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ロング・ドライブで自然探訪(1)

アメリカ・ノースウエスト自然探訪
2003年11月号掲載 | 文・写真/小杉礼一郎

ヨセミテ、グレイシャー、イエローストーン国立公園などは、ノースウエスト周辺の自然溢れるデスティネーション。エコキャラバン隊の探訪先は、こうしたノースウエストの外野にも及ぶ。このエリアの紹介の前に、キャラバン=自然探訪のロング・ドライブ時のtipsをお伝えする。今回は計画、準備編。

広い! パシフィック・ノースウエスト

「どこからどこまでがノースウエスト?」。これまでこのコラムで触れたことはなかったが、広くはロッキー山脈以西、北カリフォルニア以北を、狭くはワシントン州&オレゴン州辺りを指して話をしてきた。また、隊長の気まぐれで付け加えれば、それは“衛星写真で見る北米大陸西側の緑豊かな一角”でもある。地図上では東西南北1,000マイル四方に及び、アラスカも含めたらとんでもない広さになる。

そんなノースウエスト各地の自然を訪れる方法はいろいろ考えられるが、野山や水辺でキャンプをしながら途中の見どころを訪ね歩くロング・ドライブこそ、エコキャラバンの真骨頂なのだ。

情報収集と計画

アメリカでのドライブについては、ガイドブックが何冊も出ている。レンタカーの利用法から交通法規、モデルコー計画に際し、もうひとつお勧めしたいのが『トリプルA(以下AAA)』。普段の車生活でも利点が多いので、既にメンバーの人も多いと思うが、『AAA』が発行するマップには、各地の景色のいいシーニック・ルートに沿って傍点が振ってあるので、ルートを決める際の参考になる。また、大きなインターステート・ハイウェイより、数字2桁のUSハイウェイやステート・ハイウェイを利用する方が沿線に見所が点在し、景色も良いことが多いので、計画時には考慮に入れよう。さらに『AAA』では、毎年州別のトラベル・ガイドを発行しており、『AAA』の各オフィスで無料でもらえる。これにはホテル、レストラン、見どころの詳細な情報が満載。また会員は多様な施設を割引料金で利用できる(だいたい10パーセントオフ以上)。

出発準備

「いざ目的地が決まったら移動の準備。行く先の情報(地図、ガイドブック、ウェブサイトなどからの情報のプリントアウト、連絡先など)を持って出るのは鉄則だが、数百年来の旅人の必需品“コンパス”も役立つ。そのほか、ホテル、国立公園、キャンプ場、『AAA』などのメンバーシップ・カード、クレジットカード、チェック・ブックなど。チェック・ブックはキャンプサイトの料金の支払いに便利だ。また、車にテレビやビデオが付いていると小さい子供達が退屈しない。車のスペアキーは、財布などに付けて別に持っていると安心だ。

ロング・ドライブには、ドライバーの眠気対策にガム、キャンディー、ミント、飲み物、ナッツなど、そして音楽CDを準備しよう。もちろん、話相手やナビゲーションといった同乗者のサポートもありがたい。

さらに、水(飲料水、冷却水の補充)やフラッシュライト(ナビゲーターが手元の地図を見たりする時用)なども車に積んでおきたい。
そして荷物は事務関係、衣類、炊事用品、食糧に分け、それぞれ入れ物に収納する。衣類など、モーテルに持ち込むものは大きめのキャスター・バッグが便利だ。人数が多いと寝袋など、必然的に荷物が多くなり、余分な荷物スペースが必要になってくるが、ルーフ・キャリア、車のテールに付けるヒッチ(牽引のための道具)を使ったいろいろなタイプのカーゴ・アタッチメントがあるので、カー・ショプやアウトドア・ショップなどで見てみよう。

快適な移動を続けるために、出発前の車のメンテナンスと点検はとても大切だ。イエローストーン、レッドウッド、デスバレー といった国立公園内には“車で行くトレイル”があり、中には四輪駆動車専用コースもある。ただしSUV車といえども、スタックやパンク時に自力で対処できるなどの準備が必要だ。


▲情報をよく吟味して、最適なキャンプ場を見つけよう


移動と宿泊

移動の基本は「早発ち早着き」。1日の移動距離は300~400マイルにとどめる。「明るいうちに移動」というのが基本だが、朝夕のラッシュ時に都市部を通過することはできるだけ避けよう。

また、交替で運転できるなら、まず最遠方の目的地へ向かうこと。夜中に走ってでも最短時間で行き着いて、そこから日中の明るい時間に各地を寄りながら帰ってくるという動き方ができるからだ。この動き方はいろんな意味で利点が多い。「遠方の見どころが素晴らしく、つい長居」ということになっても対応できるし、近場へは次の機会に1泊で行くことで対処できる。そんな臨機応変で自由な旅が楽しい。

宿泊に関しては、好天が続く夏はキャンプ場をたどっていくのが自然を楽しむのにふさわしい。夕焼け、夜のとばり、焚き火、天の川、夜明けの静かさ、新たな朝の光……。ただし2、3日に1回はモーテルに泊まると洗濯や情報収集などができて便利。荷物の積み下ろしや出入りには、ホテルよりモーテルの方が気楽でもある。

宿の予約の有無にはそれぞれ利点・欠点がある。混んでいる時期、土地へは予約して行った方がいいし、途中の街で宿泊することはかえって行動をしばられることになるので、ギャランティーのタイムリミット(だいたい6:00 p.m.)と見合わせて決めよう。

南へ、途中の見どころ

冬、渡り鳥は南へ向かう。それなら人間も南に向かってみよう。米北西部の南のデスティネーションとしては、ヨセミテ国立公園がある。冬のヨセミテ・バレーはアンセル・アダムスが描くところの静謐なモノトーンの世界だ。セコイア・キングスキャニオン、デスバレーもさらに足を延ばす価値のある自然であるし、南へ向かう道行きにはまた、たくさんの見どころがある。

移動の幹線は西海岸の大動脈I-5だが、その途中にあるオレゴン南端のアッシュランド、ジャクソンビルの街はキャラバン途中のオアシスだ。街路樹の緑がロング・ドライブの眼を休ませてくれる。

自然探訪には海沿いのI-101、カスケード、シェラネバダ山脈の東山麓を行くI-97、I-395がある。それぞれに味わいのある良いドライブ・ルートだ。I-101での見どころは、オレゴン・コースト、オレゴン・デューン、レッドウッド国立公園。I-97、I-395沿いではセントラル・オレゴン、クレーター・レイク、クラマス・フォールズ野生生物保護区、ラッセン火山国立公園などを勧めたい。きっとアメリカの自然を広がりのあるものとして実感できるだろう。


▲長い旅には休憩も大切


Information

■『トリプルA(AAA)』
会員制のオート・サービス。ガス欠、キー・ロック、バッテリー上がり、トーイングといったロードサイド・サービスは、全米とカナダなら年中無休で利用可能。ベーシック・プラン以外にトーイングが100マイルまで無料だったり、旅行保険が付いたりと数々の特典があるPLUSメンバーもある。各地の『AAA』オフィスでは全米の地図、ガイドブックの入手のほか、見所、ホテルなどのアドバイスやメンバー・レートでの予約もしてくれる。
ウェブサイト:www.aaa.com

■車の点検、装備、メンテナンスなど
出発前には最低、車のメンテナンスのほか、ブレーキオイル、エンジンオイル、冷却水、タイヤのチェックを。特に空気圧は安全面だけでなく燃費にも影響があるので、旅行中にも毎日点検するといい。測定計を使っても良いが、休憩時にタイヤの接地幅を見たり、拳で叩いたり、手で触ることでもわかる。“どんどん”という感触がしたり熱くなっていると圧が低い兆候だ。高速走行時にバーストすることもあるので、早めに空気を入れよう。
冬季はさらに、ワイパー、不凍液、鍵穴の凍結防止 タイヤチェーンを積むことなど、ひと通りの防寒対策をしておこう。ダート、山間部を行くなら、古タイヤでいいので標準タイヤ(リム付き)を2本載せておくことを勧める。タイヤ補修剤は釘などの小さなパンクにしか効かない。
ショック・アブソーバー(緩衝器)がへたっていたら、交換してもいい。予備のガソリンを10ガロン、牽引ロープ、古毛布、ブースター・ケーブルなども積んでおくと、普段のドライブでも安心だ。

■キャンプ場の情報

国立公園:www.nps.gov/parks.html
州立公園:www.parks.wa.gov/(ワシントン州)
 www.prd.state.or.us/(オレゴン州)
 www.fwp.state.mt.us/parks/(モンタナ州)
 www.idahoparks.org/parks/(アイダホ州)
 www.parks.ca.gov/(カリフォルニア州)

フォレストサービス:http://www.fs.fed.us/(“by State”から該当州を選ぶ)
『KOA』:キャンプ場の情報や予約などをしてくれるキャンプ場会社
(http://www.koa.com/)

■キャンプとキャンプ用品について
キャラバン#2(当コラム2002年8月)参照。

■カーゴ・アタッチメントについて
G.I.Joe’s』『REI』といったアウトドア用品店で手に入る。
メーカーでは『YAKIMA』や『THULE』などが有名。

Reiichiro Kosugi
1954年、富山県生まれ。学生時代から世界中の山に登り、1977年には日本山岳協会K2登山隊に参加。商社勤務を経て1988年よりオレゴン州在住。アメリカ北西部の自然を紹介する「エコ・キャラバン」を主宰。北米の国立公園や自然公園を中心とするエコ・ツアーや、トレイル・ウォーク、キャンプを基本とするネイチャー・ツアーを提唱している。