは投げられない。今年は、調整と割り切って、来季に本格復帰できればいい。また無理をすれば、故障者リストに逆戻りである。

イチロー、城島が好調

さて、そんなこんなで、勝ってはいるが、内情は火の車。先発投手が6回途中までで降板するケースがほとんどだけに、マリナーズは1試合で4、5人の投手を平均して使う。勝っている場合は、それこそ、同じような継投をマイク・ハーグローブ監督は好むだけに、ますます同じ投手がマウンドに上がることになる。もちろん、マリナーズはそうした形で勝ちを重ねて来たが、6月14日の試合では、モローが打たれて、それが崩れた。見直しの時期かもしれない。

対照的に打線は安定。リーグ・トップクラスの打線が、不安定な投手陣を支えている。そして、オフェンスをけん引しているのが、イチローであり、城島健司。ふたりがチームの首位打者争いをしており、6月12日には、1日だけのことながら、城島の打率がイチローを上回った。その時、城島がア・リーグの打率6位タイでイチローが8位だった。このふたりにつられるように、ホセ・ロペス、ユニエスキー・ベタンコートも打率を上げてきた。リッチー・セクソン、エイドリアン・ベルトレが相変わらずだが、彼らの不振を今の打線は感じさせない。確かに打線は水物だが、大崩れしないとも予想できる。

さて、そうなるとやはり投手陣。7月のトレード・デッドラインをにらんで、マリナーズに必要な補強は見えてきている。

来季に向けたマリナーズの課題は?

  
 マリナーズのシーズンは、今年も終わってしまったのか。それとも、プレーオフに進出しているのか。
これを書いてる時点では、まだその行方がわからないが、来季に向けての課題は明確。
今月は、それをテーマとして話を進めていきたい。
(取材・文/丹羽政善)※本文中のデータは9月14日現在のものです。
 
  
 

笑うのか、沈むのか……

この号が出るころ、マリナーズは笑っているのか、それとも6年連続でプレーオフを逃し、沈んでいるのか。
いずれにしても、原稿を書いている9月14日現在では、ア・リーグ西地区首位のエンゼルスに対して8.5ゲーム差の2位。ワイルドカード争いでは、首位のヤンキースに5.5ゲーム差の3位。ワイルドカード争いについては、昨年のア・リーグを制したタイガースも2位で頑張っており、マリナーズとしては非常に厳しい状況だ。

ただ、ポストシーズンに進出する、しないに関わらず、このページは今年最後となるので、今月は来季に向けての課題について触れたい。

まず、マリナーズは今年、打線の踏ん張りで、9月までペナントレースに参加した。しかし、8月の終わりから9連敗した時には、懸念とされていた投手陣が崩れて、チームも失速している。今オフの課題―補強は、まずは昨年同様、先発投手陣の整備ということになる。

気になる先発陣

来季の先発を考えた時、契約の関係もあって、フェリックス・ヘルナンデス、ミゲル・バティスタ、ジャロッド・ウォッシュバーンの3人は、決まりである。今年は、ホラシオ・ラミレスとジェフ・ウィーバーが、4番手、5番手を務めたものの、おそらくそのふたりは姿を消す。ふたりとも契約が切れるうえ、マリナーズとしては、期待を裏切ったふたりと契約延長することはあり得ないだろう。
ならば、あとふたりの先発を必要とすることになるが、もしマーク・ロウが中継ぎとして完全復帰できれば、マリナーズとしてはブランドン・モローを先発に回すプランを描いているよう。彼に関しては、ストレートは申し分ないが、変化球の制球などに難。春のキャンプで、そうした課題がどこまで克服できるかが彼の来季を決めることになる。

もうひとりの先発に関しては、残念ながら内部に候補がいない。今年のドラフト1位で獲得したフィリップ・オーモントの評判が良いが、まだ高校を卒業したばかり。彼がローテーションに加わるのは、早くても2年後だろう。

となると、後はフリーエージェント頼み。だが、昨年のバリー・ジート(ジャイアンツ)、ジェイソン・シュミット(ドジャース)のような大物が存在せず、そこから信頼できる投手を獲得することは難しい。ただ、チームは広島カープの黒田博樹投手に興味を示しているとされ、彼を獲得できれば、いきなり先発の2番手の投手を得ることになる。

今の路線を継承するためには

打線に関しては、もしホセ・ギーエンが残留すれば、大きな変化はなさそうだが、リッチー・セクソンの契約が来季で切れることから、シーズン前にトレードすることは十分に考えられる。また、ラウル・イバネス、ホセ・ビドロの契約も来年で切れるので、マリナーズとしてはそうした選手に対する対応も迫られる。例えば、頭角を現したアダム・ジョーンズをレフトに固定するなら、イバネスを一塁か指名打者に回さなければいけない。指名打者にすれば、今度は現在の指名打者のビドロの処遇を考えなければいけない。その場合、可能性としてはビドロのトレードもある。

もちろん、城島健司捕手の契約も来季で切れるので、チームとしては今年のイチローのように、シーズン中、もしくはシーズン前の契約を目指すことになるだろう。今、ジェフ・クレメンテ捕手ら若い選手が台頭して来ているが、まだまだ、城島の技術には遠く及ばない。マリナーズが今の路線を継承するには、ぜひとも城島の力は必要だ。

さて、ざっと来季に向けて必要なことを書いて来たが、極論を言えば、先発の2番手を任せられるような投手が、捕れるかどうか。それを米球界で探すことが難しいなら、なんとか黒田と契約して欲しいところ。実現すれば、その効果は計り知れない。

最後に―。監督問題だが、ジョン・マクラーレンの解雇を噂する流れもあり、その場合は、千葉ロッテで監督を務めるボビー・バレンタインが就任するのではないかという噂がある。ここに何かがあるとしたら、10月中にも動きがあるはずなので、注目したい。

丹羽政善
『スポーツ・ヤァ!』や日本経済新聞、MAJOR.JP、ESPN.COMなどに寄稿するスポーツ・ライター。
Mariners Updateの執筆は2000年3月より。