シアトルの生活情報&おすすめ観光情報

更年期障害の治療や対策 in アメリカ

閉経前後の数年、人によっては10年以上の長期間にもわたる「更年期障害」。その症状には個人差があり、軽かった、または全く症状がなかったという人もいる一方で、家事や仕事も手に付かないほど重度の症状に悩まされる人もいます。そこで、アメリカでの更年期障害治療の実態、さらに少しでもこの時期を快適に乗り越えるための対策について専門家に取材しました。(ライトハウス2022年12月号 特集「お悩み解決!The 更年期 in America」より)

更年期障害

更年期について知ろう 〜 症状やアメリカでの治療など

更年期とはいつを指すのか?

最初に、更年期に関する基本的な知識を、シアトル近郊で産婦人科を開業している助産師で看護学博士の押尾祥子先生に解説していただきました。

「更年期というのは、閉経の前後の心身の変化の時期を指します。初潮が生理の始まりであるのに対して、閉経とは生理のおしまいですね。閉経を説明する前に生理のメカニズムについてご紹介します。まず、脳からの指令によって卵巣内で卵胞が育ちます。これによって『エストロゲン』という卵胞ホルモンの分泌が増え、子宮内膜が厚くなっていきます。卵胞が十分に育つと、『エストロゲン』の分泌量が最大化し、脳から排卵の指令が届き、卵胞から卵子が放出されます。排卵を終えた卵胞は黄体に変化し、妊娠の手助けをする黄体ホルモンである『プロゲステロン』を分泌します。『プロゲステロン』は子宮の内膜を安定させる役目がありますが、受精卵の着床が起こらなかった場合、黄体の寿命が2週間なので、プロゲステロンが消退し、厚くなった子宮内膜がはがれ落ちることで、月経として体外に排出されるのです。このサイクルには個人差はありますが、28日周期で訪れることが平均です」。

生理の周期にも個人差があるように、生理が終わる時期にも個人差があります。押尾先生によると「早い方では30代に早期卵巣機能不全という状況で閉経を迎えるケースもありますが、100人に1人程度です。一般的には40代後半から60代までの間に起こることが多く、平均閉経年齢は51歳です」ということです。そして、本格的に閉経になる7、8年前から、女性ホルモンの分泌量の変化により不調を訴える人が多くなります。これが「更年期障害」です。閉経後も4、5年、障害が継続することもあるということです。

ホルモン由来の更年期障害と派生する症状

前出の女性ホルモンの一種の「エストロゲン」の分泌量の増減の指標となるのが、卵胞刺激ホルモン(FSH)です。「脳から出てくるFSHの値は、女性の年齢と共に変化していきます。これを検査すると、卵巣がまだ機能しているかどうかが分かります。若い女性の場合は6から10、妊娠が難しくなってくる30代の後半からは12から14ぐらい、さらに更年期を迎える頃には50を超えるようになります」。

それでは、女性ホルモンの分泌量の減少によって、具体的にどのような症状を発症するのでしょうか。「ホルモンと直接的に関係がある更年期障害の症状は、次の3つです。まず、のぼせやホットフラッシュ、次に性器や尿道の萎縮、最後に骨がもろくなってしまう骨粗しょう症です。こうした症状は、ホルモン補充療法によって、確実に改善が見られます。さらに同じ時期にいろいろな不調が現れます。更年期には加齢による体調への影響も生じるため、成人病との組み合わせによる症状を発症する可能性も高まります。したがって安易に『更年期だから具合が悪いのは仕方ない』と決めつけることなく、他の病気である可能性も疑って診断してもらうことをお勧めします」。

さらに、体の不調がきっかけとなり、イライラや不安感、さらにそれが高じるとうつ病を発症することもありますが、これらは女性ホルモンとは直接的な因果関係が確定できない症状だと押尾先生は説明しています。

「更年期と同時期に、子どもがティーンエイジャーになり親としての悩みが大きくなったり、社会的な変化、仕事上での変化なども重なったりすることが多く、これらのストレスが引き金となり、さまざまな不調が発症しやすいということは言えるでしょう」。

アメリカで行われているホルモン補充の治療法

続いて、女性ホルモンの減少による「更年期障害」と判明した場合、アメリカの婦人科ではどのような治療が行われるのかについて伺いました。 

「女性ホルモンが減少することによって、前に説明した3種類の症状が出るわけですから、まずはホルモンの補充です。特に、アメリカ人の場合、ホットフラッシュ(ほてり・のぼせ)の症状を訴える人が多いというデータがあり、更年期の女性の80%がホットフラッシュを経験しており、50%が生活に支障が出るほどひどいと回答しています。例えば、ホットフラッシュによる寝汗でパジャマを着替えなければならないほどの症状の方にはホルモンを足す方法が必要だと思われます」。

次に、どのような形でホルモンを補充するかについて聞きました。「エストロゲンやプロゲステロンを飲み薬、または皮膚に貼るパッチで補充します。ただし、ホルモンを足すと、乳がんの確率が少し高くなること、また、閉経後10年経った後にこのような補充を行うと、心臓病のリスクが高まるというデータもあるので、時期やメリットとデメリットのバランスをよく考えてホルモン療法を受けるかどうかを主治医と相談しなければなりません」。

さらに、「ホルモン以外にも効果的な治療法はあります。例えば、抗うつ剤やホルモン抑制剤が、のぼせ症状の軽減に役立ちます。また、性器の萎縮による不快症状には、局所的なホルモン剤の使用によって、症状がやわらぎます。全身に使うホルモン剤と違って、局所的に使うホルモン剤はがんや心臓病などを起こす心配がありません」と押尾先生はアドバイスしています。

男性にも更年期はある?

女性だけでなく「男性にも更年期がある」と言われる説について、実際はどうなのでしょうか。

押尾先生は「更年期障害とは卵巣に関係するホルモンが減少する時期に起きる体調不良のことなので、卵巣の無い男性には当てはまりません。しかし、加齢によって男性ホルモンである『テストステロン』の分泌が減少すると、性欲の減退、勃起不全、胸が膨らむなどの症状が起こる場合があります。骨ももろくなってきますし、筋肉も弱くなります。さらにそこから、自信を喪失し、うつ病を発症する人も出てきます。しかし、これらの症状がホルモンだけが原因かと言うと、女性の更年期に見られるさまざまな症状と同様に、加齢によって顕在化する症状だったりもします」。

さらに、男性の場合、上記のような症状に対して男性ホルモンを補充する治療法が一般的かと聞いたところ、男性ホルモンを補充することによる健康上のリスクが大きいのであまり行われないと押尾先生は答えています。

「テストステロンを補充することで、男性でも乳がんや前立腺癌、心筋梗塞、脳梗塞のリスクが高まります。ですから、あまりにも生活に支障が出るほどの状況に陥っている場合、ホルモン補充でそうした症状が改善されるかどうかホルモン療法を試してみることはありますが、危険が多いわりに、効果が見られないケースが多いです」。

最後に更年期障害に悩む人へのアドバイスを求めると、押尾先生は次のように話してくれました。「更年期障害だと自分では思っても、調べてみると甲状腺機能の異常などの別の病気の可能性もあります。いずれの場合でも自分だけで決めつけずに、受診した上で、何が有効な治療法なのかを確認することをお勧めします」。

押尾祥子先生

【取材協力】CNM, ARNP, PhD 押尾祥子さん
なでしこクリニック / Nadeshiko Women’s Clinic
TEL : 206-354-6619
Web: www.nadeshikoclinic.com

 

ホルモン減少由来の更年期障害の症状
  • ホットフラッシュ(ほてり、のぼせ)
  • 性器や尿道の萎縮による尿失禁
  • 性交痛
  • 骨粗しょう症

更年期障害と同じ時期に起こり、女性ホルモンの減少が関係している可能性もあるが、加齢など他の原因が影響していると思われる症状
  • 頭痛
  • めまい
  • 不眠
  • 不安感
  • イライラ感
  • うつ
  • 動悸・息切れ
  • むくみ
  • のどの渇き
  • ドライアイ
  • 吐き気
  • 下痢・便秘
  • 胃もたれ・胸やけ
  • 肩こり・腰痛・背中の痛み
  • 関節痛
  • しびれ
  • 手足の痛み・しびれ・変形
  • 月経異常

 

更年期障害対策 〜 運動

息をしっかりと吐くこと自然の中でのジョギング

サンディエゴで、プロの運動選手から一般の運動好きの人までの広い層を対象に、年間1500セッション(1セッション1時間)の運動指導を行う、「Body Craft」経営者でアスレチックトレーナー兼鍼灸師でもある川尻隆先生に、更年期にお勧めの運動法についてアドバイスをいただきました。

「心身両面に顕在化する症状は、身体的要因、心理的要因、社会環境的要因が脳に対して影響を与えることで発症するものです。これらの三つの要素が引き金となり、脳にストレスをかけ、そのストレスの総量が多ければ多いほど症状も深刻になります。そこで、そのストレスを軽減する効果が期待できるエクササイズをお勧めします」。更年期に無理せずに続けられる、川尻先生が推奨する運動は次の二つです。

風船を膨らます

「意外かもしれませんが、人は普段の生活の中で息をしっかりと吐いていません。しかし、息を吐くという行為は、ストレス軽減に役立ち、リラックスさせてくれる副交感神経を働かせる効果があります。まず、仰向けに寝て、膝を立てた状態で、風船を口にくわえて風船の中に息を吹き込みます。その時に、お腹を触ると力が入っているはずです。その状態をキープしながら風船を膨らませます。時折、鼻から息を吸いながら、風船が膨らむまでのセットを3回繰り返します。気軽に遊びの感覚で、1日に3回ずつ、できれば朝昼晩に3回ずつ風船を膨らませましょう」。

ジョギング

「二つ目のお勧めはジョギングです。人間にとって走ることはとても重要です。走ることで上下動などの刺激が脳に伝達されて、ストレス軽減につながります。ジョギングは1日5分でもいいので毎日続けましょう。また、トレッドミル上で走るのも外で走るのも同じだと思われがちですが、実はトレッドミルの場合、体を動かしているのに、目の前の景色が動かないということで情報が一致せず、脳への刺激がきれいに伝達されません。ぜひ、外の景色を眺めながらマイペースでジョギングを楽しんでいただきたいと思います」。

川尻隆さん

【取材協力】ATC, LAc 川尻隆さん
Body Craft
Web: www.bodycraft-health.com

更年期障害

 

更年期障害対策 〜 食生活

特定の食品摂取よりも自身の食生活の見直しを

更年期に食生活で気を付けたいポイントについて、日米で栄養士の資格を持つ、いとうひろよさんに伺いました。

「更年期と一口に言っても、人それぞれです。また、食生活に関してもアメリカでも日本的な食事を続けた人と、アメリカナイズされた食事になった人、さらにベジタリアンや反対にジャンクフードばかり食べている人とでは対策が異なります。よく更年期になるとある特定の食品を食べた方が良いと言われますが、まずは自身の食生活を見直すことから始めていただきたいと思います」。

いとうさんは、USDA(米国農務省)が運営している栄養に関するウェブサイト「MyPlate」上のメソッドを参考に、自身の日々の食事をチェックするのが便利だと話しています。このメソッドでは、健康を維持するためにフルーツ、野菜、穀物、たんぱく質を含む食品、乳製品をバランスよく摂取するように推奨しています。

「このMyPlateのメソッドに沿っていて理想に近いのが、地中海式ダイエット。オリーブやトマトをはじめ、新鮮な野菜や果物や、精製されていない炭水化物を豊富に取り入れる食生活です」。

バランスの取れた食生活を心がけた上で、更年期特有の症状を悪化させる可能性がある食品については、摂取を控えるようにといとうさん。「ホットフラッシュの症状が出ている方はスパイシーフードを控え、不眠に悩まされている方はカフェインやアルコールなどの刺激物を就寝前に摂取しないようにしましょう。骨密度を増やすにはカルシウム以外にも、ビタミンB群、C、Dの摂取も重要です」。

そして、外食が多過ぎると栄養バランスが崩れてしまう可能性があるため、自炊が楽になるスマート家電を積極的に活用することを、いとうさんは勧めています。また、食品を購入する際にはパッケージの裏にあるフードラベルを見てカロリー、糖分、塩分などをチェックするようにし、さらには、生活習慣病の予防のために、自身の適性体重やボディマスインデックス(BMI)の数値を把握しておくことも大切だとアドバイスしています。

いとうひろよさん

【取材協力】RD いとうひろよさん
Web: https://www.facebook.com/profile.php?id=100078932224761

 

更年期障害対策 〜 漢方と鍼

腎臓と肝臓のケアが鍵

東洋医学の漢方・鍼では、更年期障害にどのような治療が行われるのか、アキュリーフ鍼灸院の安達直美先生に実際の事例について紹介していただきました。

抜け毛

「更年期の前段階(Perimenopause:閉経前の時期)では、シャンプーや髪をブラシするだけでも大量の抜け毛を経験する人が多く見られます。漢方薬を処方することで、髪を太く健康的にすることが可能です」。

不眠

「ホルモンのバランスが崩れることが原因で、夜眠れなかったり、また一度寝ても何度も目が覚めたりすることに悩まされることが多くなります。これは東洋医学での「陰陽」の「陰」の不足により起こる症状です。睡眠は健康的な生活を送るためには欠かせないため、不眠が原因で疲れが溜まりやすくなったり、焦燥感を抱くようになったりという精神面での問題も引き起こす可能性があります。不眠には鍼と漢方の組み合わせでの対処が有効です。改善の速度には個人差がありますが、人によっては施術を受けた1週間後によく眠れるようになったという患者さんもいます」。

肥満

「更年期を境に体質が変わって、同じ食生活や運動量でも急に太りやすくなることがあります。そのような方には鍼で体質改善をすることも可能です。ただし、自分でも食生活には気を付けるようにしてください。理想は、朝と昼にしっかり食べて夜の食事量を減らすことです。私自身は、夕方6時以降は食べないように節制しています」。

 

上記以外の症状でも、東洋医学の場合は「症状に対する治療」が施されます。安達先生は、更年期障害には腎臓と肝臓のケアが鍵になると、次のように話しています。「東洋医学では、腎臓が人間の老化に非常に密接に関連していると考えています。鍼では腎臓のツボを刺激してアンチエイジングの施術を行います。また、自分でも意識的に腎臓に良いとされる黒胡麻などの食べ物を摂取するように心がけてください。さらに肝臓のケアも重要です。ストレスが溜まると、その影響は肝臓に出ます。その場合も肝臓を刺激するツボを鍼で治療します」。

最後に、漢方薬は自然なハーブから作られていて安心だと思われていますが、「空腹に漢方薬を飲むとお腹の調子がおかしくなることがあります。また、苦くて飲めないと言う人もいます。その場合は無理をせずに同じ成分が含まれたサプリなどでも補えます」と安達先生は、無理せずに、更年期障害に取り組むようにと話しています。

安達直美さん

【取材協力】DACM 安達直美さん
アキュリーフ鍼灸院 / Aculeafs Acupuncture
Web: www.aculeafsacu.com

更年期障害

 

老化と更年期への対抗策 ナチュラルホルモン療法とは?

更年期の女性、また男性ホルモンが減少している男性に、加齢に伴う諸症状を改善する目的で施される「ナチュラルホルモン療法」について、パサデナでクリニックを経営しているクリニカルディレクターの吉田美和先生に教えていただきました。

「これは人間の生体と同じ構造で製造されたバイオアイデンティカルホルモン(生体同一ホルモン)を体内に補充するものです。自然に代謝されるために副作用が少ないことが特徴となっています」。

この療法では、小さな粒状のバイオアイデンティカルホルモンを臀でんぶ部周囲の皮膚内に挿入し、体内に吸収させる方法が用いられます。個人差がありますが、女性は4カ月、男性は6カ月程度放置しておくことができ、一定のサイクルで新たにホルモンを挿入するという繰り返しの療法になります。

「処方にあたっては事前に血液検査の数値に基づいたコンサルテーションを受けていただきます。(年齢的に)若過ぎる方やまだ子どもがほしいという方にはお勧めしません。逆に何歳になってもパワフルに活動したいという方には有効です。例えばこの療法を継続されている方には86歳の方もいます」。

更年期の症状としてよく見られる気分の落ち込み、不眠、めまい、ホルモンバランスの変化により肥満に悩まされている人には特に推奨したいと吉田先生。「今、何らかの症状に苦しんでいるなら、試してみる価値はあると思います。私の患者さんに、60歳で子育てが終わったと同時に更年期障害を発症し、無気力感に襲われ、30ポンド体重が増えた方がいました。その患者さんは、この療法を始めてから数カ月で体重がみるみる減少しただけでなく、さらに気力が復活してゆとりが出たおかげで夫婦仲も改善したそうです。痩せたのは、それまで無気力で運動をやる気にならなかったのが、エクササイズする元気が出たことも要因だと思います。さらに、この療法では骨密度の増加も期待できます。私自身も5年間、ナチュラルホルモン療法を続けています。4人の子どもを育てるシングルマザーであり、クリニックの経営者でもある私の多忙な生活に不可欠な活力を、このバイオアイデンティカルホルモンから得ています」。

吉田美和さん

【取材協力】DACM、LAc 吉田美和さん
Health Advantage Physical Medicine
Web: www.health-advantage.net

 

更年期障害対策 〜 メンタルヘルス

十分な睡眠のススメと自分自身にもっと優しく

サンディエゴで心理カウンセリングを提供しているハートマン由起子先生に、更年期に多いメンタル面での症状と、その対処法について聞きました。「ストレスが多いと、更年期の症状も強く出やすいと考えられています。更年期を迎える40歳以上の女性は、子どもの教育や受験、夫婦関係、夫の転勤や転職、親の介護、職場の人間関係などがストレスの原因になりやすいだけでなく、過労や睡眠不足なども加わって症状を重くする傾向があります」。多い症状としては気分の落ち込み、心配や不安、イライラ、怒りっぽくなる、やる気が出ない、疲れやすい、不眠などがあり、このような症状の緩和、改善の一つの方法として十分な睡眠の確保が重要だとアドバイスしています。そこで、眠りにスムーズに落ちるために心がけたいことを5つ挙げていただきました(①〜④はDr.ShelbyHarrisの電子メディアへの掲載参照)。

①決まった時間に起きる

「前の日、どんなに寝るのが遅くなっても、また時間にゆとりがある週末であっても、朝起きる時間は決めておきましょう。日によって起きる時間がまちまちだと、ドミノ倒しで体内のリズムが崩れてしまいます」。

②スマホやPCは就寝1時間前にはシャットダウン

「夜11 時に寝る場合は10時までにはPC、スマホ、テレビをシャットダウンしましょう。画面から出ている太陽光の波長に類似したブルーライトには、夜寝るために必要なメラトニンの分泌を妨げる働きがあります。ギリギリまで画面を見ていると睡眠の質も低下してしまいます」。

③就寝前はゆったりと過ごす

「リラックスできる音楽を聴く、本やカタログに目を通す、軽いストレッチをする、ぬるめのシャワーを浴びるなどして、ゆったりと過ごす時間を就寝前に設けることをお勧めします」。

④就寝3時間前に飲食を終える

「午後11時に寝る場合は8時には夕食を終えて、アルコールもそれ以降は摂取しないようにしましょう」。

⑤寝る前にネガティブなことを考えない

「その日にあった嫌なことなどを寝る前に思い出すかもしれません。しかし、ネガティブなことを思い描くと感情が高ぶってしまうために、睡眠の妨げになります。パートナーとけんかしたとしても、『また明日、改めて話し合おう』と休戦して頭を切り替えましょう」。

 

最後に、更年期に心の悩みを抱えている人に、ハートマン先生は「この時期には、頻繁に休憩して無理をしないこと、物事の優先順位を付けて全てのことを急いでやろうとしないことです。更年期前には同じ時間で10個のことができていたのに、それが6個しかできなくなっているかもしれません。無理して全部自分でやろうとしないで、グローサリーストアに食材を買いに行くのを時には休んでオンラインで購入したり、食事を作る気力がなければデリバリーを注文したりしてもいいのです。手を抜けるところは抜いて、また自分以外の人に任せられることは任せましょう。完璧主義の方にはそこが難しい点かもしれませんが、自分を責めるのではなく自身にもっと優しくなってほしいと思います」とメッセージを送ってくれました。

ハートマン由起子さん

【取材協力】ワシントン州公認 メンタルヘルスカウンセラー
カリフォルニア州公認 プロフェッショナル・クリニカルカウンセラー
ハートマン由起子さん

TEL : 206-715-0291
Web: www.yukikopsychotherapy.com/japanese

 

更年期に悩む人へのアドバイス、そして家族ができること

次に更年期障害に悩んでいる人へのにアドバイスをサイコロジストの中島先生に聞きました。「さまざまな症状によって以前と同じことができなくなったと感じることが多いかもしれませんが、できなくなったことにフォーカスするのではなく、できることにフォーカスしてください。つまり、『まだ、こういうことができる』、『こんなことに幸せを感じる』とできるだけポジティブな方向に気持ちを向けるようにしましょう」。

また、体力や気力があれば、それまで挑戦したことがなかった新しい趣味を見つけることを中島先生は勧めています。「以前からアートに関心はあった人は絵を描いてみるなど、新しい趣味に没頭できれば気持ちが晴れるかもしれません」。

更年期に見られるうつ症状の対策としては次のように話しています。「うつ病の治療として有効性があるとして用いられるものに『行動活性化(Behavioral Activation)』という方法があります。これは日常行う活動を、自分にとって楽しいものか、それとも楽しくないものかと分けていき、楽しい活動の頻度を増やすことで気持ちを前向きに持っていくというものです。例えば、映画館に映画を観に行くという行為をやってみて、楽しくなければそれをやめる、逆に楽しいと感じたらその頻度を増やすというように、自分にとって楽しいことを生活のルーティンに取り入れていくのです。この治療法の目的は、自分の人生の中で楽しいと思えること、価値が感じられることを積極的にやっていくことで、うつから抜け出すということです」。

続いて、更年期障害に悩む人を家族に持つ方へのアドバイスについて聞きました。「まず、家族の状態を受容することです。冷静にありのままを受け止めてください。次に、更年期に悩む人の症状や精神的な不安定さに引っ張られて、共倒れにならないように、自分の健康に気を配ってください。ひどい場合は自分もうつになってしまう可能性もありますから、自分の生活リズムや心身のバランスを崩すことなく、家族をサポートしましょう。そして、ランニングでも散歩でもなんでもいいので、一緒に楽しめることを見つけてください。そして、家族の中だけで解決しようとしないでください。家族が苦しんでいると、責任感の強い方は自分の力だけでなんとかしなければと思うかもしれませんが、それでは燃え尽きてしまいます。心理や医療の専門家はもちろん、友人や親戚など、できるだけ人に頼るようにしていただきたいです」。

中島健太郎さん

【取材協力】カリフォルニア州公認サイコロジスト
中島健太郎さん

PSY27817
Nakajima Psychological & Educational Services
Web: www.nakajima-psych.com

 

体験談|私の更年期

M・Hさん(53歳・オレゴン州ポートランド)

44歳の時に「排卵痛」という形で、更年期の症状が出てきました。右の卵巣の周辺が刺すような痛みに襲われましたが、市販の鎮痛剤は効かず、冷や汗が出続けて、何もできなくなってしまうので、夜中にアージェントケアに駆け込んだことも数度ありました。その後、婦人科にかかり、子宮内エコー、子宮ガン検査なども受けたのですが、異常は見られませんでした。そして、低用量ピルを3年ほど服用、さらに2年ほど超低用量ピルを服用しました。
 
50歳になると、症状が落ち着いてきたので担当医に相談してピルを止めました。すると、全く眠れなくなってしまったり、集中ができなくなったり、情緒不安定になったりしました。抗うつ剤も試しましたが、体がだるくなり、何もできなくなってしまったので、服用を止めました。

その後、漢方医に漢方薬を処方してもらったところ、少し症状が緩和しているように感じました。ただし、その間もまるでローラーコースターのように気持ちが不安定になり、自分でも人格が変わったように感じました。その時期はきれいな花を見ても美しいと感じることはありませんでした。

やがて体力が少しずつ戻ってきたので、自転車などの有酸素運動を始めてみました。さらに学校でクラスを取ったり、本を読んだりと、集中できることを見つけて気持ちを症状からそらすように努力しました。一番効果を実感したのは、有酸素運動と入浴です。

カウンセリングにも行きました。不安な気持ちが強かったこと、また過去の出来事に対する怒りが湧き出してきて、夫に当たったりもしました。それでも、カウンセリングを受けることで心が軽くなり、客観的に自分を見られるようになりました。さらに、ノートに「やりたいこと」「やりたくないこと」「人生で優先すること」を書き出したりして、頭の中を整理しました。

今、更年期障害で悩んでいる方には、周囲の人に自分の状況を説明することをお勧めします。一番近い存在である配偶者には何度も説明してください。私は、男性の上司にも自分の状況を説明しました。さらに、同じように更年期で悩んでいる人を探して、情報を交換したり励まし合ったりするのも良いと思います。

現在、私は53歳。更年期障害も終わりに近付いています。お天気が良いと素直に喜べますし、きれいな花を見ると心が明るくなります。あの辛い時期を乗り越えることができたのだから、あれ以上大変なことはない、と今では思えるようになりました。

 

【経験者からのアドバイス】
  1. 有酸素運動に取り組む。
  2. カウンセリングを受ける。
  3. ノートに自分のやりたいことを書き出す。
  4. 周囲の人に状況を説明する。上司にも把握してもらう。
  5. 同じ状況の人と情報交換し、励まし合う。

ページトップ

*情報は2022年12月現在のものです

この他の特集記事はこちら »
シアトルの最新生活&観光情報こちら »