シアトルやポートランドで活躍する方々に人生の転機についてインタビュー
■ ポチャッと丸い、人のような形をしたChubbiesと呼ばれるフィギュアたち。走ったり、寝転んだり、ポーズを決めたり、ユーモラスなChubbiesを作り続けているアーティストの鈴木友子さんに、これまでの転機を伺いました。(2025年7月)

茨城県水戸市出身。高校卒業後、渡米。イリノイ州でコミュニティーカレッジと大学を卒業後、カリフォルニア州立大学ロングビーチ校の大学院を修了。結婚、出産を経て2010年にシアトルへ。2019年からフィギュアを作り始める。2025年、シアトルのShift Galleryで個展「Glow」を開催。好きな食べ物はユッケジャン。
https://bosatsufactory.com/
ー渡米し、アートを学ぶまでの経緯を教えてください。
子どもの頃から、日本ではないどこかに行ってみたい気持ちがあり、高校卒業後は叔父の住むイリノイ州へ。コミュニティーカレッジで英語を学びました。ESLも、自分の中から自然と音楽が湧いてこなくて…。けれど、アートは自分の中からアイデアが自然と出てくるので、アートを専攻することにしました。さまざまな表現を学ぶ中で、良い先生との出会いがあり版画を専攻。さらに、カリフォルニア州立大学大学院に進みました。
– 大学院卒業後の進路は?
カレッジで講師をしたこともあったのですが、大学院修了後わりとすぐに結婚し、長女を産んだので、長く主婦をしていました。2010年、夫の転職を機にシアトルへ引っ越し、その後、次女を出産。子育てや日々の生活があると、自分の制作に専念するなんて無理で、それでも何かやらなくてはと、自宅に子どもを集めてアートを教えたこともありました。次女が少し大きくなってからは、シアトルのギャラリーショップKoboでアルバイトを始めたり、カークランド市のプログラムでアートを教えたりもしたのですが、私のやりたいことってこれなんだっけ?と違和感をどこかに抱えていました。
ー なぜ、フィギュアを作るようになったのですか?
2019年、粘土で小さなフィギュアをいくつか作ってみたんです。焼くためにシアトルの窯へ持っていくと、スタッフに石膏で型を作ればフィギュアを大量生産できると言われたので、石膏型の作り方を学ぶクラスを取りました。そんな時に新型コロナウイルスが発生。転機と言えば、コロナ禍かもしれません。アルバイトもカークランドのプログラムもなくなり、窯も閉まってしまったので、自分の作った石膏型からフィギュアを作り、小さな窯を買ってガレージで焼き始めました。
ー 友子さんが作り続けている、人の形をしたChubbiesという題材はどこから来たのでしょう?
少しずつ形は変わってきていますが、大学院の頃から作り続けています。私は抽象画が好きですが、抽象画は「よく分かんない」などと言われがちです。でも、私はみんなが楽しめるものを作りたいんです。そこで学生時代、丸を描くうちにChubbiesのような人の形が生まれました。力士とか太った人を描きたかったのではなく、重くて飛ばなそうなものを軽く見せることを考えるうちにああなったんです。顔も性別もないのは、見た人に委ねられるものを作りたかったから。Chubbiesは版画や絵でも表現していて、2019年に初めて作ったフィギュアも、最初はChubbiesの写真を撮ることが目的でした。
ー Bosatsu Factoryというプロジェクト名もユニークですね。
大学院卒業前後に名付けました。子どもの頃から親や周りの人から教えられた仏教の教えは身近で自分の中にあるものだったんです。蓮の花、矢印、船など仏教と関係するものをChubbiesと組み合わせることもあります。Factoryと名付けたのは、いつか作品をたくさん並べて売りたかったからです。アートは自分のためでもあるけど、人のためでもあり、人のためなら受けるものを作りたいという思いが昔からあります。音楽や舞台は観客のために行うのに、アートの観客がいなくても自分の作りたいものを作ることや自己表現を求められるところが好きではなくて、私は商業と芸術作品の間を行けたらいいなと思っています。
ー どのように制作と販売を続けていったのですか?
ストリートフェアやクリスマスマーケットなどでChubbiesのフィギュアを売りました。そこで知り合った人とつながり、美術館のショップなどにも置いてもらえるように。でも、家族と犬を連れ、たくさんのフィギュアを車に積んで各地のマーケットに運んで、それでも売れない日もあって、なんだか疲れてしまって…。1度はやめようと思ったんです。ところが、今年1月、『Artful Home』というアートカタログに作品が掲載されると、Chubbiesのフィギュアの注文が大量に入ってきました。作品が売れるとやる気が出ます。さらに2月にはシアトルのギャラリーで個展を開くことができ、作家として少しスケールアップできました。今は7月のシアトル・アートフェアの準備中で、これまでより大きな作品を出す予定です。私の頭の中にあることは誰にも真似できないので、AIや機械にはできないものを作る自信はあります。将来はスタジオを借りて大作にチャレンジするのもいいかもしれないですけど、今の私には、子どもの送迎をしたり、ご飯を作ったりしながら自宅のガレージで作り続けていくのが合っているかもしれないと思っているところです。

▲Seattle Art Fairは2025年7月17日(木)〜7月20日(日)、Lumen Field Event Centerで開催。友子さんの作品はShift Galleryのブースで出品されます。
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(ライトハウス編集部)




