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【私の転機】ヘリテッジ大学副学長・アーツ&サイエンス学部長、ハウスオブラーメンオーナー 園田一央さん

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シアトルやポートランドで活躍する方々に人生の転機についてインタビュー

ヘリテッジ大学副学長の園田一央さんにはラーメン店オーナーの一面も。MBA取得、柔道世界選手権出場など、さまざまな経歴を持つ園田さんのパワフルな半生と転機をうかがいました。(2015年7月)

ヘリテッジ大学副学長・アーツ&サイエンス学部長、ハウスオブラーメンオーナー 園田一央さん
園田一央(そのだ・かずひろ)
熊本県出身、兵庫県芦屋市育ち。中学卒業後、15歳で渡米。92年グアム大学修士課程修了。95年、MBA取得、柔道世界選手権にグアム代表として出場。2002年ポートランド州立大学環境科学博士課程修了。08年よりヘリテッジ大学アーツ&サイエンス学部長就任。11年、ポートランドにハウスオブラーメンを開店。14年より同大学副学長。

一番の転機は15歳で渡米したことでしょう。小中学生の頃は釣りと熱帯魚に熱中し、学校の勉強は全くしませんでしたが、海洋生物だけは学びたかったんです。医師で研究者だった親父の「日本はいつも研究の内容も資金面もアメリカに負ける。研究者になるならアメリカが良い」とのすすめもあり、カリフォルニアに住むおばを頼ってアメリカの高校へ行きました。

– 柔道、MBA、ラーメン、 環境学、広がる世界と縁     
サンノゼ大学海洋生物学部を経てグアム大学に進学し、そのままグアム大に研究員として就職。大学で働くと授業料免除でクラスが取れるので、MBAを取りました。
 
グアムでの転機は柔道との出会いです。学生のすすめで始めたらはまってしまって。95年にはグアム代表として世界選手権に出ました。今は全米柔道協会の役員をしていて、大学でも教えています。
 
グアムでは珊瑚礁に住む生物が作る化学物質が研究テーマでした。でも、研究であちこちの島へ行くうち、僕の研究と現地の人が抱える問題にギャップを感じ始めたんです。島の人は化学物質より、昔よりも魚が小さくなっていることや、珊瑚礁が死んでいく理由が知りたいんです。生物から環境問題に興味が移り、生物と社会問題を組み合わせて学べるポートランド州立大学に進学しました。また、ポートランドの柔道クラブでは、妻と出会いました。
 
修了後は、ハワイにある東海大学の分校へ。東海大学は柔道の強豪校で以前から縁があったんです。しかし、数年後、妻が実家のあるトライシティーズで職を得たので、本土に戻りました。幸い、近くのヘリテッジ大学で理系出身の副学部長を探していると話があり、就職することができ、現在に至ります。
 
就職してしばらく経つと、アメリカでラーメンブームが始まり、今、ラーメン屋を始めたら流行ると思いました。MBAで得た知識を実際に使ってみたかったんです。本土に引越してから趣味が高じて始めた葉巻のオンライン販売も軌道に乗ってきており、未経験ですが挑戦してみようと夫婦で決断しました。

最初の2年くらいは、平日の大学の仕事が終わったらポートランドの店に行き、週末は朝から夜までラーメンを作る日々。今も2週間に1回は通っています。いつか、アメリカ人のランチにラーメンを定着させてみたいです。

– 副学長とラーメン店主 2つの挑戦
今、大学では管理職としてアメリカ特有の教育問題に直面しています。親に学歴がないと、可能性のある学生でも、高学歴家庭に育った学生とは生活ギャップがあり、大学を中退することが多いんです。うちの学生の多くは親が大学に行っていないメキシカンやネイティブ・インディアンで、そのような学生の力を伸ばす取り組みは全米から注目されています。例えば環境問題を白人ばかりで考えると白人の価値観による法律ができてしまいます。さまざまな人種の声を反映するには、さまざまな学生を下から送らなければなりません。
 
この壮大なチャレンジに少しでも貢献しつつ、ラーメンの店舗を増やしたいです。アメリカは先生が本業以外のことをするのを奨励するんですよ。いろんなことが試せる国なので、15歳でアメリカに来てよかったと思っています。

ヘリテッジ大学副学長・アーツ&サイエンス学部長、ハウスオブラーメンオーナー 園田一央さん
▲ ハワイ東海大学の柔道クラブにて(下段、右から4番目)。柔道は園田さんにとって大切なもの
 
*情報は2015年7月現在のものです