シアトルの生活情報&おすすめ観光情報

MLB日本選手(イチロー、城島)から英語を学ぼう

ビジネス・スラングを克服

9月30日、シアトル・マリナーズのイチロー選手が、史上初の新人から5年連続となる200本安打を達成しました。地元メディアは当時のイチロー選手の心境をどのように伝えたのでしょうか。
今回はその報道とイチロー選手によるナマの英語スピーチから、英語のニュアンスを盗んでみましょう。
※出典の日付は日本のメディアのものは日本時間、アメリカのメディアのものはアメリカ時間で表記

【200本安打を達成した時のコメント】

●「最高! 最高の気分ですよ!」
(10月1日付け共同通信社の報道より引用)
英訳:”Couldn’t have been better!”(10月1日付け『Seattle Post-Intelligencer』紙より引用)
解説:日常会話の中で気分を表す際によく用いられる表現。直訳すれば「これ以上良くなることはない」。Things couldn’t be better.や”Never (been) better.”でも同じ意味。”Could be better.”は逆に「あまりよくない」となる。
 
●「苦しかったですね」
(10月1日付け共同通信社の報道より引用)
英訳:”It’s been a tough year, …”(10月1日付け『Seattle Post-Intelligencer』紙より引用)
解説:形容詞toughは「(仕事などが)骨が折れる、(達成・解決が)難しい」の意味で、difficultより口語的。
 
●「プレッシャーから逃げることはできない」
(10月2日付け『日刊スポーツ』紙より引用)
英訳:”I’ve learned not to run away from pressure.”(10月1日付け『Seattle Post-Intelligencer』紙より引用)
解説:run away from …は「…から逃げる、…から逃走する」の意味のイディオム。プレッシャー(pressure)は日本語でも英語と同じように使われているが、他動詞として「(…するように)圧力を掛ける」といった形でも用いられる。
 
●「この200という数字がすべてを救ってくれましたよ」
10月2日付け『サンケイスポーツ』紙より引用)
英訳:”I’m relieved I got it.” (10月1日付け『大リーグ公式ホームページ』より引用)
解説:文脈上このitは「200安打」を指している。 be relievedは「ホッとする、安心する」の意味で、I was relieved to hear that.(それを聞いて安心しました)のように使われる。
 
●「切れそうになったこともある。でも、本当に切れずによかったな、と」
(10月2日付け『サンケイスポーツ』紙より引用)
英訳:” There were (times when I was really negative,) times when I would get mad and lose my temper. Even though I went through that, I was able to overcome that and accomplish this. ”
(10月1日付け『Seattle Post-Intelligencer』紙より引用)
解説:get madは「怒る、頭に来る」の意味で、angryよりもくだけた語。通例、軽い気持ちで用いられる。temperは名詞で「自制、落ち着き」の意味。lose one’s temperで「腹を立てる、自制心を失う」の意味。
 
●「200本打てたら、3割なんてどうだっていいですね」
(10月2日付け『サンケイスポーツ』紙より引用)
英訳:”It was far more important to reach the 200-hit plateau than to finish the season with a .300 batting average.”(10月1日付け『大リーグ公式ホームページ』より引用)
解説:farは副詞で「(比較級の前で)はるかに、すごく」の意味を表し、直後の形容詞を強調する。ここのplateauは「大台、大記録」の意味。同様の報道を別の記事では、plateauの代わりにmilestoneを用いていた。batting averageは野球用語で「打率」を表す。

【2004年に樹立した年間安打の大リーグ新記録を称えるコミッショナー特別表彰のセレモニーでの、初の英語スピーチ】

“I am honored to receive this award. Breaking the hits record here at Safeco Field in front of the Seattle fans is the greatest moment of my baseball career. First, I must thank George Sisler. I was able to experience that great moment only because he made such an impressive record. Without George Sisler, I never could have reached this level of emotion. I am honored to have broken this prestigious record. I also want to thank my wife, Yumiko, my teammates, the fans in Japan and most of all, Seattle fans. You give me great inspiration. Thank you.” (4月22日付け『大リーグ公式ホームページ』より引用)
 
要チェックのイディオム&英単語
● be honored to …:…することを光栄に思う ※…に名詞が続く場合にはtoの代わりにforが用いられる。
● break a record:記録を破る ※breakの代わりに、beat / crack / smashも使える。
● only because …:ひとえに…なので ※because以下の理由を強調する場合に用いられる
● prestigious:名声のある、一流な ※名詞はprestigeで「名声、威信」
● inspiration:激励、刺激 ※You give me great inspiration.はここでは「皆さんの支えがあってこそだと思います」の意に当たる。
inspirationはほかに「(絵画や音楽、文学における)インスピレーション」や「素晴らしい着想」の意味でも用いられる。
 

マリナーズの新日本人選手 城島健司選手を英語で知ろう!

■技術面

城島選手はプロ入り11年間で211本塁打を放った上、4年連続でパ・リーグ盗塁阻止率1位にも輝いた強肩の持ち主。その技術面を表すキーワードは次の5つ。
 
power hitter / line-drive hitter / gap hitter / strong arm / quick feet and hands

1. He is a power hitter, but the fact is he is more of a line-drive hitter.(彼はホームラン・バッターであるが、実際はむしろ強いライナーを打てる打者だ)
解説:power hitterは「強打者、ホームラン・バッター」のこと。line-driveは「ライナー(一直線に飛ぶ強い打球)の」の意味で、linerでも表せる。ちなみにplace hitterなら、「野手のいないところを狙って打つ打者」。
 
2.He doesn’t think of himself as a home run hitter. He thinks of himself as a gap hitter.(彼は自分のことをホームラン・バッターとは思っていない。外野手の間を抜くヒットを打てるバッターだと思っている)
解説:マリナーズのゼネラル・マネジャー、ビル・バベーシ氏の言葉。ここのgapは「外野手の間」の意味。
 
3.Johjima, who counts a strong arm among his assets, has also won praise from scouts for his quick feet and hands.(強肩が持ち味の城島だが、〈捕球から投げるまでの〉軽快な手足の動きもスカウト陣から定評がある)
解説:strong armで「強肩」。英語では肩(shoulder)ではなく、腕(arm)で表現する。

(引用:1、2、3、2005年11月22日付け『シアトル・ポスト・インテリジェンサー』)
 

■英語力

技術と共に報道で取り上げられることが多い彼の英語力。投手とのコミュニケーションはどうなのか!? 監督や関係者などの談話からキーワードを拾った。

insurmountable / universal language to baseball / Fluent in Baseball, if not English / lost in translation

1.He didn’t think the language barrier would be insurmountable.(城島は言葉の壁を克服できないものだとは考えていなかった)
解説:マリナーズ監督、マイク・ハーグローブ氏の言葉。形容詞insurmountableは「打ち勝ちできない、克服できない」の意味で、unconquerableやinvincibleと同義。

2.If you stick to the basics, you’ll be OK. There is a universal language to baseball. (基本に忠実になれば大丈夫さ。野球には万国共通語があるからね)
解説:チームメートとなるJ・J・プッツ投手のコメント。stick to …で「…からそれない、…に専念する」の意味。stick to itで「がんばる」の意の熟語。

3.Fluent in Baseball, if Not English.(英語はダメでも、野球は堪能)
4.Will his overseas success be lost in translation?(海外での成功は翻訳を通して失われてしまうのか)
解説:投手との英語でのコミュニケーション能力を疑問視する記事の見出し3と本文の1文4。fluentはinを従えて「…(言葉)が堪能」の意味。?はもちろん、東京を舞台に2人のアメリカ人の精神的つながりを表現した映画「ロスト・イン・トランスレーション」から。ちなみに記事内では、千葉ロッテマリーンズを31年ぶりの日本一に導いた“ガイジン”監督・ボビー・バレンタイン氏が「城島はこれまでアメリカ人投手ともコミュニケーションを取ってきている。彼は自分が望む球種とコースを投手に投げさせることができていた」と安心材料を与えている。また言葉の問題より“It’s all about learning pitchers and teammates.(ピッチャーとチームメートを知ることが一番)”とのコメントも。
 
(引用:1、2、2005年11月22日付け『シアトル・ポスト・インテリジェンサー』。3、4、11月23日付け『ニューヨーク・タイムズ』)
 

■入団決定時

獲得、入団などの意味を表す単語は意外と平易なものが多いが、そこにはもちろん野球に関連付けたものが混じっている。

plate / catch / catch on

1.M’s plate Johjima.(城島がマリナーズにホームイン)
解説:plateは「…(走者)をホームインさせる、迎え入れる、(得点を)挙げる」の意味の動詞。名詞ならthe plateで「本塁、ホームプレート」を表す。ここのplateは、城島を(チームに)迎え入れるの意味。

2.Mariners catch a rising star in Johjima.(マリナーズが売り出し中のメジャー新人選手、城島を獲得)
解説:キャッチャーである城島選手に掛けた見出し。catchには自動詞として「キャッチャーをする」の意味もある。また、シアトル・タイムズ紙の見出しには、M’s hope Johjima will catch on quickly.(マリナーズ、城島がいち早くメジャーに慣れることを望む)も使われていた。catch on quicklyで「ピンと来る、すぐに受け入れられる」というイディオム。

(引用:1、11月22日付け『シアトル・ポスト・インテリジェンサー』、2、11月22日付け「大リーグ公式ウェブサイト」)

協力:リント&コミュニケーション英語研究所

東京にある、英語学習教材を主要分野とする出版社。音声CD付きのTOEICテスト専門誌『TOEIC Testプラス・マガジン』(隔月刊)も発行。同誌には、TOEICテストの模擬問題のほか、生きた英語を学ぶための記事が収載されている。また、メルマガ『A Hint of English from Lint~言いたい英語・聞きたい英語~』やウェブサイト(www.lint.co.jp)でも、英語学習に役立つ情報を発信している。

*情報は2006年時点のものです。