あーと・アラカルト 文・市川江津子


第3回 市川江津子:個展“雰囲気”


今回は遅ればせながら自己紹介を兼ねて、5月1日までベルタウンのViveza Galleryにて開催中の私の個展を紹介させていただきます。展覧会のテーマは“雰囲気:Floating Feelings”で、今まで温めてきた“雰囲気”にまつわるいろいろなアイディアを3通りの方法で計15点の作品に仕上げました。

まず、天井からつり下げられた約5メートルのインスタレーションは、ギャラリーに入ると最初に目に飛び込んでくる作品。空気中に漂う目に見えない雰囲気をイメージして制作したもので、約3,600個のクリスタル・ビーズを約600本の釣り糸に結び付け、ある有機的な形状を浮かび上がらせています。このインスタレーションは、制作から設置まで本当に大変でした! でも、作品に対面してウワーッと言って目を輝かせてくださる方々を見ると、今度は会場中を埋めつくすようなスケールのものを作りたい、などと思ってしまうのは作家の性分!?

ギャラリーの奥のスペースに点在して展示されているのは、ガラスを主体に、紙、糸、綿などを使用した立体作品8点です。どれも、吹きガラスで制作したベルのような形のガラスの中に、瞬間的な雰囲気や心を象徴するものを閉じ込めてみました。「漂う心の住みか」「うたたね:空想家お気に入りの場所」「冬眠中」「あからさまな秘密」など、タイトルは見る方と作品の間での対話のきっかけになればという思いで付けています。オープニングでとても面白かった現象は、多くの方々が「自分のいちばん好きな作品はこれで、理由は……」と私に言いに来てくれたこと。このような個人的な声は何よりも嬉しいもので、私の次の作品のアイデアにもつながって行きます。

メイン・スペースに掛けられた平面の作品6点は、墨を使って勢いよく筆跡を残したドローイングの上に有機的な形に切り取られたモノ・プリント(一品ものの版画)を重ねたものです。長時間の制作期間を必要とする彫刻作品とは相反して、墨を使ってのドローイングは本当に瞬間の集中力から生まれるもので、大好きな制作方法のひとつです。モノ・プリントは過去数年に渡って制作してきた版画の作品から、さまざまな色と形を切り取ったものを使いました。これらの作品は違った場所や時間、そして言語や個性が、あちらこちらから飛び出して来てコミュニケーションをしているような、そんなイメージで作られています。

あと2週間足らずの会期ですが、ぜひ作品を見に来てください。遠方の方は、ギャラリーが掲載してくれたオープニングの写真を楽しんでくださいね。



ギャラリー情報

市川江津子さんの作品は下記のギャラリーで観ることができます。

■Viveza Gallery
2604 Western Ave., Seattle, WA 98121
TEL:206-956-3584
営業時間:火〜土曜12:00 p.m.〜5:00 p.m.
ウェブサイト:www.viveza.com

 

市川江津子:
女子美術大学付属中学校・高校、そして東京造形大学で美術を学び、卒業後はインテリア・コーディネート、コーポレート・アイデンティティー・デザインなどの仕事に従事。東京ガラス工芸研究所の合宿に参加したことを機に、ガラス・アートに目覚め、1992年に渡米。デイル・チフリが設立したピルチャック・グラス・スクールにて学び、チフリ・スタジオで展覧会やプロジェクトコーディネートの業務に就く。2003年にアーティストとして独立。
ウェブサイト:www.etsukoichikawa.com

■市川江津子さんへのご意見・ご感想は以下までお寄せ下さい。
 web@jeninc.com