English Series
注目キーワード:シアトル美容院 シアトル・レストラン シアトル地図/観光 ポートランド情報

民主党への政権交代で、歴史的大統領の誕生となるのか。世界中から熱い視線が集まる米大統領選挙をわかりやすく解説。

文/佐々田博教

最終回★★★選挙総括と米国政府の今後

金融危機打開へ向けた国民の選択
この連載も今回で最後です。1年間ご愛読ありがとうございました。最終回では、選挙の総括と共に、オバマ政権のメンバーについてお話しします。
「選挙は水物」だと言われ、予想が難しいものですが、今回の選挙もやはり意外性の高いものでした。予備選挙前に大本命と目されていたのは、共和党はルドルフ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長、民主党はヒラリー・クリントン上院議員。中道派で“一匹狼”のジョン・マケイン上院議員と黒人系候補のバラク・オバマ上院議員は、有力候補ではあったものの、最終的にこのふたりの対決になると予想した人は少なかったでしょう。
予備選はかつてないほど熾烈な争いとなり、特に民主党はクリントン、オバマ両候補が最後まで激しく候補者指名を争いました。本命候補の主な敗因としては、ジュリアーニ候補の場合、ニューハンプシャー州など予備選の序盤を無視する作戦が完全に裏目に出たこと、クリントン候補は従来型の組織を中心とした選挙戦に依存したため、オバマ候補のように若者票や浮動票を取り込めなかったことが挙げられます。
本選の序盤では、オバマ、マケイン両候補の接戦が伝えられましたが、勝負を決定付けたのは、10月頃に急速に深刻化した金融危機。それまで重要議題とされてきたイラク戦争、医療保険、移民問題などへの関心が薄れ、危機に瀕したアメリカ経済をどう立て直すかという1点に注目が集まりました。
マケイン候補は、経済分野を苦手としていたうえ、いっそうの規制緩和や市場自由化を唱えていたため、金融規制の不備が引き金となった今回の金融危機は大きな痛手に。また、副大統領候補のサラ・ペイリン・アラスカ州知事の適性が疑問視されたこともあり、オバマ候補の圧勝という結果につながりました。

オバマ政権の顔ぶれ
オバマ次期大統領は、すでに次期政権の閣僚の人選を発表。日本の外務大臣にあたる国務長官には、予備選で激しく争ったヒラリー・クリントン氏を指名しました。クリントン氏を政権に取り込むことで、党内の融和を強調する狙いがあるようです。しかし、両者の外交政策には相違点があるので、どのような政策を進めるのかが注目されます。
国防長官は、ブッシュ政権のロバート・ゲーツ現長官留任へ。政権交代をしたのに、大臣が留任することは日本では考えられませんが、イラクの治安改善をもたらしたゲーツ長官の手腕が高く評価された結果でしょう。商務長官には今回の大統領選にも出馬したビル・リチャードソン・ニュー・メキシコ州知事を指名しました。選挙戦撤退後、オバマ氏支持で貢献した功績に対する論功行賞的な人事だと言えます。
金融危機への対応に大きな役割を果たす財務長官には、ニューヨーク連邦準備銀行のティモシー・ガイトナー総裁が指名されました。ガイトナー氏は47歳の若さですが、財務分野での経験は豊富で、日本での留学・大使館勤務経験もあり、知日派だと言われています。退役軍人長官には、日系3世のエリック・シンセキ元陸軍参謀総長が指名されました。
いよいよ、1月20日に就任式を迎えるオバマ大統領ですが、未曾有の金融危機に加え、イラクとアフガンでの戦争など、かつてないほどの難題を抱えた新政権の船出となりそうです。選挙戦で発揮したような強いリーダーシップで、経済の立て直しと国際社会の安定化を実現してくれることが期待されます。

Hiro Sasada:1974年生まれ、熊本県出身。滞米歴15年。ワシントン大学大学院政治研究学科博士課程修了のPh.D.(政治学)で、専門は国際政治経済と比較政治。非常勤講師として、ワシントン大学で 日本政治や国際政治経済の授業を教えた経験を持つ。現在も同大学で研究プロジェクトに携わる。

■HiroSasadaへのご意見・ご感想は以下までお寄せ下さい。
 web@jeninc.com