「モンテッソーリ教育」という言葉を聞きますがどのような特徴があるのでしょうか

さまざまな分野の専門家が読者の皆さんの質問にお答えします。

「モンテッソーリ教育」という言葉を聞きますがどのような特徴があるのでしょうか

＜ 回答者｜モンテッソーリ幼児教育ライセンス所持者 斉藤智美さん >

自主性、独立心、知的好奇心が育つ
モンテッソーリ教育は、イタリアの女医であり精神医学者であったマリア・モンテッソーリの、医学的かつ科学的な知識と、何千人もの子供たちの観察結果から、日常生活の練習、感覚教育、言語、算数、文化という５つの分野を体系化したもので、現在では幼稚園から高校までモンテッソーリ教育を取り入れた学校は世界中に広がっています。

教室での主人公は子供たちです。一斉教育ではなく、「お仕事」と呼ばれるモンテッソーリのアクティビティーに自分のペースで取り組むことを尊重（自主選択）。自分で選んだことは興味を持って続けられることがほとんどで、繰り返し練習していきます（集中力）。そして「できた！」「完成した！」という達成感や充実感が自立へとつながっていきます。自分ひとりで何かを成し遂げられることは、子供の心を満たします。モンテッソーリの教室では、プリントを仕上げた後のご褒美のステッカーなどは用意されていません。子供たちにとっての１番のご褒美は、お仕事を達成した際に内からこみ上げる喜び。それが自信となります。外から与えられるやる気に頼らず、内的なやる気を育てていきます。

「お仕事」は簡単なものから複雑なものへと順序立てて並んでおり、１つの活動をマスターした後には、どんなものが待っているか明確です。ガイド役の先生は、子供を観察しながら、少し難しいけれど成功する可能性の高い「お仕事」を、その子の成長のタイミングを見ながら紹介していきます。

モンテッソーリは、子供たちが自立できるように支援することで、自由になれると説きました。まさに「私がひとりでできるようになるのを手伝ってね」という子供の気持ちに応えていくのがモンテッソーリ教育です。
　
また彼女は、子供たちを観察するなかで、子供にはある特定な事柄に特別な感受性を発揮する時期（敏感期）があることを発見しました。例えば３～６歳は、感覚と運動の敏感期です。３歳くらいになると感覚器官が完成され、この頃が感覚を洗練するのに最も適した時期にあたります。モンテッソーリの教材は、すべて感覚を使って体験できる教具です。魅力的で好奇心をそそるような物がそろっています。

敏感期に合わせた5つの教育エリア
教育内容は、子供の敏感期を反映した５つの分野で構成しています。
　
日常生活（＝運動の敏感期）のエリアでは、皿洗い、料理、裁縫、生き物を大切にするなど、日常生活に関わる「お仕事」を用意。また、きちんと挨拶をする、順番を待つなどの社会生活のマナーも含みます。
　
感覚教育（＝感覚の敏感期）のエリアでは、子供たちの感覚を洗練させる手伝いを実施。整理、分類、段階付ける活動が視覚、触覚、聴覚、味覚、臭覚の種類の教具を使って行われます。
　
言語教育（＝話し言葉と文字への敏感期）のエリアでは、 ひらがなも英語もスムーズに学べる教具を用意。日常生活のエリアで、指先の筋肉が十分に育ち、準備のできた子供たちは、運筆の練習を始めます。コントロールできた線を描けるようになった後にひらがなを書く練習に移ります。無理に書く練習をするわけではないので、楽しみながら読み書きの練習ができます。
　
算数（＝感覚、数に対しての敏感期）のエリアでも同様に具体的な概念から抽象的な概念へと無理なく学べるようになっています。まずは１から10の数量を理解するために練習する活動が多々あり、それをマスターすると次に十進法や連続した数の認識へとつながっていきます。
　
最後に文化（＝感覚、文化の敏感期）のエリアになりますが、モンテッソーリはこのエリアを「Cosmic Education（宇宙的教育）」と呼びました。地学、地理、生物、時の流れ（歴史）、造形美術、道徳、音楽、体育、平和など宇宙にあるすべてが対象です。自分を理解し、自分を包む世界を理解し、愛情と尊敬の念を持って向かい合うこと、この精神が文化教育の柱です。世界平和を祈り、構築していく健全な子供を育成していくことが、モンテッソーリの掲げた文化教育とも言えます。

（2013年4月）