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タイタニックで頭を抱え込んでしまった

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第22回
タイタニックで頭を抱え込んでしまった


© Paramount Pictures

この間テレビで「タイタニック」を観た。

何度観ても感動するが、映画の大きなスクリーンとTHXサラウンド・システムで観ないと、この作品の良さは判らない。しかし、大の大人が1人で「タイタニック」を観るのはとても勇気がいった。でも、アメリカはまだマシで、日本、それも渋谷や新宿あたりで「タイタニック」を1人で観ることはできない。だって、カップルばかりだもの。なんで日本の映画館はこうもカップルばかりなのか。カップルは限定30組までとか、映画館ももっと工夫して欲しいものである。本当に映画が好きなおじさん達はどこで映画を観ればいいと言うのか。心ある映画ファンは嘆いている。そういったお客のニーズに少しでも答えることで映画不況の日本も相当変わると思うのだが。映画はひっそりとした小屋で普段の忙しい世界を忘れ、映画の世界に浸り、いわば超越的体験をするということが醍醐味なのだ。彼女や彼氏が隣にいて超越的体験するなんて、相手に失礼ではないか!


話は戻るが、「タイタニック」である。アメリカでも観ているが、字幕なしで観たので多分100%は理解はしていない。そんな難しい映画ではないと思うが、若干判らない部分があった。ラスト、老婆になったローズが、タイタニックが沈んだ場所にジャックとの想い出のダイヤを沈める場面。でも、よく考えると、このダイヤは憎き婚約者の物である。なぜに、恋人の死んだ場所に、憎い人から貰ったダイヤを沈めるのか、またそれを後生大事に持っていたのかが判らなかった。でも、日本語版を観たら、その謎が解けました。それは婚約者がダイヤの持ついわれを語る場面。このダイヤには、好きな人と再び巡り合わせてくれる力があるという台詞がある。つまり、ジャックと死に別れたローズは、再び出会うことを夢見、ラストでその夢がかなうという結末なのでした。


落ちそうになった相手を手で繋ぎ止める似たようなシーンも3つある。最初は自殺しようとしたローズをジャックが助ける場面。ジャックは「絶対はなさないぞ」と言いながら助け出す。2度目はタイタニックが沈む場面。ジャックは「絶対はなさないぞ」と言うが、沈む勢いに負けて、ローズをはなしてしまう。哀れなローズはそのまましばらく独りぼっちになってしまう。3番目のシーンはジャックが死ぬ場面。「絶対手をはなさないわ」とローズは言いながら、ジャックが凍え死ぬとあっさり手を離してしまう。哀れなジャックはそのまま海底の底へと沈んでしまった。でも、この場面は生きて人生をまっとうすることをジャックと誓ったローズが、その約束を守るためでもあるので、まあ理解できる。問題は二番目である。なぜ、ジャックは手をはなしてしまったのか。この場面でしっかり手を繋ぎ止めていれば、3番目の場面はより一層深みを増したのに。いや、全く判りません。


もっとわからないのは、ラストでローズが死んじゃったのかどうかという点。ローズがベッドで横になると、画面は沈んだタイタニックの内部に移り、そこから沈む前の綺麗な船内に変わると、船員や乗客が拍手で迎え、そこで待っていたジャックとキスして映画は幕を閉じる。よく見ると、出迎える人はみんなタイタニックで死んだ人ばかりである。それを考えると、ローズはラストで死んだのだと考えられる。しかし、ある人は夢の中でジャックに会ったのだよと言う。いったい、どっちなのだ。


この映画は史実であり、例えば沈むタイタニックの上でバイオリンを弾く場面などは、英語の教科書でもよく取り上げられていた。完全なフィクションはローズとジャックの恋愛である。ジャックは賭けに勝って、他人の乗船券で乗船したので、もちろん乗船名簿に載っていない。一方ローズは助けられた船の船員に名前を聞かれ「ローズ・ドーソン」と答える。ドーソンはジャックのラストネームだから当然乗船名簿にない。この辺の監督のこだわりは妙に嬉しかった。

※執筆は2006年以前です。

前川繁(まえかわしげる)

1973年愛知県生まれ。シアトルで4年間学生生活を過ごす。現在、東京でサラリーマン修行中。コネクションを作って、いつか映画を作っちゃおうと画策している。