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【私の転機】Nu-Table Meals and Delivery オーナーシェフ ビニャール由美さん

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シアトルやポートランドで活躍する方々に人生の転機についてインタビュー

日本の家庭料理を定期的に配達するNu-Table。「単なる食事の提供ではなく、パパやママの時間や負担を軽減するのが仕事」と話すオーナーシェフの由美さんに、これまでの転機を伺いました。(2023年5月)

Nu-Table Meals and Delivery オーナーシェフ ビニャール由美さん
ビニャール由美(びにゃーる・ゆみ)

静岡県出身。薬剤師として勤務した後、2005年に渡米。09年にBastyr Universityで栄養学の修士号を取得し、日系マナーで調理師を務める。出産を機に退職後、知人の食事作りを手伝うようになり、20年に法人を設立。21年3月からNu-Tableとして食事のデリバリーを開始。好きな食べ物はワゴンで運ぶスタイルの飲茶。https://www.nu-table.com/

20代の頃、日本で薬剤師として働いていました。一方、妹は外大を出て外国人の知り合いが多く、そんな彼女を見ていて私も短期間海外に住んでみたくなったんです。そこでシアトルでの語学留学を決意しました。

こちらに来て、まず驚いたのがアメリカの乱れた食生活です。それまで薬やサプリで体を良くすることを考えて仕事をしてきましたが、シアトルに来て、薬を飲む以前のこと、つまり、体を作り健康を維持する食事の大切さに目が向くようになりました。そこで、コミカレを出た後、大学院に進み、栄養学を学ぶことにしたのです。

– 食育、時間、親としての悩みが原点
修了後は高齢者施設の調理師として就職。その後結婚し、長女の出産を機に退職しました。2年後に長男が生まれ、今度は子育てを通して、食育の大切さを痛感するように。子どもの頃に多様な食べ物や味を口にしておけば、味覚が発達し、大人になって豊かな食生活を送れます。

また、パパ友やママ友からは、「食育の大切さは分かっているが、買い物や調理に時間が割けない」「良いものを食べさせたいけど作るのが大変」と悩みを聞くこともありました。そこで、時折、友人のために食事を作るようになったんです。同時に世間ではミールデリバリーやプライベートシェフが少しずつ浸透し、忙しい家庭のために栄養バランスに優れた料理を提供するビジネスはいいかもしれないと思い始めました。

– ロックダウンが起業の転機に
転機となったのは新型コロナウイルスによるロックダウンです。先行き不透明で外にも出られず、家で子どもの面倒を見ながら仕事をする友人たちが疲弊していました。「家の食事だけでもお願いしたい」と周りからのリクエストに応え、ついに法人化することにしたんです。

私が作るものは特別なメニューではなく、日本のお母さんが家で作る和食、洋食や中華料理。ロールキャベツもあれば煮物も麻婆茄子もあります。子どもたちには、苦手な野菜も含め、いろんな味を食べてほしいですから。子どもの頃、きちんと料理を作ってくれた親の影響は大きいかもしれません。

開業当初は、子どものいる家庭を利用者として想定していましたが、高齢の方からの利用も増えています。子どもと高齢者では食の好みが違うのは難しいところですね。また、1回の配達で2食分を届けるので、言い換えればお客様は作り置きを食べることになり、出来立てを提供できないことにもどかしさを感じることもあります。キッチンでスタッフと味見をしながら「出来立ての今が一番おいしい。これを食べてほしい」ってよく言っているんですよ。

私の仕事は、単なる食事の提供ではなく、お父さんお母さんを助けるサービスだと思っています。「由美さんのご飯がある日は夕飯の心配をしなくていい」「Nu-Tableの日はゆっくりできる」そう言ってもらえるとうれしいです。開業から丸2年。デリバリーできる範囲やメニューなど、まだまだ改善できるところはたくさんあります。もっと多くの方に気軽にオーダーしてもらえるよう、これからも続けていきたいと思っています。

Nu-Table Meals and Delivery オーナーシェフ ビニャール由美さん
▲自分の食べたいものは自分で作るしかないアメリカの環境が、調理の仕事の原点」と由美さん。月2回計4食分の栄養バランスの取れた食事を届けています。
 
*情報は2023年5月現在のものです

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