シアトルの生活情報&おすすめ観光情報

アメリカ・シアトルで釣りざんまい

釣りと妻と動物をこよなく愛するサラリーマン釣り師による、アメリカ・ノースウエストでの釣り指南
(文/げどます)

第1回  秋~冬にかけてのアメリカでのイカ釣り

ブレマートンやシアトル近辺の桟橋などに行ってみると、夏の終わりから冬にかけて、細い竿で夜間に釣りをしている人達を見掛けます。また、ベテランらしき人となると、車やボート用のバッテリーをつないだライトで海面を照らしている人もいますが、実はこの人達はイカ釣りをしているのです。この辺りで釣れるイカは、カリフォルニア・ヤリイカと呼ばれる小~中型のイカで、全長は10~20センチほど。炒めても揚げても、軟らかくおいしいイカです。

ワシントン州の場合、釣るにはライセンスが必要ですが、イカ釣りに必要なライセンスは「Saltwater license」ではなく、「Shellfish license」なので要注意。リミットは10パウンドまで。仕掛けは細い竿とリールに直結で、小型のイカジグ(Squid Jig)と呼ばれる疑似餌を結びます。ジグはアウトドア専門店ほか、桟橋で手作りのものを売っている人から買うこともできます。工場で大量生産されている市販のジグはあまり効果がないようで、ローカルの人達が使っている手作り風のジグを購入して使うのをオススメします。郷に入れば……というやつです。

釣り方は至って簡単。桟橋からジグを軽く下手投げで落とし、適度な深さまで沈めた後は、竿先を使ってしゃくり、イカの食いを誘います。イカは夜間にエサを求めて動き回るようで、そのためライトを海面に当てる人もいますが、ジグを投入する前にジグの蛍光部分に光を当てて光らせるのも効果的。初心者は、ライトを持って来ている人の近くで釣らせてもらうのも良いでしょう。当たりはとても繊細です。偶然しゃくった時にイカが乗ってくれると楽ですが、そうでない時は竿先が軽くふわっと浮くので、見逃さずにすっと竿を上げて合わせます。ずっしり重くなったらイカが乗った証拠。バレないように一定の速度でリーリング(リールを巻くこと)し、上げます。無事釣り上げたら、ジグの先を持ち逆さまにすると針の返しがないので簡単にイカが針から外れます。

イカは群れで回遊していることが多いため、ひとりが釣れると周りでも釣れ出すことが多いです。コツは小さい当たりを見逃さないこと。また釣れた時は手早くバケツに入れてジグを再投入し、群れが去ってしまう前にできるだけ釣っておくこと、あとは釣れている人と同じ色のジグ、深さ、間隔でしゃくることでしょうか。

この釣りは2月ぐらいまで続きます。寒い季節での釣りですが、防寒具を着込んで夜景を楽しみながらの釣りなんていかがでしょうか。

サーフ・スメルト
▲1回の釣りの釣果。釣果は日によってバラバラ
げどます さん
▲塩水で洗ってすぐに処理&調理(この時は一夜干し)。人によっては洗わないほうが味が落ちないと言う人も……


イカ釣り情報の掲示板
World’s Largest Squid Fishing Community
www.squidfish.net

ワシントン州魚類野生動物管理局 イカ釣り専用ページ
Washington State Department of Fish and Wildlife Squidding
http://wdfw.wa.gov/fishing/shellfish/squid

第2回  刺身で、フライで、サーフ・スメルト

まだまだ肌寒い日が続きますが、釣りの選択肢は少しずつ増えてくる時期です。今回は、アメリカで比較的初心者や家族連れでも楽しめる釣りをご紹介しましょう。

ワシントン州のエベレット・マリーナ、オーク・ハーバー、デセプション・パス付近のコルネットベイ州立公園、ラ・コナーなどでは、2月辺りからサーフ・スメルト(以下、スメルト)という魚が釣れ始め、場所によっては夏や通年釣れるところもあります。

この魚は、日本で言うところのキュウリウオ科のワカサギやチカなどの仲間のようです。銀色で細長く、全長は15~20センチぐらい。身は透明がかっていますが、刺身でもおいしく、フライなどにすると絶品です。骨まで食べられるので子供にも好まれやすいです。

実はワシントン州では、この魚を釣るにはフィッシング・ライセンスがいりません。しかし、外道としてニシンなどが釣れることがありますが、これらの魚をキープするにはライセンスが必要なため、たいていの人(14歳以上)はライセンスを持って釣り場に向かうか、またはニシンなどの魚が釣れたら近くの人にあげてしまうようです。たまに「ライセンスないんだけどニシン釣れちゃったー。誰かライセンス持っている人でニシンをもらってくれませんかー」と聞いて周る人も見掛けます。

リミットはニシンやイワシ、アンチョビなどと合わせて10パウンドまで。スメルトのキャッチ&リリースは違法だそうです。

仕掛けは簡単。日本でアジやイワシなどを釣る時に使うサビキ仕掛けをリールのラインに直結し、いちばん下におもりを付けるだけです。場所によっては、そのまま真下に下ろすだけだったり、下手投げで少しキャスティングしたりすることもあります。一概にサビキ仕掛けと言っても、物によってはビーズや魚の皮が付いていたり、ゴムだったり、ちょっとした差で釣果にも差が出ることがあります。これだけは実際に試してみてください。スポーツ用品店や釣具店で「Smelt Jigs」または「Bait Rigs」などの名前で売られています。

釣り方は、少し遠くに投げてからリーリングするか、または真下に下ろして、後は仕掛けを上下させるだけ。魚が掛かると竿先がぶるぶる震えるので、リーリングして魚を取り込みます。魚をハリから外すのも簡単、ハリの柄を持ってバケツの上で振れば外れます。魚に触る必要すらありません。

2月26日(土)、ラ・コナーで、スメルト・フィッシング・ダービーが行われます。参加費は$2で、年齢別に「いちばん長い魚」「いちばん小さい魚」「いちばん変な魚」などのユニークな審査対象で賞品がありますので、多くの参加者に何らかの賞が与えられるのではないかと思います。ご家族連れで参加されてみてはいかがですか。

サーフ・スメルト
▲刺身でもフライにしても◎のサーフ・スメルト
げどます さん
▲掛かると釣り竿が震え出す。写真の釣り場はエベレット・マリーナ


スメルトの釣り場、レシピなどの総合サイト
Smelt in the Northwest
www.angelfire.com

第3回  初心者にオススメ!今が旬のニジマス釣り

夏時間になり、日が沈む時間も遅くなってきましたね。気温も上がり過ごしやすくなってきたので、ピクニックを兼ねて湖にニジマス(Trout)釣りなどいかがでしょうか。

この季節、ワシントン、オレゴン両州共に、いくつもの湖でニジマスが放流されます。放流直後は魚も群れで放流場所付近を泳ぎ回っていることが多いようで、結構簡単に釣れるので、初心者や子供連れの方は放流直後の湖を狙ってみるのがオススメです。放流場所や日時は、各州の魚類野生動物管理局ウェブサイトにも記載されています。結構混み合っていることもありますが、そのような場所は釣れる可能性が高いと思って良いでしょう。ルールなどの確認も忘れずに。たいてい2~5尾がリミットですが、場所によってはエサ釣りの禁止や禁漁期間が設定されているところがあったり、最低サイズが決められていたりする場合があります。また、ライセンス不携帯やルール違反で捕まると罰金です。ライセンスは、州の魚類野生動物管理局ウェブサイトやスポーツ用品店などで購入できます(ワシントン州は4/1~翌3/31、オレゴン州は1/1~12/31が有効期間)。

ニジマスは日本でもスポーツ ・フィッシングの対象魚として人気が出てきていますが、原産地は北米。肉食で結構活発なので、ハリに掛かった時のファイトもなかなかです。日本ではニジマスを狙う時にはイクラなどを使ったエサ釣り、フライ、スピナーやスプーンなどのルアーを使った釣りなどがポピュラーですが、それに加えこちらではミミズを使ったエサ釣りのほか、パワーベイトと呼ばれる人工のエサを使ったエサ釣りもあります。そのパワーベイトの一種であるパワーエッグというものを使ってみるのがオススメです。これはパチンコ球ぐらいの大きさになっているので、こねる必要もなくハリに刺すだけで、しかもハリから落ちにくいため初心者向きです。聞くところによると、この人工のエサは孵化場で使われているエサと同じ材料で作られているそうで、だからよく釣れるんだそうです。

エサを付けて投げ込んだら、あとは待つだけ。遠くに投げれば良いというわけでもなく、放流直後などは足元で釣れる時もあります。パワーエッグは、ほとんどハリから落ちないので、投げたらしばらくそのままでも大丈夫です。しばらく経ってもあたりが来ない時は、投入する場所を変えてみましょう。

竿先が大きく震えたらあたりです。竿を持ち、次のあたりで合わせてハリ掛かりしたらリーリング開始。ニジマスは活発に動いている時は、特に積極的にエサを食べるので、動作を合わせます(合わせる必要もなく魚がハリ掛かりしてくれることも少なくありません)。エサを飲み込んでしまう場合もたまにありますが、1度ハリ掛かりした魚に逃げられるということはそれほど多くありません。

釣れた魚はそのまま持って帰り、塩焼きでもムニエルでもお好きなようにどうぞ。
それでは Good Luck!

サーフ・スメルト
▲じっくり待つのも、楽しみのひとつです
げどます さん
▲サイズもいろいろですが、くれぐれも規定は守りましょう


ワシントン州の魚類野生動物管理局による放流情報はこちら

オレゴン州魚類野生動物管理局による初心者向けページはこちら

第4回  桟橋から気軽に楽しめるカニ取り

アメリカのパシフィック・ノースウエストの夏は、いろいろとアウトドア・アクティビティーの選択肢があって楽しいですね。今回紹介するのは、家族でのんびりできる桟橋からのカニ取りです。オレゴン州なら湾内や桟橋からのカニ取りが年中OKな場所もありますし、ピュージェット湾のように制限がある場所もあります。これは各州の情報サイトで確認が必要です。

まず必要なものはシェルフィッシュ・ライセンス。ワシントン州のピュージェット湾などは、ライセンスのほかにCatch Record Cardsと呼ばれる用紙が必要な場所もありますので注意を。取ったカニをこれに記録し、後で郵送します。ほかは何もいらないと言えばいりません。と言うのもオレゴン州の沿岸の街などでは、桟橋などで営業している店でカニ取り用のカゴ(Crab PotまたはCrab Trap)を借りることができるからです。借りる際にオススメのエサや場所などを聞いてみると良いでしょう。自分で購入する場合は、カゴ、エサ入れ、ロープが必要です。カニは、海の掃除屋とも呼ばれていますので、中に入れるエサは、鶏肉、イカ、魚など何でも大丈夫。中には、キャットフード缶を使う人もいます。手羽先やドラムスティックの鶏肉はカゴに括り付けやすく落ちにくいので結構オススメです。

ロープの片方は桟橋に、もう片方はエサを付けたトラップに結び、海面に投入! 底に着くまでロープを出してやり、あとは待つだけです。トラップの種類によっては、カニが1度入ったら出られないものもあれば、出入りが自由なものもあります。後者は、取れたカニに逃げられないよう頻繁にトラップを上げてみましょう。

さてカニが取れたら、そこからが勝負どころ。カニのハサミに挟まれないように注意しながら、オスかメスかを確認しましょう。持ち方の基本は、ハサミの付け根の近く、甲羅の部分(左右の端)を持てば、カニはそれ以上後ろにハサミを振りかざすことができません。おなかの部分がおにぎり型に広いのがメス、細いのがオスです。そこで卵を持つらしいので、メスのおなかの部分は広いのだそうです。なぜ性別が重要かというと、オレゴン州とワシントン州ではメスのカニはキープできないからです。次にサイズ。オレゴン州ではダンジネス・クラブの甲羅の横幅が5.75インチ、ワシントン州では場所によってサイズの最低限が異なりますが、大抵の場所は5.75~6.25インチの間のようです。Crab GaugeまたはClam Gaugeと呼ばれるプラスチック製の定規みたいなものがスポーツ用品店などで売られているので、それを使って測ると便利です。正しい測り方は、各州のホームページを参照してください。わからない場合は周りの人に聞くのも手です。

さて、取れたカニはオスで最低の幅以上でしたでしょうか。両方共OKならキープで、リミットの数まで続けることができます。それでは良い釣果を!

サーフ・スメルト
▲カゴの形は、四角いものもあれば筒型などさまざま
げどます さん
▲これはメス。すぐさま海に返します


ワシントン州のカニ取りルール
およびシーズンの情報
http://wdfw.wa.gov/fishing/shellfish/crab/

オレゴン州のカニ取りルール
およびシーズンの情報
www.dfw.state.or.us/MRP/shellfish/crab/index.asp

第5回  寒さに負けずレーザー・クラム掘り

寒くなってきましたね。今回は釣りではありませんが、秋から春までの限られた期間だけできる潮干狩りを紹介します。普通、潮干狩りというと春や夏にするのが一般的ですが、今回のターゲットはレーザー・クラム(Pacific Razor Clam)です。日本ではマテ貝と呼ばれる細い貝が近いものの、大きさも太さも違います。

オレゴン州では多くのビーチで通年解禁ですが、ワシントン州はかなり場所も期間も限られています。秋から春に掛けての大きな干潮の時に解禁になるようですが、冬場は夜にいちばん潮が引くことも多いので、真っ暗闇の中、ランタンを手に貝を掘る人も少なくありません。ワシントン州では、ロングビーチやオーシャンショアーズなど、太平洋沿岸のビーチで掘ることができます。

まず、砂浜を歩き、小さな穴や窪みなどを探します。レーザー・クラムは貝殻が非常にもろいので、クラム用のシャベルを使って掘る場合はかなり気を付けて真っすぐ下に掘らないとシャベルで貝を壊すこともあります。掘る時は慎重に、そして素早く……。なので、オススメはクラム・チューブまたはクラム・ガンと呼ばれる道具です(スポーツ用品店で購入可)。これを貝の穴の中心に置き、前後に揺らしたり、回転させながら砂の中に押し込みます。ある程度の深さまで入ったら、筒の上にある空気穴を親指で押さえ、腰を使ってガンを砂から引き抜きます。運が良ければ黄土色のレーザー・クラムがいるはずです。持ち帰って良い数は、ワシントン州、オレゴン州共にひとり15個まで。掘り方を間違えて潰してしまってもその貝を捨てるのはルール違反なので、1個とカウントしなければいけません。

この季節の海辺は風が強いし、夜間は特に寒いです。天気予報などを確認してから出掛けるほうが安全でしょう。波が高そうな日は延期するくらいの心づもりで。濡れても良いように着替えもお忘れなく。また暗いと波の動きもわかりにくく足元を取られやすいので、気を付けてください。初心者は、春先など日中の干潮に合わせて解禁となる時に行くことをお勧めします。

さばき方はこちらを参考にしてください。地元の人達は小麦粉を付けてフライにするようですが、中華風に炒めてもおいしいです。ただ、この貝は身も軟らかいので火を通し過ぎると硬くなるので気を付けて。熱湯で湯がき薄い皮をむくなど手間が掛かりますが、ここだけの話、実は刺身にしてもかなりいけます。とはいえ生ものなので、あくまで自己責任でお試しを!

ちなみに日本のマテ貝は、穴に食塩をぱらぱらと振り掛けると外に飛び出て来るそうですが、こちらのレーザー・クラムはどうなんでしょうね。1度試してみたいと思いつつ、食塩を持っていくのを毎回忘れるげどますでした。

(2011年12月)

クラム・ガン
▲クラム・ガンがあれば、比較的容易にレーザー・クラムをゲット可能!
レーザー・クラム掘り
▲殻の色は黄土色。壊れやすいので掘る時はくれぐれも注意を


ワシントン州魚類野生動物管理局
レーザー・クラム専用ページ
http://wdfw.wa.gov/fishing/shellfish/razorclams/

オレゴン州魚類野生動物管理局
レーザー・クラム専用ページ
www.dfw.state.or.us/MRP/shellfish/razorclams/

第6回 コアなファンにはたまらない、レッドテイル・サーフパーチ釣り

アメリカ・ノースウエストの冬期は気候も悪く、なかなか釣りという気分になれないものですが、天気の良い日を狙って出掛けてみると何が釣れるのでしょう。今回は初心者・一般向けではないものの、この期間でも釣ることができる珍しい魚をご紹介しましょう。専用の道具などがいるため、あくまでもご参考程度に。

狙う魚はレッドテイル・サーフパーチ。ウミタナゴ科の魚です。ウミタナゴというと、私の勝手な印象では岩礁に住んでいる小さな魚なのですが、遠浅で底が砂地の、いわゆる私達が夏に泳ぎに行きそうなビーチで釣ることができるのです。ワシントン州ではオーシャン・ショアーズやロング・ビーチなどでも釣れます。大きさは全長 20~ 30センチ程度。形は鯛をもう少し平べったくした感じで、銀色の体に薄く赤い縞が縦に入り、ヒレも赤いのが特徴。これまた個人的な視点ですが、日本の川でよく見掛けるフナを大きくして色を付けたような感じです。
この魚はウェーダーと呼ばれる胴まである長靴 (ネオプレン製がオススメ) を履いて、膝から股ぐらいまで水に浸かり、打ち寄せる波に打たれながら釣ります。冬は波が高く風も強くなるので、事前に波の高さや天候などを確認してから行くのが必須。なぜなら波で体が倒れ、ウェーダーに水が入って溺れることがあります。それ以前に魚も岸に近付かないので行くだけ無駄なのです。

仕掛けは、2~3 オンスの重りをいちばん下に着け、枝針を2本ほど出したものが一般的です。エサはシャコのようなサンド・シュリンプ、エビの切り身、レーザー・クラムなど、匂いが強いものが良いようです。釣り方は、波が引いた時を見計らって海に入りキャスティング。波が崩れる所では、砂が巻き上げられエサを見つけやすく、そこに魚が集まってくるようなので、エサが落ちない程度にできるだけ遠くに投げます。着水したら波が打ち寄せる前に浅い所まで戻ってきます。そして急いでラインの弛みを取り、アタリを待ちます。アタリは短く鋭いのが多いので、神経を集中しましょう。夏の食欲が旺盛な時は向こうあわせ (魚が思いきりエサを奪い持っていこうとするので、魚が自分で針がかりすること) も珍しくありません。

卵胎生であるこの魚は、夏に卵を体内で孵化させ、子を産みます。そのために春先から夏に掛けては食欲も旺盛で、そのころがいちばん釣れます。しかし、この季節は釣った魚をさばくと、中から小さいレッドテイル・サーフパーチがたくさん出てきたりするので罪悪感もマックス。しかも、メスによっては釣られた時に最後の手段として子を無理やり産んでしまうこともあるので、人によってはこの季節には釣らなかったり、すぐにリリースします。魚の数が減らないように、私達釣り人もできることはすべきだと思います。

身は透明で、刺身にするとちょうど良い歯応えがあり、煮ると身が締まり味がよくつきます。塩焼きというシンプルな料理でもかなりおいしいです。

ちなみに、実際にこの魚を見てみたい方は水族館に行くと展示されていることがありますよ。

(2012年3月)

クラム・ガン
▲冬の釣りは顔まで防寒し、完全防備
レーザー・クラム掘り
▲赤いヒレが目印のレッドテイル・サーフパーチ


第7回  ジョージ・ワシントンも釣ったシャッド(ニシンダマシ)

暑くなってきましたね。付近の湖での釣りも解禁され、ワシントン州では釣りライセンスの新しい年度も始まりました。さて今回は、アメリカで古くから釣られている魚をご紹介しましょう。American Shad(以下、シャッド)と呼ばれる魚、日本ではニシンダマシ、ニシンモドキという名前が使われており、コノシロなどにも近いようです。最初は東海岸だけにいたものがカリフォルニア州、そしてパシフィック・ノースウエストでも放流され定着。古くは、かのジョージ・ワシントンも網で捕まえては出荷していたそうですよ。

ノースウエストの釣り場で有名なのは、オレゴン州ポートランドから東にしばらく走った所にあるボナビル・ダム(Bonneville Dam)の下流付近。ウンプクア川やコロンビア川界隈でも釣れますが、ダムのすぐ下流という場所柄、魚達が集まりやすく、ここではメモリアル・デーの祝日から6月に掛けて、岸に釣り人達が肩を並べています。この人達の多くは、インターネットでシャッドの遡上数を調べていて、多くなってきたら繰り出すのです。

仕掛けは小型の竿とリール。ニジマスが釣れるならシャッド釣りにも使えると思います。流れの中、少しずつ引きずってこれる程度の重りを付けて、リーダーとフック。ハリのサイズは2以下でしょうか。そして疑似餌にはビーズや専用のシャッド・ダートと呼ばれる物を使用。初心者は、ビーズのサイズや色で悩むより、アウトドア・ショップや釣り専門店でシャッド・ダートを購入されるのが良いと思います。場所によっては根掛かりが多い所もあるので、仕掛けやタックルの予備は十分に用意しておきましょう。

一般的な釣り方としては、少し上流に投げ込み、重りが流れに転がったら、ゆっくりリーリングして重りを底に引きずります。そして下流に仕掛けが流れ、岸または隣の人の仕掛けに近づいたら仕掛けを上げて、また上流に投げます。アタリは「くんっ」という短いあたり。シャッドは口が強いわけではないので大きく合わせる必要はなく、鋭く短く竿をスナップしハリにかけます。川の流れに逆らい上流まで遡上する、泳ぐ力が強い魚なので、なかなか良いファイトを楽しむことができるでしょう。無事、魚をランディングすることができたら、早めに締めて内臓を出すこと。これも罪悪感満点ですが、ニシンやイワシに似て傷みやすいのです。そして氷の入ったクーラー・ボックスに入れておきましょう。食べ方は塩焼きでも十分においしいですが、小骨に注意。圧力鍋で調理すると小骨がかなり軟らかくなるのでオススメです。卵は、魚卵を食す習慣のないアメリカ人ですら食べるほど美味。釣れた魚がメスだったらぜひ卵を調理してみてください。

数とサイズのリミットはオレゴン州、ワシントン州共にありません。しかし、必要以上にキープする必要はないですよね。来年もその次の年も、ちゃんとシャッドが戻ってきてくれるように適当な数で上がるのはいかがでしょうか。
(2012年6月)

シャッド(ニシンダマシ)
▲一般的な体長は40~50センチくらい。今年、げどますは薫製にチャレンジします
コロンビア川沿い
▲コロンビア川沿いは、日差しが強くても風が冷たい時もあるので寒さ対策を忘れずに


第8回  大物に挑戦! 小型船でマグロ釣り

今回は、日本人が大好きな魚のひとつ、マグロ釣りはいかがでしょう。マグロ漁船ではなく小型船に乗り、日帰りや1泊で行くのが一般的です。なお、私は船酔いしやすいので私の妻の体験談を元にご紹介しますね。

釣るのはビンナガ、ビンチョウマグロなどと呼ばれているAlbacore Tuna。全長は1メートル以上、50~60キロまで大きくなるそうです。シーズンは7月下旬~9月上旬ですが、脂の乗りなどによって、かなり味に差があるとか。この魚は冷たい水があまり好きではないので、水温が上がる夏にしかオレゴン州、ワシントン州沖では釣れません。

釣具などはすべて船が準備してくれるので、持っていくのは自分の食料、水、薬、着替え、タオルなど。服装は、濡れても、汚れても、魚臭くなっても良い格好でどうぞ。ワシントン州ではイルワコやウエストポートなど、オレゴン州ではアストリアやニューポートなどから船が出ています。日帰りの場合は早朝に出航、数時間掛けて沖に出て、数時間掛けて釣り、数時間掛けて戻るという、1日掛かりの行程です。

魚がいるはずの海域に着くと、まず船長は鳥の群れやほかの船からの情報などいろいろな手掛かりを基に、魚の群れを探すと同時に仕掛けを流し始めます。仕掛けは、魚が掛かったら手でたぐるハンドラインという方法と、竿とリールで大型を狙う方法があります。餌はアンチョビやイワシなどの小魚や疑似餌のルアーです。

50マイルもの猛スピードでエサを奪いに来るため、当たりは爆発のような衝撃があります。全身筋肉のような魚ですから、ハリ掛かりしてからも大変。船員達の応援を背に1対1の長いバトルが始まります。感触は、エンジンをふかしまくりの大暴れモンスター・トラックとファイトしている気分でしょうか。少しずつ寄ってくると逃げられ、また少しずつ寄せてくる……の繰り返し。

船員は2、3人いて、エサを付けるところから魚を上げるところまでサポートしてくれますが、1度に何人もの竿に当たりが来ると忙しくて大変。魚が掛かっている人の糸がほかの人の糸と絡まないように船内を誘導して回らなければいけないため、みんなでどたばた、わいのわいのと嵐のような忙しさになります。行きの数時間の航海で船酔いし、ぐったりしていても「群れが見つかったぞ!」の船長の掛け声で、釣り人達は復活して大騒ぎ。人間の慣れというのはすごいもので、最後のほうには船が揺れていようが魚がいなかろうが、平気で弁当をほお張ったり、デッキで波を眺めながらおしゃべりしている人もいるようです。

帰港後は、船を出した会社に魚をさばいてもらうのもよし、缶詰やフィレ、スモークなどにしてもらう手配をするのもいいでしょう。ただ、日本人は骨落ちやカマも欲しいもの……その場合はさばいてもらわずに丸ごと持って帰るのがよろしいかと思います。しかし、ただでさえ釣りで疲れているので、その夜に大型魚をさばくのは、これまた大変だったりしますが。
(2012年9月)

ビンナガ
▲ビンナガは、ノースウエストでは寿司ネタとしてもおなじみ。脂が乗れば乗るほど舌の上でとろける
小型船でマグロ釣り
▲船員達の「がんばれ~!とにかく負けるな!どんどんリールを巻くんだー!」の声に励まされながらファイト!


ワシントン州魚類野生動物管理局によるマグロ関連情報
http://wdfw.wa.gov/fishing/tuna

オレゴン州沿岸の一般情報
www.dfw.state.or.us/rr/marine

第9回 チャム・サーモンと力比べ

今回は、比較的始めやすいサーモン釣りを紹介します。狙うはチャム・サーモン。日本では、アキアジやシロアジという名前で呼ばれています。ボートをお持ちでない人はビーチ、桟橋、川岸から釣ることになりますが、私は孵化場の近くで釣ることもあります。ちょっとずるい気もしますが、孵化場は必要な数のサーモンを入れて卵と精子を採取できたら門を閉めてしまうのです。

チャム・サーモンは全長80センチ前後、重さ5~10キロぐらいの大きめなサーモンなので、その分大きなロッドとリールが必要です。私は20パウンドのラインを巻いたリールに10~20パウンド用のミディアム・ヘビー・アクションの竿を使っています。疑似餌でポピュラーなのは、7ミリほどのビーズ球みたいな「Corky」と、黄緑色の毛糸をハリの上に結んだ、とても原始的なものです。ハリは2/0など、かなり大きめ。色は黄緑色が基本ですが、食い渋っている時などは、別の色でバンバン釣り上げる人もいます。これはいろいろ試行錯誤してみてください。

釣り方は簡単。投げてゆっくりリーリングするだけ。孵化場の前では大きな群れが回遊している場合も多いので、その場合は群れの前に仕掛けがいくようにします。サーモンの体にハリが掛かると、罰金などの対象になるので注意しましょう。

口にハリが掛かるとサーモンは急にダッシュしたり、跳ねたり、急反転するので、もし近くに釣り人がいる場合は“fish on!”と伝えてください。気が利く人は、自分の仕掛けを巻き上げてくれるので、 絡むのを避けられます。また、混み合っている場所で魚を遊ばせるのは避け、できるだけ自分の前でファイトし、早く取り込むようにしましょう。チャム・サーモンは大きく、踏ん張っていても引っ張られて体勢を崩されることも少なくないので、本当に力比べです。

網がない場合は、後ろに下がって水からサーモンを抜き出して浜に上げてしまいます。網がある場合は網ですくいますが、ここでも注意。サーモンは網が見えたらまた最後の力を振り絞って抵抗するので、この時点でラインが切られることもあります。無事ランディングしたら、脳しんとうを起こさせて動かないようにしてから絞めます。この時点でエラを切ると血抜きができ、味が落ちるのを最低限に抑えることができるでしょう。

メスならイクラを作れるのもうれしいですね。身は新巻にするか、業者に持ち込み、燻製にしてはいかがでしょうか。いちばん人気があるチャム・サーモンの調理方法は燻製なので、ぜひ試してみてください。業者によっては真空パックにしてくれるので長期保存も可能ですし、日本の友達や家族へのお土産にもできますよ。

最後に、私は孵化場の入口で、閉鎖された門に体当たりして遡上しようとしているサーモンをよく見掛けます。遡上時期に入ると何も食べなくなり、しかも免疫力が下がるので体に傷跡があちこちにつくボロボロの体になります。また、メスは卵を育てるために内臓がほとんど隅に押しやられてしまうほど。次世代へ命を懸け、自分が生まれた場所を目指して進もうとするサーモンへのリスペクト、忘れてはいけないと感じ ます。
(2012年11月)

サーモン釣り。狙うはチャム・サーモン
▲旬は10月中旬~11月上旬なのでお早めに!旬を過ぎるとアンモニア臭がして味がイマイチに
軽く湯がいて薄皮を取り、しょうゆ、日本酒などのたれにひと晩漬ければ、イクラのできあがり
▲軽く湯がいて薄皮を取り、しょうゆ、日本酒などのたれにひと晩漬ければ、イクラのできあがり


ワシントン州、オレゴン州の魚類野生動物管理局サーモン釣り専用ページ
http://wdfw.wa.gov/fishing/salmon/
www.dfw.state.or.us/resources/fishing/

サーモン釣りについてのポータルサイト
http://www.salmonuniversity.com

第10回  経験が物を言う、ロックフィッシュ釣り

雨や雪が降るパシフィック・ノースウエストの冬は、釣りができないと思いがちですが、桟橋からのイカ釣りや、晩冬のサーモン釣り、東の方に行けば日本の冬のワカサギ釣りのようなアイスフィッシングなど、探せば意外とあるもの。釣り人は、結局いつでもどこでも釣る魚を見つけるものなのですねぇ。

さて、今回はロックフィッシュの話をしましょう。釣り場は、岩場での磯釣りで、ポピュラーな釣り方は2種類。魚などの切り身をエサにして上から吊り下げる浮き釣りと、エビの尻尾や魚の形をしたプラスチック・ルアーやスプーンなどのハード・ルアーを使ったルアー釣りです。また、岩場では、仕掛けを引っ掛けて失くすことも多いので、予備のハリなどもたくさん持参しての釣りとなります。ロッドやリールは中型以上の物が必要。というのも、同じ仕掛けで60センチ以上のリングコッドなどが釣れてしまうこともありますし、ロックフィッシュは力がとても強いので、強引なやり取りが必要なのです。流れが強いところではあまり浮き釣りはできないので、ルアー釣りがいいでしょう。

エサ釣りの場合はのんびり待ちますが、ルアー釣りでは何度もキャストしてはゆっくりリトリーブ(リールで巻き取ること)。ちなみにロックフィッシュは、名前のとおり岩場にいることが多いので、表層をルアーで流していてもあまり釣れません。底をゆっくりリトリーブすると、根掛かりは避けられないのです。

アタリは、浮き釣りでは波間に浮かんだ浮きが急に見えなくなるので、数秒の「間」をおいてからラインのたるみの分も考慮し思いっきり合わせます。ルアー釣りのアタリは、もっとエキサイティング。いきなり爆発があったかのような強烈なアタリかと思えば、軽く加えるだけのアタリもあり、この時は「あれ?一瞬岩に引っ掛かった?」と思うほど。経験が物を言います。

うまくフックオンできると、ロックフィッシュは必死で岩場に逃げようとし、強烈な引きでぐいぐい引っ張ります。岩場は足場も悪いのでバランスに注意しながらファイト! 20センチ程度のロックフィッシュでも馬鹿にできない強さです。とにかく岩場から離して、魚とファイトするのがコツ。無事ランディングできたら、気をつけてハリを外してください。というのも、ヒレには毒があるのです。

私のお勧めの料理方法は煮物。白身の、身が締まった魚なので、煮物や鍋に使っても身が崩れにくいのが良いですね。ちなみに、頭や骨からも良いダシが出ます。

原則的には1年中釣れますが、この魚は乱獲により数が激減したため、禁漁の場所もあるので注意しましょう。比較的繁殖率は高いらしいのですが、成長するのに7年程度掛かるのだそうです。おいしい魚だけに、乱獲には注意したいですね。

さて、釣り中級者のげどますがお届けしたパシフィック・ノースウエストのさまざまな釣り、いかがでしたか。このコラムは今回で最終回ですが、まだまだほかにも狙える魚はたくさんいます。いつか釣り場でお会いしましょう。ありがとうございました。
(2013年02月)

ロックフィッシュ
▲ロックフィッシュのヒレには毒があるので注意。身は白身、煮物ほか塩焼きや刺身で!
ロックフィッシュ釣り
▲防波堤や岩礁など、濡れている所は危険なので、滑りにくい靴やライフジャケットなどは必須


strong>オレゴン州魚類野生動物管理局ロックフィッシュ釣り専用ページ
www.dfw.state.or.us/MRP/finfish/sp/rockfish

文:Gedomasu

新潟県生まれ。小学5年の時に父の転勤でグアム島に引っ越し、そこで釣りにハマる。その後ロサンゼルス、サンフランシスコ・ベイエリア、モントレーなどを経てシアトルに至る。釣りに行っていない週末は、動物園でボランティアか家で庭仕事。