誰にでも、座右の銘と言うべきものがあると思う。僕にとってのそれは「良いことも長く続かなければ、悪いことも長く続かない」。これは瀬戸内寂聴さんの言葉で、いつも胸に留め、苦しい時も物事を前向きに考えるように努めている。
念願の店を持つまでの道のりは、ここでは書き切れないくらいやっかいなもので、精神的に本当にまいった。ようやく店舗が決まっても、金がないために、壁のペンキ塗りから床張りまで、すべて自分でやらなくてはならない。本を読んだり、インターネットで調べたり、YouTubeの動画でやり方を見たり、ホームセンターで説明を聞いたり。それと平行して、さまざまな許可書の取得も必要だ。とにかく時間と体力と忍耐力を要する日々であった。1カ月以上毎週末、文句も言わずに無償で手伝ってくれた友達にはとても感謝している。
とりあえず内装が終わっても、喜びはつかの間。オープンまでにすべての仕込みをしなくてはいけない。決めてあったメニューをいざ作ってみると、小さい店では使い切れない食材があったり、調理器具がないために仕事を中断して買い物に行ったりとバタバタの連続。メニューは大幅な変更を余儀なくされ、準備は前日の夜中まで掛かった。
そして、どうにかオープンに間に合い、08年秋、晴れて開店できた。が、お客さんが来てくれないことには話にならない。元々、繁盛していない店を安く買ったので固定客などおらず、しかも日本料理屋ではなかったため、集客は頭痛のタネであった。毎日のように近郊の会社や人の集まるところを歩き回ってメニューを配りまくるが、なかなか客は集まらない。そんな状況で、あのシアトルの記録的な大雪……。神も仏もいないのかと、うつになったのを覚えている。
そんなこんなでオープンしてから早2年。一難去ってはまた一難の連続で、今も気苦労は絶えない。けれど、やっぱり自分の店を持って良かったとつくづく思う。いろいろな人達によるサポートのおかげ以上の何者でもない。この先もいろいろな困難にぶつかるかもしれないが、何事にも前向きな姿勢で挑んでいきたいものだ。悪いことは、そう長くは続かないだろうから。
(終わり)
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