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トレイル・ウォークのすすめ

ノースウエスト自然探訪
2002年09月号掲載 | 文・写真/小杉礼一郎

豊かな自然に囲まれた美しいパシフィック・ノースウエスト。地元在住のアウトドア・エキスパートが、ノースウエストの自然を堪能できる真の見どころへ案内してくれる。連載第3回目は、隊長おすすめのトレイルを紹介しよう。 

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空も野も山も深みを増すノースウエストの9月。歩くのに気持ちのいい季節だ。カスケード山脈、オリンピック半島など、主だった景勝地では素晴らしい“トレイル・ウォーク”が楽しめる。ここでお話しするトレイルとは、広い意味で遊歩道、散策路と思ってほしい。皆さんもチャンスがあったら、5分でも10分でもトレイルを歩いてみよう。5分歩けば喧騒が消え、動物たちも出てくる。高度が上がると、景色も変わる。自分だけのフォト・スポットも見つかるだろう。トレイルに一歩入ると、“観光地”ではすれ違っただけの人たちが、同じハイカーとして挨拶を交わし、「○○まであとどれくらい?」、「この先はすごいぞ」などと情報交換もする。

大自然の景観が素晴らしい国立公園、州立公園などには、それぞれ見どころとなる“viewpoint”、いわゆる絶景の場所がいくつかある。そこには「セルフ・ガイデッド・トレイル(Self-guided Trails)」が設けられているところも多い。これは、来訪者が文字通り自分でガイド・サインや、トレイル・マップに従ってトレイルを進み、その場所で見られる特徴のある自然を観察し、理解できるような優れたトレイル・ウォークのシステムだ(下記参照)。それに対して「ガイデッド・ウォーク(Guided Walk)」という、インタープリター(Interpreter/自然解説レンジャー)が数人から数十人のグループと一緒にトレイルを歩き、解説するプログラムもある。

ヨセミテのあるインタープリターはその日、あんまりにも美しい夕焼けだったので、黙って皆を引き連れ、自分の一番好きな見晴らしのいいところに上がり、やおらフルートを取り出し一曲奏でたそうだ。友人のインタープリターから聞いた話だが、まさにインタープリターが創り出す“Art”の世界だ。

Information

■セルフ・ガイデッド・トレイル
案内板や解説板、トレイル・マップや簡潔なパンフレットなどが常設、常備されていて、訪れる人々が周辺の自然の成り立ちや変遷について容易に理解ができるようになっているトレイル。簡単だがイラスト入りのよくできたパンフレットを手に持って歩く。自分たちのペースで歩けるし、ビューポイントごとの番号と手元の解説がマッチして理解しやすい。そして見どころをおさえて実によく設計されている。

■トレイル・ウォークを行うときの注意点
コースの難易度、所要時間を事前に知っておく。必ずマップを持って歩くこと。ハイキング・ブーツなど足回りをしっかりと準備し、特にアップ・ダウンのあるコースを歩く前には足腰のストレッチを充分に行うこと。必要に応じ、水、行動食(スナック、チョコレートなど)、雨具、フラッシュ・ライトを持つこと。トレイルをはずれて歩かない。野生生物に餌を与えないこと。

■おすすめのトレイル
ノースウエストの主だった国立公園、景勝地の定番、隊長の一押しトレイルを紹介しよう。

  • オリンピック国立公園(ワシントン州) Olympic National Park
    Hoh Rain Forest  Hall of Mosses Trail  ループ  0.8マイル  40分
    アメリカ本土で一番降水量が多い谷。樺太と同じ緯度ながら温帯雨林(ジャングル)が見られる。このトレイルに入ってはじめて、ここが世界的な遺産であることが理解できる。
    Hurricane Ridge  Hurricane Hill Trail  往復  3.2マイル  3時間
    森林限界の上を行く、素晴らしい眺望の楽しめる気持ちのいい尾根道。200mの上り。
  • レ二ア山国立公園(ワシントン州) Mount Rainier National Park
    Paradise  Alta Vista Trail  往復  1.6マイル  1.5時間
    高山植物とお花畑を抜けるとニスカリー氷河が眼前に広がり、レニア山の堂々の山容に圧倒される。小高い丘に登るとカスケードの山々が望める。
  • セントへレンズ国定火山公園(ワシントン州) Mount St. Helens National Volcanic Monument
    Johnston Ridge  Eruption Trail  往復  1.0マイル  1時間
    セント・へレンズの爆裂火口に正面から迫る。噴火時の爆風でなぎ倒された森林跡と回復する植生、ともに自然の力の大きさ、強さを実感する。
  • クレーター・レイク国立公園(オレゴン州) Crater Lake National Park
    火口湖  Cleetwood Cove & Wizard Island Trail  ボート・ツアー&山頂往復  歩行4マイル  4~6時間
    頂上に向かうのにドンドン下り、下り切って船に乗るという不思議なトレイル。火口湖の島へ行く、国立公園局が行うボート・ツアー(有料)。船上での解説は充実している。紺碧の湖面とともに一生の思い出に残るガイデッド・ツアーだ。Cleetwood Coveのトレイルヘッドで乗船券を購入し、トレイルを20~30分下って船着き場から乗船する。出航時間、欠航の有無、場所は事前に確認すること。
  • レッドウッド国立公園(カリフォルニア州) Redwood National and State Parks
    Jedediah Smith Redwoods State Park  Stout Grobe Trail   「P字状」ループ  1.3マイル  1時間
    ステイト・パークのキャンプ場から夏場だけ利用できる仮橋を渡って行く、巨木林の底を這うようなトレイル。あなたは小人になってしまう。
  • グレイシャー国立公園(モンタナ州) Glacier National Park
    Logan PassHidden Lake Nature Trail  往復  3マイル  2時間
    公園の中心にして大陸の分水嶺から高山の氷河地形の中を進む。ちょっとした登山。
  • オレゴン・デューン(オレゴン州) Oregon Dunes(Natinal Recreation Area)
    Reedsport  Umpqua Dunes Trailhead  往復  5マイル  3~5時間
    森林を抜けて砂浜に至る間、短いが急激な地勢と植生の変化が見られる。長い年月をかけてお互いにたゆみなく、巧みに影響しあって作り上げた興味深い自然のテキストだ。林を抜けると北米で最大級の砂丘に出くわし、必ず誰もが驚愕する。さらに進むと360度砂と空しか見えなくなり、日常感覚はまったく役に立たなくなる。水とコンパスは必携。
  • ペインテッド・ヒルズ(オレゴン州) Painted Hills
    John Day Fossil Beds National Monument   Painted Cove Trail  ループ  0.25マイル  0.5時間
    四色の山ペインテッド・ヒルズの中心部は景観の保全のため立ち入り禁止になっているが、これだけ不思議な山だったらつぶさに見てみたくなるのが人情だ。そこで、近くのミニ・ペインテッド・ヒルズにセルフ・ガイデッド・トレイルが設置してある。ここの表土を手にとって水を含ませた瞬間、なぜ何千年もの間この山が草木を寄せつけなかったかが理解できる。
  • オレゴン・トレイル(オレゴン州) Oregon Trail
    Baker City郊外にあるFlag Mountain  Oregon Trail Ruts  ループ3マイル  2時間
    オレゴン・トレイル・ミュージアムの周囲にあるトレイル。ブルー・マウンテンとワロワ山塊を遠望しながら歩く。

 

Reiichiro Kosugi
1954年、富山県生まれ。学生時代から世界中の山に登り、1977年には日本山岳協会K2登山隊に参加。商社勤務を経て1988年よりオレゴン州在住。アメリカ北西部の自然を紹介する「エコ・キャラバン」を主宰。北米の国立公園や自然公園を中心とするエコ・ツアーや、トレイル・ウォーク、キャンプを基本とするネイチャー・ツアーを提唱している。