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ステップ・ママ奮闘記
最終回 ギャング結成
ある週末、ケンがTシャツ用のステンシル作りに励んでいるので何かと思って覗いてみると、そこには「PINK SLIPTZ」という文字が……。

「ピンクのスリップ? そんな女っぽい言葉をTシャツに書いてもかっこ良くないよ」

と言うと、
「違う、違う! ピンクのスリッパのことだよ。これ、僕とマックで作ったギャングの名前なんだ。かっこいいでしょ!」

という返事。どうやら学校では、ギャングを作ってお互いに張り合うのがはやっているらしい。とは言っても、銃で撃ち合いをするような本格的なgangstaではなく、子供が不良に憧れて遊び半分で結成しているものだ。「ピンクのスリッパ」と日本語で言うと軟弱に聞こえるが、格好は迫力満点。本物のギャングと同じようなgang signやスプレー・ペイントをする時のロゴマークを考案したり、おそろいのバンダナを購入するなど、なかなか気合が入っている。'80年代のニューヨークを舞台にギャングの抗争を描いた映画「Warriors」を見て以来、夢中になっているのだ。

コミュニティー・センターの人気のない駐車場に近隣のギャングが結集してけんかをする、という噂を聞き付け、ケンが電話してきたのは冬休みが始まって間もなくのこと。不良生活についてはベテランのディックは「どうせ誰も来ないよ。時間の無駄」とアドバイス。その時は「じゃあ行くのをやめるよ」と引き下がったが、誘惑に抵抗しきれず約束の場所に行ったらしい。

St.Vincentでバットを買って準備ばっちりだったのに、誰も来なかったんだよ!」

と、ケンはかなりがっかりしていた。バット!? 本当に誰かが現れたら、いったいどうするつもりだったんだ? まさかバットで殴るつもりじゃなかったでしょうね?と私はいきり立ったが、よく考えると中高生が小さなグループを作って見栄を張り、挑発し合うのは日本でもよくあること。実害はあまりないと考えて今のところは黙認している。

しかし、たとえ遊び半分とは言っても、ギャング活動は学校で全面禁止になっている。先生にバレたら停学ものである。だから学校から手紙が届いた時は「バレたか!?」とドキッとしたが、開けてビックリ。なんとケンが「Student of the month」に選ばれたというのだ。放課後に表彰式があるというので半信半疑で行って見ると、本当にケンが賞状をもらっているではないか! しかも先生から「頼りがいがある。成熟している。人の手助けをよくする」などの褒め言葉をいただいた。学校からの連絡はいつも悪いことばかりだったので、夢のようである。「こんなことはこれが最初で最後かも」と思ったディックと私は、大げさにも賞状を額縁に入れて飾っている。

一方ダンは約1カ月前にXbox 360が発売されて以来、vegetableと化している。これで成績は急降下か?と思ったが、意外にも先学期はすべての科目をクリア(どの科目もギリギリだったが)。運転の方もかなり落ち着きが出てきており、今ではトレーラー付きの車や、雪の降る峠越えをこなしている。ダンもケンも最近は大きな問題を起こしていないので、少しは成長したのかもしれない。

さて、このエッセイは今回で終わりになるけれど、ダン&ケンを取り巻くドタバタ生活についてはまだまだ書きたいことがいっぱい! だからこれらはブログ(※)を活用しようと思います。短い間でしたが、ご愛読いただきありがとうございました。ステップ・ファミリーを持つ皆様、これからもがんばりましょうね!(おわり、だけどブログでつづく)

※ブログのURL:http://blog.livedoor.jp/dclarke798/


注釈
ディック……私の主人で50歳。某カーステレオ・ショップのオーナー。
ダン……生意気盛りの15歳。でもウソを付けない正直者でもある。
ケン……イタリア系の母親の血を引くイケメン顔の14歳。最近は女の子に夢中。
gangsta……gangsterの短縮でギャングスタと発音する。ギャングスターはマフィアなどの大型犯罪組織のメンバーという意味合いがあるが、ギャングスタは一般に犯罪多発地域で小規模のグループに属し、麻薬取引・暴力犯罪を行う若者を指す。
gang sign……ストリート・ギャングがお互い言葉を発さずに仲間かどうか確かめたり、違うグループの人間を挑発したりするのに使うハンド・サイン。
St. Vincent……正式にはSt. Vincent de Paul Thrift Store。サルベーション・アーミーやグッド・ウィルのような慈善中古品特売店。
Xbox 360……マイクロソフト社の最新型ゲーム機。Xbox Liveを使うと誰とでもオンライン上でゲームができるので、マイクを通して相手とボソボソしゃべったり、突然叫び出したりして気味が悪い。
vegetable……植物人間、無気力人間。
ジョーンズ・ノリコ
東京・世田谷生まれ。都内某有名女子高→青山学院大学→ワシントン大学院と進んだお嬢様で、現在はバイオテクノロジーの会社のサイエンティスト。2000年に15歳年上のアメリカ人(2人の子持ち)と結婚。期せずしてティーン・エイジャーのステップママになり、毎日奮闘。趣味は読書だが、今となっては叶わぬ夢となっている。

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