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アーティスト&ミュージシャン いちます茉莉さん

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シアトルやポートランドで活躍する方々に人生の転機についてインタビュー

個性豊かなファッションに身を包み、ふらりと出かける猫たち。今春、そんな猫と短い詩を合わせた書籍『Fur Coats & Backpacks: The Travel Cats Hit the Road』がChin Music Pressより発売されました。今回は作者の茉莉さんに転機を伺いました。(2026年4月)

アーティスト&ミュージシャン いちます茉莉さん
いちます茉莉(いちます・まり)

大阪芸術大学を中退後、the Art Institute of SeattleでAnimation Artを専攻して卒業。一度帰国し、2009年再びシアトルへ。2026年3月『Fur Coats & Backpacks: The Travel Cats Hit the Road』(Chin Music Press)を刊行する。バンド Bow&Yarrowではボーカルとギターを担当。好きな食べ物は納豆とお寿司。
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– 渡米した経緯を教えてください。
ずっと音楽が好きで、英語の歌詞を体で感じられたらいいなと思い、高校生のときに休学してワシントン州のシェルトンに留学しました。それがすごく楽しくて、帰国してからもまるで「アメリカに帰りたい病」にかかってしまったみたいでした。帰国後は、友達のバンドのためにイラストを描いたりすることで音楽シーンの中に自分の居場所ができたり、美大を受験した姉の影響もあったりで、大阪芸大の彫刻コースに入学。私の大好きなアーティストが通ったサンフランシスコの美大と提携していると聞いたので大阪芸大に入ったのですが、入学後にその提携は、ほぼ行われていないと知り、ショックで泣きました。親には申し訳ないけど1年で中退して実家に戻り、真剣にアメリカに行こうと渡米の準備を始めました。そして、留学でなじみのあった土地に近く、クラスメイトの住んでいた場所にも近いシアトルを行き先にしたんです。シアトルの大学ではアニメーションを勉強しました。漫画を描くのも好きだったので、自分の描いたものが動かせたら楽しいだろうなと思ったんです。

– 大学卒業後はどうしたのですか?
シアトルに来てから留学時代のクラスメイトと付き合うようになりました。大学を卒業して、一旦日本に帰国。2年後に結婚することになり、2009年にまたシアトルに戻ってきました。日本にいる間、仕事の合間に自分の作品を作ってはいたのですが、本格的にアート活動を始めたのは、結婚でシアトルに来てからです。

– 表現の幅が広いですが、ご自身の中にはこれがメインというものはありますか?
イマジネーションに命を宿すことに興味があるので、コマ撮りアニメでも、イラストでも、方法はなんでもいいというか、逆に一つに絞れないというか…。ストーリーメイキングが大事で、猫1匹描くにも、その猫の世界観を凝縮させて、見た人に感じてもらうのが自分のアートだと思っています。私の作る世界には脇役という存在はなく、全てがそれぞれの世界の主人公なんです。

– 2026年3月に出版された書籍では、たくさんの「旅猫(Travel Cat)」が出てきます。この猫のモチーフはいつ頃から描いていますか?
私の中には内側の転機と外側の転機があって、2009年に結婚でアメリカに来たのが外側の転機です。お父さんもお母さんも悲しそうで、初めて「あれ?私って大事にされてたな」と家族の愛に気付かされた瞬間でした。環境が変わって新しい人生が始まる時に、哀愁というか、孤独とか不安があって、でもワクワクと喜びにも満ちていて…、そんな自分を受け止めてくれるものをイラストにしたら、モコモコした毛を持つ、自分と同じように旅をする猫だったんです。癒やしや温かさの象徴だったんだと思います。それから、シアトルのライブハウスやバンドをやっていて出会った友達たちが面白くて、自分もこんな風にあるがままに生きたいという願望や、彼らからのインスピレーションもあって、旅猫の仲間がどんどん増えていきました。私は写真家で探検家の星野道夫さんが好きなので、星野さんのように心をコンパスにして旅をする存在を描いてみたい、そんな存在をたくさん描いて本にしたらどんなものになるだろうと、好奇心から描き始めたんです。

– そこからどのように旅猫を広めていったのですか?
カードにしてライブハウスで配ったり、お店で売ったり、フリーマーケットに出店するようになっていきました。あるイベントで、私の隣にシアトルの出版社Chin Music Pressが出店していたんです。編集長のブルースさんと知り合い、パイクプレイス・マーケットにある彼らのお店に旅猫のカードを置かせてもらえることになり、そこから本にする話が出て、初版が2022年に出ました。今回の新装版では旅猫が増え、私が紙を選び、中の文章も新しくしました。

– 外側の転機と内側の転機があるそうですが、内側の転機とは?
これまで音楽、アニメ、イラスト、いろんなことをやっていて、逆に一つのことをずっと続けられなくて、でも、その多側面な自分を受け入れられるように内面が整ってきたので、今が内側の転機のような気がしています。これから先、どうやって進んでいくんだろう?と楽しみで、この感情から何か新しい作品作りが始まる気がします。自分の納得できる本ができたから、新しい始まりを感じているのかもしれません。旅猫の本を作るうちに、自分も彼らみたいに自由に生きたいと分かったんです。少し前から自分の音楽も始めています。ずっと友達とバンドはやっていたけど、自分の歌を自分で歌うことは怖くてできなくて。でも、1年くらい前から少しずつ向かい合えてきている気がします。旅猫からたくさん気付いたことがありました。これからもまた自分は変わっていくのだろうと思います。

アーティスト&ミュージシャン いちます茉莉さん
▲新作『Fur Coats & Backpacks: The Travel Cats Hit the Road』に掲載している旅猫たち。猫のイラストには1匹ずつ短いストーリーが記されています。
 
*情報は2026年4月現在のものです

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(ライトハウス編集部)