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ホームレスまでカウントダウン


極貧生活に耐えながら、今日も軽く現実逃避。夢見がちな国際結婚カップルの ちょっとおバカな日常を明るくつづる、突っ込みどころ満載のエッセイ!
 

最終回 新年の抱負

 

アメリカで迎える2回目の新年。昨年の今頃は、年始にオバマ大統領の就任が重なり、世間では明るい未来にウキウキ感があふれ出ていたが、それと反比例して無職のケベラ家では、アメリカでの将来に絶望的な気持ちになっていた。
その後、歩合制の職を得たダンナからの収入は、半年間ほとんどナシ。私のふたつのバイトでなんとかホームレスにはならずに済んでいるが、この1年の思い出はお金の心配ばかりで、ここポートランドの美しい春の草花、長い冬を我慢したご褒美のような夏の青空、色鮮やかな秋の紅葉……などは堪能することもないまま私の目の前を素通りしていった。物事がうまくいかないことをこの土地のせいにしているが、すべては私の気の持ち方が問題であることは十分わかっている。しかし、1度しぼんでしまった気持ちは、なかなか元に戻らず、毎日を淡々と過ごしてしまう。唯一の“飲み友達”であるダンナとは、お酒が入れば「次はどこで暮らすか」「いつ行くか」の話題ばかり。この土地に愛着とか執着とかが全くないことに悲しくなってくる。
そんな中、この生活から逃げるように、私は年末に日本へ帰った。10年間を過ごしたシドニー時代には1度しか帰省ぜず、両親や友達、街のあまりの激しい変わりようににあ然とし、自分がどんどん日本から離れていくのがなんだがさびしくて、アメリカに来たら何があっても年に1度は必ず帰省しようと決めていた。
空港で迎えてくれた変わらぬ両親の笑顔、80を過ぎた叔母と訪れた京都の紅葉、目移りしてしょうがないコンビニ・スイーツ、同窓生とバカ話で笑い転げた温泉宿のふかふかの布団、鳥皮がうまい焼鳥屋の赤ちょうちん、飲んでも飲んでも酒のなる木のようにビールがある実家の冷蔵庫、帰ってからの貧乏暮らしがふと頭をよぎるたびに出る「帰りたくねぇー!」の私の叫びに「帰んなさんなぁーっ!」と必ず返してくれる友達の酒焼けの声。1年間、無言で過ごしてきたかのように声がかれるまでしゃべりまくった。しゃべり疲れて店を出れば、真夜中だというのに、まだまだ元気な夜の街に安心する。大好きなものや人で凝縮されたこの時間を、帰ってからの活力剤にするかのように、ひとつひとつの思い出を頭に焼き付けていく。
もちろん、こんな楽しい時間は倍速で過ぎ去っていき、気が付けばポートランドの曇り空に向かう飛行機の中。楽しみと言えば、トランクいっぱいに買ったユニクロの服くらいで、土産話をする友達もおらず、労働力でしかない職場。私がそこに帰る意味はあるのだろうか? 自問自答しながら、格安チケットのため乗り継ぎを繰り返し、へとへとになった体を引きずってゲートを出た。そこで見たのは、あふれんばかりのダンナの笑顔。数週間の空白を埋めるように車中でしゃべり続ける彼の横顔、見慣れたハイウェイの景色、しゃべり足りずに行った近所のパブ、リビングルームの私の定位置、思わずホッとしている自分がいる。やっぱり、ここが私のホームなのだと思うと、この生活をもっと大切にしなければと自分に言い聞かせる。
新年の抱負は、今度日本に帰ったら「ポートランドは楽しいよ」と言える生活を送ること。まずは、土産に持ち帰った3キロの体重をジムで落として、どんどん外に出て飲み友達を作ろう。ま、そのためにはやっぱりお金が必要なわけで、今年も結局また働きづめでお金に振り回される1年になることには変わりないだろう。

 
Do and Do not

週末はETCを使ってどこまでも
東京・大阪の大都市圏を除いたエリア内で、ETCを使えば高速道路が上限1,000円で利用できる。実家の福岡から道後温泉のある松山まで、平日は片道約1万4,000円なので、相当割安に! 5人のぎゅうぎゅう詰めで行けばガソリン代も割り勘でかなりお得。ただし、欲張って遠くに行くと、運転でへとへとの週末になってしまうので要注意。

100円ショップに近づくな
すごいっす、日本の100円ショップ。購買意欲をかき立てる、あのごちゃごちゃ感。目に付けば、つい店に入ってしまい、気が付けばカゴいっぱい。さすがにもう買うものはないだろうと試しにまた入ってみたら、やっぱり何かを手にして店を出る。あとで「な、なんでこんなものを?」ということもあるので、目的なく入らないこと。



■ ケベラ
出身地の福岡でアメリカ人の夫と出会う。結婚15年目のぎりぎりアラフォー。約10年間のビーチ天国シドニー暮らしを経て、ポートランドへ08年9月に移住し、この雨の街に体と心を順応すべく調整中。現在夫婦ともども無職。「お金はなくとも酒は飲む」のポリシーを貫き、近所のパブのハッピー・アワーには必ず顔を出す律儀な酒好き夫婦。