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ついに決定打を放ったシャラマンのケッ作「ヴィレッジ」

ロゴ 第36回
ついに決定打を放ったシャラマンのケッ作「ヴィレッジ」

「ヴィレッジ」を観た。「シックス・センス」で注目されたM・ナイト・シャラマン監督ということで、今回もどんな衝撃のラストが待っているのかと期待するファンも多いはず。「シックス・センス」以降、途中で結末が読めてしまった「アンブレイカブル」、珍妙なケッ作だった「サイン」と続いただけに、本作はすでに評論家からの評価も完全に二分されていた。一部では「シャラマンの新境地」と評し、また「貴重な休日にこの映画を観るのなら、庭の芝刈りをすることをオススメする」という評価をする者もいた。とは言っても、自分もシャラマンの映画をくだらないと思う反面、今回はどんな結末を作ってくるのだろうと少し期待してしまう、気になる存在ではある。かわいさ余って憎さ百倍、というところか。そんなシャラマンの「ヴィレッジ」、冒頭から彼のずば抜けた演出力が光る。

米ペンシルバニアの小さな村。周囲を取り囲む森には恐ろしい魔物が棲むとし、村人が森に入ることはタブーとされていた。だが、皮を剥いだ家畜の死骸が村で発見され、家のドアには警告の印が付けられたことにより、何者かがタブーを犯したのではないかという疑惑が持ち上がる……。この作品、全米公開後には、1995年に出版された『ランニング・アウト・オブ・タイム』という小説と、1958年の映画「恐怖の獣人」からのパクリではないかという疑惑が浮上した。元々、シャラマンには盗作疑惑が多く、「シックス・センス」も、1962年のヘルク・ハーベイ監督「恐怖の足跡」(映画「アザーズ」の元ネタでもある)をそのままパクってるし、「アンブレイカブル」も、オーストラリアのTV映画「墜落大空港」から、「サイン」はヒッチコックの「鳥」からのパクリだと言われている。まあ、タランティーノの「キルビル」のように、オマージュとパクリの境界線も曖昧になっている昨今、面白ければいいと思うのだが、この「ヴィレッジ」には最後まで乗れなかった。

シャラマンのお家芸「ドンデン返し」も最後に用意されている。しかし、作品が始まって30分くらいで結末がわかってしまった。シガニー・ウィーバーが秘密の箱についてのヒントを喋るところです。いや、たぶん違うだろうと思って観続けたのだが、やはりその結末だった。なんなんだ、これは!
 
役者も、オールスターキャストを揃えたわりに演技が地味だ。オスカー俳優のエイドリアン・ブロディの白痴ぶりは噴飯ものだし、ホアキン・フェニックスは単なるでくのぼうだし、シガニー・ウィーバーとウィリアム・ハートも大した見せ場なし。収穫と言えば、「ビューティフル・マインド」のロン・ハワード監督の娘、ブライス・ダラス・ハワードのちょいブスぶりが、返ってひたむきさを実感できて、唯一キャスティングの妙を発見できた。

キャスティングの妙と言えば、自身の作品には必ず登場するシャラマン監督。作品毎に役も大きくなるので、今回はどんな役で出るのかと巷で話題になっていたが、今回の登場には笑いました。これこそ本当にヒッチコック作品からのパクリである、とだけ言っておきます!

前川繁(まえかわしげる)
1973年愛知県生まれ。シアトルで4年間学生生活を過ごす。現在、東京でサラリーマン修行中。コネクションを作って、いつか映画を作っちゃおうと画策している。