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隠れた傑作「吸血鬼ゴケミドロ」

ロゴ 第39回
隠れた傑作「吸血鬼ゴケミドロ」

ブラザーフッド

「キルビル Vol.1」の中で、ユマ・サーマン扮するヒロインが乗った飛行機が赤々とした夕焼け空の成田に着陸するシーンがある。タランティーノお気に入りの日本映画「吸血鬼ゴケミドロ」のオマージュなのは有名な話だ。

その「吸血鬼ゴケミドロ」がDVDで発売されたので、前から見たかった私はさっそく購入して鑑賞した。かなりマニアックな映画で申し訳ない。

ストーリーは、多くの客を乗せた旅客機がハイジャックされるところから始まる。だが、怪しい光体と遭遇し、計器が狂って山の中に墜落。乗客達は一命を取り留めたかに思われた。しかし乗客のひとりは、吸血宇宙生物ゴケミドロに、身体を乗っ取られていたのだった。やがて事態は終幕へと……。

エイリアンによる地球侵略の恐怖を描いたSF映画だが、明らかに低予算のB級映画。しかしミステリー作家の小林久三が脚本を執筆するなど、ストーリーは1級なのだ。ミクロのストーリーからマクロへと流れるストーリー展開が見事。ハリウッドの高度なSFX技術をもってしてリメイクすれば、かなりの傑作になるのではないか。

日本の特撮映画史上稀に見る嫌な結末、毒々しいモンスターの造形、最初に吸血生物に寄生された乗客に扮するシャンソン歌手・高英雄の怪演など、本多猪四郎の「マタンゴ」(1963年)※に並ぶ傑作だった。

ちなみに「キルビルVol1」での飛行機着陸シーンでは、東宝の怪獣映画「フランケンシュタインの怪獣サンダ対ガイラ」からも頂いているのだとか。タランティーノのオタクぶりに敬意を払いたい。


嵐に遭い孤島に漂着した男女が、禁断の怪キノコ“マタンゴ”を食べ、自らもキノコと化す衝撃ホラー。東宝変身人間シリーズの人気作で、特技監督は円谷英二。



前川繁(まえかわしげる)
1973年愛知県生まれ。シアトルで4年間学生生活を過ごす。現在、東京でサラリーマン修行中。コネクションを作って、いつか映画を作っちゃおうと画策している。