最終回:みるちゃんみるみるをみるみる  
   
 

「わたし、みる。4歳。だけどお洋服は8歳用でパッツンパッツン」
……で始まった『みるちゃんみるみる』も今回でなーんと31回目。まあ、若いみそらでよくも続けたもんだわ! えらい! 幼児の鏡!

アンパンマンわかめだったわたくしも、もう6歳になり、アンパンマンが安室奈美恵のヅラかぶったような美貌に変身し(髪が伸びただけってか)、12歳用のお洋服をパッツンツンにして、ブイブイ言わせているわ。ジーパンなんてクリスクロス・アップルソースをするたびに、ウエストのボタンがはじけ飛ぶ始末。股ズレもするしさ。んで、この前、その股ズレ地帯にメンタム塗ってみたら、ももが噴火するかと思うほどヒリヒリしたわよ。

わたしったらこのままいくと12歳で24歳用のお洋服からはみ出て、24歳で48歳用! 50になったら100歳用の服、着なきゃならないのよ。きゃー、長生きしたら着るものなくなっちゃうじゃないの。アパレル・メーカーよ、わたしの成長についてこいよ!
こんなアメリカ人もびっくり!のわたしのナイス・バディーは
「おまえは、本当に半分日本人か?」
って学校で不気味がられるのよね。
「大きいことはいいことだ!」を信じてやまないアメリカ人ご父兄の皆さんは
「なんでうちの息子が日本人よりチビなんだ!」
ってアメリカ人の沽券にかかわる大問題に
「あいつら家族はドーピングしてるに違いない!」
って尿検査を強要してきそうな勢いで動転してるもんね。おかげで最近じゃ“やお子”とかって呼ばれてるわ。八百屋の子じゃないのよ、“Yao Ming子”ちゃんよ。知ってる? あのお兄ちゃん、7フィート4インチもあるのよ。この前、『キーアリーナ』でボールついてるとこ見掛けたけど、どのアメリカ人選手よりも背はデカいし、お尻もどデカくってビックリ。足も太いのよ。とってもアジアンな体型で親近感を覚えたわ。アメリカ人はヤオ兄ちゃんとかを見ても
「あいつは突然変異なだけで、ほかのアジア人はあいかわらずチビ」
ってまだ信じこんでる。アジア人がデカくて何が悪い! アジア人をナメるなよ! イチロー、佐々木、長谷川、松井の活躍を見ろ! タイガーウッズも半分アジア人だぞ。大食いだって世界一だぞ!
アメリカ人って何でも自分達が1番じゃないと、勝手なこと言いやがるのが気にいらん。うちなんかも 「おまえのおかあちゃん、本当は日本人じゃなくてビッグフットだろ」
って言われるもんね。わたしはこれからも、日米ハーフのお子様としてアメリカ人の偏見と戦い、あいつらの曲がった根性を叩き直してやるわ。

そういうわけでコツコツ31カ月間も連載しているうちに、体はとんでもなく巨大化したわたくし。この31カ月間の人生は波乱万丈! 歯抜け小僧になって美貌が台無しになるわ、ひとりっこのお嬢様だったわたしに、妹ができ
「これでわたしもビッグ・シスターだ!」
と喜んだのもつかのま、ベイビーは、実はサルだった! わたしはサルの逆襲を受ける悲劇のヒロインになってしまったのよ……。 ああ、床にごろごろお宝をばらまいて、おくつろぎできた時代が懐かしい! いまや、我が家の床上1メートルはサルの無法地帯。やつは、手にするものすべて食べるか、握りつぶすか、投げ飛ばすか、してくれる。わたしの数々のお宝コレクション(夏食ったキングクラブの殻、ひからびたカタツムリ、去年の枝豆)を破壊して回るのよ。わたしのバービーちゃん達もみんな半身不随だったり、散切り頭だったり、首ちょんぱだったりするのよ。どれもサルの仕業よ。
ひとり、ゆっくり便器に腰掛けてても、サルは「ねーねー」(お姉様の意味じゃ)とドアを押し倒してやってくる。トイレット・ペーパーをぐるぐる大回転させて、わたしのお尻を拭こうとするのよ。
学校にだって付いてきて、教室のコンピューターを叩き壊すわ、キーボードを投げ飛ばすわ、絵本を引きちぎるわ、わたしが退学になったらおまえのせいだぞ、サル!

いまや、2段ベッドの上に上ってはしごを外したひとときが、唯一の心休まる時間よ。そんな時もサルは下界から「ねーね、ねーね」と叫び回ってる。ひとり、秘宝のヨックモックをいただきながら無視してやるんだけど、このサル、恐るべし! 自分の思うとおりにならないと、床に頭をごんごん叩きつけて吼えるのよ。「うおおおお」と雄叫びあげながら、どデカいたんこぶができてもおかまいなしに、ガンガンごんごん頭つきするのよ。ばかでしょ。サルよ、人生おまえの思うとおりになんか、ならねえんだぞ。お姉様はこのわたくし。地球はわたしを中心に回っているのだ。思い知れ!
……とばかにしていたが、このサル、なかなかのサルなり。そこまでのパフォーマンスを公の場なんかでされちゃうと、ご通行中の皆様が立ち止まって珍しそうに眺めるわけさ。するとおかあちゃんがその場を取り繕おうと
「ほら、アポロチョコレートよ」
ってサルの大好物のチョコやるんだよ。するとサルは、内出血した大きなたんこぶ、ぶらさげて、にこにこチョコレートにむさぼりつくんだな。ギャーギャー騒いでもいいことないが、己を傷付けて発狂すれば親はビビってエサを与えてくれると計算づくの行為なのだよ。したたかなサルめ。次女ってのは、抜け目がないのよね。長女のわたくしのような、おっとりとした女らしさがないわけさ。 このサル出没以来
「あんたは、おねえちゃんなんだから」
「あんたの妹は、まだ人間じゃないんだからしょうがないでしょ」
とおかあちゃんもサルびいきをする。世の中不公平だ。

元祖くそがきは、このわたくし、みる怪獣だ!  思い知れ! わるがき諸君よ! 幼児期は短いが、決して聞き分けのいいがきなんかになるなよ! ちゃんと定期的に炸裂しておけよ! そうすれば親は
「いつもはいい子なのに時々キレちゃうのよね」
と、キレちゃう時用の“エサ”を常備しといてくれるぞ。
みるは来月でもう7歳。そういうわけで、わたしをとりまく環境はいっそう厳しくなってきちょるが、わたしは負けないわ! 幼児を卒業して、これからは“爆発ティーンエージャー”目指して修行するわ。だから『みるちゃんみるみる』は、これでおっしまーい。うちのサルがそのうち『みれちゃんみれみれ』なんて連載、始めるかもね。ま、あんなサルにわたしのような文才があるとは、思えないけど。わたしはあいかわらず、そのへんでくだまいてるから、どこかでばったり会おう!

みんな、いつも心にくそがきを! 忘れんなよ!

BY みる怪獣

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