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【私の転機】在シアトル日本国総領事館 首席領事 津下陽子さん

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シアトルやポートランドで活躍する方々に人生の転機についてインタビュー

2025年7月、在シアトル日本国総領事に首席領事として着任した津下陽子さん。シアトル領事館の領事を統括し、総領事の不在時には総領事代理を務めるお仕事です。長く、モンゴルと日本の間で活躍をしてきた津下さんに転機を伺いました。(2025年11月)

在シアトル日本国総領事館 首席領事 津下陽子さん
津下陽子(つげ・ようこ)

奈良県出身。大阪外国語大学モンゴル語学科卒業。1995年、外務省に入省。モンゴルとの二国間関係に長く携わる。2009年、政策研究大学院大学国際開発学修士課程修了。モンゴル大使館、スロベニア大使館、ミャンマー大使館、アメリカ合衆国日本国大使館(D.C.)などで勤務。京都造形芸術大学(現:京都芸術大学)通信教育部芸術教養学科を卒業。2025年7月より現職。好きな食べ物は肉、特にステーキ。

– 大学でモンゴル語を専攻した理由を教えてください。
大学受験の際、他の人があまりやらないことを学ぼうと漠然と思っていたのですが、母の「モンゴルなんて面白そうじゃない?」の一言で、モンゴル語を専攻することにしました。大学入学までは教科書で読んだ『スーホの白い馬』や、戦後、ウランバートルに抑留された人々を描いた小説『黒パン俘虜記』くらいしかモンゴルとの接点がなかったのですが、今までのキャリアや出会いを考えると、モンゴル語を選択したことは一つの転機ですね。大学入学後、モンゴルは社会主義を放棄し、民主化への道を選択。大学の先生が立ち上げたモンゴルとの共同学術研究プロジェクトに加わり、モンゴルでフィールドワークをする機会がありました。そのときの経験と印象が鮮烈で「モンゴルに関わる仕事をしたい」と思ったんです。当時、モンゴル関係の仕事といえば、研究者か外務省のほぼ二者択一。国際的な仕事に憧れがあったこともあり、外務省に入省しました。

– 入省してからこれまでで印象に残っているお仕事は?
入省以来、さまざまな場面で良い仕事をさせていただき、一生懸命取り組んできたつもりなので、一つに絞るのは難しいのですが…。例えば、対モンゴル外交のチーフだった2022年、日本とモンゴルが外交関係樹立50周年を迎えました。省内外、モンゴルなどの関係者とやりとりをしながら、モンゴルの大統領と岸田首相(当時)が出した共同声明をまとめ上げたことはやりがいのある仕事でしたし、50周年を機に、「日米学生会議」に着想を得て、「日本・モンゴル学生フォーラム」をゼロから立ち上げ、両国の若い世代が毎年交流・協働する枠組みを作れたことも誇りに思っています。また、ワシントンD.C.で文化担当だった際に出会ったのが根付です。スミソニアン博物館の所蔵庫で見せていただいた、根付のコレクションに魅了され、ほぼ2年がかりで大使館の文化センターでの根付展を企画しました。このとき、多くの日本美術関係者と知り合い、自分の無知を恥じたので、仕事の傍ら、京都造形芸術大学の通信教育で学ぶことにしました。

– 2025年7月、天皇皇后両陛下がモンゴルを公式訪問された際は通訳を務めたそうですね。
皇后さまの通訳をさせていただきました。外務省人生において、多くの要人通訳、協議や交渉の通訳を経験してきたのですが、国家の象徴でいらっしゃる方が、外国をご訪問されている際のさまざまな場面で、通訳としてどのように振る舞えばいいのかという緊張はありました。相手がどなたであろうと、言葉が通じ合わない方々のコミュニケーションを手伝う通訳という仕事において、出しゃばらず、引っ込み過ぎずという間合いは難しいですね。でも、なんとか無事に役目を果たせたのではないかと思いたいです。

– 外務省で働く魅力ややりがいはどんなところにありますか?
外務省のありがたいところは、やる気とアイデア、そして根性があれば、やりたいことが実現できる環境にあることです。もちろん、予算、上司や同僚からの助けも欠かせず、欲しいリソースが全てそろうとは限りませんが。手あかの付いた言葉かもしれないけれど、自己実現ができる仕事であることに間違いはありません。日本・モンゴル学生フォーラムを立ち上げようとしたときも、正直、最初の周りの反応はさほど温かくなく、くじけそうな時もあったのですが、励ましや応援をしてくださる方もいました。行く先々でいろんな人に会って話をし、世界がどんどん広がっていく喜びがあり、いろんな場所で挑戦を重ね、日々の積み重ねが日本の国益につながり大きなやりがいもありますし、そのために続けられたのだと思います。そういう経験ができるという意味では、外務省は1番の場所ではないでしょうか。

– 今夏からシアトルへ異動となりました。お仕事の内容や街の印象、今後の抱負を教えてください。
首席領事は、総領事の代理としてさまざまな場に出かけることもあれば、中間管理職としての館内での仕事もあります。シアトルは自然豊かで都会過ぎない、でも、世界的な企業やたくさんの研究所があるのは面白く、勢いを感じます。そうした活力をどうすれば日本に取り込み、日米関係強化につなげていけるのか?と仕事をする中で考えているところです。また、シアトルで驚いたのは、日本や日本人に対するアメリカ人の理解度や親近感の強さで、物理的にも心理的にも東海岸の人より近い印象があります。今のところ日本人であることで嫌な思いをしたことはないですし、街や美術館では日系人アーティストの作品をよく見かけます。日系人・日系移民が戦前・戦中のご苦労に耐え、打ち勝ち、頑張ってこられたからこそ、今、日本人にとって住みよい街になったわけですね。シアトルで先人たちが刻んできた歴史を、学んでいきたいと思っています。

在シアトル日本国総領事館 首席領事 津下陽子さん
▲ワシントン州知事のボブ・ファーガゾン氏に着任のご挨拶。日々さまざまなイベントや集まりに参加し、ワシントン州、モンタナ州、アイダホ州と日本をつなぎます。
 
*情報は2025年11月現在のものです

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(ライトハウス編集部)