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グレーター・シアトル地域の経済(コラム)

シアトルを中心に広がるグレーター・シアトル地域の経済を、グレーター・シアトル貿易開発連合・副会長 サム・キャプラン氏が日本との関係も交えながら親しみやすく、そして分かりやすく届けます。(2003年)

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国際都市シアトルの経済概論

(2003年3月)

アメリカで最も国際貿易が盛んな地域のひとつと言われているのが、シアトルを中心に広がる“グレーター・シアトル”と呼ばれるエリア。その地域の最大貿易相手国が日本だということは、多くの人が知っていることで、いまさら驚くようなことではないでしょう。でも1896年に日本の三池丸がシアトル港にシルク、茶、しょうがを運んできて、代わりに木材、小麦、石炭を持ち帰り、日本とシアトルの貿易が始まったその時以来、日本がつねに一番のお得意さんだという事実には、びっくりしませんか?

このコーナーでは、国際的な展望を目の当たりにできるピュージェット・サウンドを視野に入れながら、毎月興味深いトピック--国際的なビジネスやそれに携わる人々、研究者、企業や機関など--をお届けしていきます。

ところで、2,200億ドルにも上るワシントン州のGDPのうちの約730億ドルは、なんと、何らかの形で国際市場に関連したビジネスによるものなのです。例えばマイクロソフト社は、国際市場にとても依存していて、海外での売り上げが全体の60%以上にもなります。しかし、この傾向はマイクロソフト社に限ったことではなく、ワシントン州の多くの企業でも同じです。昨年のワシントン州の輸出総額は350億ドルですが、これをワシントン州の人口ひとり当たりの輸出額に換算すると、ひとり当たりの国民平均輸出額のほぼ2倍近くにもなり、全米でも第2位にランク・インされるほどです。

グレーター・シアトル地域にとって、今では“インターナショナル”という言葉は単なる“輸出”“輸入”以上の意味を持つようになりました。キング郡を訪れる人の約15%は国外からやってくる人たちですし、何千人もの留学生がシアトルの4年制または2年制の大学に通い、ワシントン州に毎年2億ドル以上もの経済効果をもたらしています。さらには、シアトル・マリナーズやシアトル・スーパーソニックスにとって、外国人選手は、もはや欠かせない戦力になっているのはご存じですね。それではまた来月も、シアトルの国際経済を紹介するこのコーナーで、お会いしましょう。

シアトルにある日系企業と日本に進出したシアトル・ベースの企業について

(2003年4月)

先月号ではシアトルと日本の結び付きが非常に幅広く、深いということを学びましたね。じつはこの関係は文化的な面だけでなく、ビジネス・シーンにも言えることなのです。昨年、ワシントン州と日本の間では約270億ドルにも及ぶ取引が行われました。数多くの日本企業がグレーター・シアトル地域の市場に投資したり、商品を売ったりしました。その一方で、この地域の多くの有名企業が日本でビジネスを展開しています。シアトルと日本の関係は、まさに両者にとって有益な関係と言えるでしょう。

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さて、グレーター・シアトル地域でビジネスをしている日本企業のうち最も有名なのは、おそらくシアトルに北米オフィスを構える任天堂ではないでしょうか。同社が全額出資している子会社Nintendo of America Inc.は、西半球の企業活動の拠点となっており、ここではグレーター・シアトル地域でおよそ1,000人の労働者を雇っています。ちなみに、アメリカ人家庭の約40%以上が任天堂のゲーム機を所有していると言われています。

先にシアトル地域の多くの企業が日本でビジネスをしていると言いましたが、その企業の規模は、マイクロソフト社やスターバックス社のような大企業から小さなハイテク企業まで、じつにさまざまです。スターバックス社は1996年8月、東京・銀座に最初のコーヒー・ショップをオープンさせて以来、今や店舗数は200店以上にも上ります。また、シアトルを拠点とする別のコーヒー・ショップ・チェーン、タリーズ社は、1997年に初めて日本市場に進出し、これまで販売契約を結んだショップが42店あります。

また、シアトル地域で最も成功した卸売業者Costcoは、アメリカン・スタイルのストアを1999年に福岡、2000年に千葉にオープンさせています。シアトルで最も有名な企業のひとつ、マイクロソフト社では、約1,000人が日本国内のいくつかのオフィスで働いています。同社は『Far Eastern Economic Review』誌の調査において、6年連続でアジアにおける“最も敬服される企業”に選ばれています。

日本とグレーター・シアトル地域が広くビジネス面で繋がっているさらなる証拠として挙げられるのが、シアトルにあるビジネスの関連団体です。日米協会、日本商工会、神戸市貿易事務所、兵庫経済文化センター、Japanese American Chamber of Commerce、Japan External Trade Organization(JETRO)など、たくさんあります。

シアトルと日本の関係は、このまま成長し続けていくでしょう。5月18~21日には日米協会が「IT/ワイヤレス・視察団」を東京に送ることになっています。詳しい情報は同協会のウェブサイトwww.us-japan.org/jasswで確認してください。

グレーター・シアトル圏の経済を支えるリサーチ関連団体・企業

(2003年6月)

世界の多くの都市、特にアジアで、先端科学産業団地が多く作られていますが、グレーター・シアトル圏も大規模な科学技術産業団地のひとつなのです。つまりここは、世界でも最も重要なリサーチ機関が集まる科学地域であり、そこに集まる機関が果たす重要な役割は、テクノロジーとグレーター・シアトル地域にハイテク経済をもたらす、専門的技術を発展させることなのです。

リサーチ機関は多様な分野に渡っていて、インフォメーション・テクノロジーから航空宇宙学、医学、そして新興分野のナノテクノロジー、光通信学、ゲノミクスなどがあります。グレーター・シアトル地域のリサーチ機関は過去20年間で約190億ドルのリサーチ基金を集めました。

ワシントン大学は世界のリサーチ機関を持つ大学の中でも、きわめて優秀な大学のひとつで、34,000以上の生徒が在籍しています。ワシントン大学は他の公立大学よりも連邦奨学金を多く受け、さらに提携関係もたくさん結んでいます。ビル・ゲイツが7,000万ドルの奨学金をゲノム研究に寄付したのは、つい先日のことです。同大学からは科学と医学の分野で大勢のノーベル賞受賞者が輩出されています。

またシアトルには、世界でも最高のがん治療と研究機関のひとつとされる「フレッド・ハッチンソン・がん研究センター」があります。骨髄と幹細胞移植の実績は世界の他センターよりも多く、国内最大のがん予防プログラムの実施機関にもなっています。同センターは国内の、どのがん研究機関よりも多く連邦局から研究奨励金を得ており、昨年にはセンター長のリー・ハートウェル氏がノーベル医学賞を受賞しました。

バイオテクノロジーの研究はグレーター・シアトル地域において、成長中の大規模なハイテク産業です。バイオテクノロジー関連会社、例えば「ICOS」社や「Targeted Genetics」社、「Zymogenetics」社は最先端のバイオ研究をリードしています。ある調査によれば、グレーター・シアトル圏の研究開発に関連する団体の総合的な価値は6億9,200万ドルになり、アメリカ国内で5番目に位置しています。

この地域の企業の多くが世界規模を誇る研究をしており、そのうちのひとつがソフトウエアです。「マイクロソフト・リサーチ」社は本拠地をこの地域に置く企業のひとつですが、「マイクロソフト」社はソフトウエアの研究所を初めて設けた会社で、それは12年前のことでした。今日同社は年間50億ドル以上を研究開発に費やしています。600人以上の研究者がさまざまな種類の研究プロジェクトに携わっており、人工知能、マルチメディア、量子計算、音声認識、画像処理などの分野に渡っています。「マイクロソフト・ジャパン」社では約1,000人がいくつかの場所で働いていますが、同社が重点に置いている研究はアジア系言語を話す人達に非常に使いやすいコンピューターを作ることなのです。

シアトル地域にあるこの分野の団体や企業はつねに忙しい先駆者達で、その分野の潜在能力は認められ始めたばかりです。昨夏、ワシントン大学は大学として国内で初めてナノテクノロジーのドクターの学位を設けました。また、人ゲノムプロジェクトを可能にした自動DNAシーケンシング技術(DNA sequencing technology)の共同開発者のひとりであり、国際的に知られるLeroy Hood氏は、シアトルの「システムス・バイオロジー研究所」(ISB)の設立者でもあります。ワシントン大学のリサーチ・センターはナショナル・サイエンス基金をはじめとする他団体からも数百万ドルもの奨励金を受け取り、光を使った基礎技術である光通信学の分野の研究に利用しています。

過去の歴史的成功から将来の新技術まで、科学はシアトルの日常の一部となっています。「マイクロソフト」社の共同創始者ポール・アレン氏が来年「サイエンス・フィクション美術館」をオープンする時には、その建物の窓から未来の光を見ることができることでしょう。

樹木に関連した産業

(2003年7月)

グレーター・シアトル圏がハイテク経済で有名なのは言うまでもありませんが、この地域の伝統的な産業も引き続き、当地の経済において重要な役割を果たしています。林産業に関する日本とシアトルの結び付きは、1890年代に日本の汽船「三池丸」が木材を運んだ時点まで、さかのぼります。

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今日、林産物に関して、日本はワシントン州の最大輸出相手国で、2001年には州内の企業が12億ドルもの林産物を輸出しました。ちなみにこの輸出量は、アメリカ国内の木造建材の50パーセント以上に相当し、アメリカ国内では最多です。主な輸出製品には、加工木材やプレハブ住宅のパッケージ、木製ドアや木製窓などがあり、その大部分は日本の住宅産業に使用されます。

グレーター・シアトル地域は、アメリカの重要な林産物企業の本拠地でもあります。「ウェアハウザー」社は、アメリカの林産物の最大輸出企業であると共に、世界最大の林産物生産企業のひとつです。当地域にはほかにも「シンプソン」社と「プラム・クリーク」社のような大企業もあります。

日本市場はワシントン州の林産物産業にとって非常に重要で、「エバーグリーン・ビルディング・プロダクツ・アソシエーション(EBPA)」が日本に事務所を設け、代表者を派遣しています。EBPAは民間の非営利会員組織で、アメリカの住宅や建築製品、関連サービスなどを世界輸出市場に向けて販売促進することに積極的な関心を持っている企業や個人達から、成り立っています。EBPAでは毎年日本への使節団を結成し、「ジャパン・ホーム・ショー」や「ホーム・ビルダーズ・エキスポ」での展示会を開催しています。EBPAにはシアトル地域からのメンバーはもちろん、日本の木造建築産業からのメンバーも参加しています。

ワシントン大学の森林資源学部には、「林産物国際貿易センター(CINTRAFOR)」を含め、賞賛を受けている数多くのプログラムがあります。CINTRAFORは国際市場のデータの研究と維持に加え、林産物の国際貿易に関する、大学院レベルでの研究に必要な資金の提供も行なっています。

あなたが眺めている家のドアや訪問先の木造住宅、そして家の中で、あなたが「素敵だな」と感じる趣向が凝らされた刳り形細工も、ひょっとしたら、ワシントン州の企業から輸出された木材でできたものかもしれません。100年以上前に「三池丸」が太平洋を往来した頃とちょうど同じように、ワシントン州と日本は今でも、林産物やその他多くの貿易やビジネス関係でつながっているのです。

2ケタ成長を遂げているビジネス

(2003年11月)

最近私のオフィスに、仕事をリタイアされた日本人の方が、奥様を連れだってお見えになりました。その方はオクノマサトシさんというのですが、彼のおじいさんは1920年代にシアトルに住み、日本の最大手海運会社である日本郵船株式会社に勤務されていたそうです。また、オクノさんの母親はマドロナ小学校に通っていたとのことです。

オクノさんはその時、1929年にフェアモント・オリンピック・ホテルで行われた『日米協会』のアニュアル・ディナーの写真と、当時の『シアトル商工会』の会員証のコピーを見せてくれました。
パーティー会場となったスパニッシュ・ボールルームの様子は今とまったく変わらず、出席者はタキシードと豪華なドレスを優雅に着こなしていました。

お気付きだと思いますが、『ワシントン州日米協会』は1929年にはすでに存在していて、今年80周年を迎えるのです。一方、日本郵船は74年たった今でも、シアトル港の18番ターミナルに寄港しています。同社以外にもシアトル港には、株式会社商船三井と川崎汽船株式会社の2社が定期的に寄港しています。商船三井と日本郵船は、取引高においてシアトル港のトップ5に入っています。

タコマ港もまた、日本との間を行き来する海運業から大きな利益を得ています。川崎汽船はタコマ港に拠点があって、1週間に一度、コンテナ船が寄港しています。タコマ港には、日本からマツダ、三菱、いすゞなどの自動車が大量に運ばれてきて、輸入車としての手続きが行われています。2002年度には、18万台以上の車がこの港を通して取引されました。

一方、輸出に関しては、ウェアーハウザー社が運営する港管轄の施設を通じて木片の取引が行われていて、この木片は日本の製紙工場に送られています。ウェアーハウザー社は昨年度、港を通じて279,347米トンの木片の取引を行いました。

シアトル港もタコマ港も日本に海外事務所を構えています。日本と両港の間の取引額が220億ドル以上もあれば、これは当然のことでしょう。また、日本とグレーター・シアトル圏の経済が共に芳しくない状況と言えども、シアトル港は日本との取引において、前年の累計と比べて2ケタの成長を記録しているのです。

グレーター・シアトル圏の港を通じて行われる貿易は日本経済にとって、とても重要なものですが、それはシアトルにも恩恵をもたらすものです。なぜならこの取引から、グレーター・シアトル圏で港湾労働者や貨物運送業者といった10万以上の雇用が生み出されているのですから。

さらに、港関連事業によって年間この地域にもたらされる金額は、1億ドルを超えています。
ちなみに、先のパーティーの写真でオクノさんのおじいさんはタキシードを着ていなかったのですが、今日まで続く日本郵船や貿易相手としての日本の重要性を考えれば、正装していなくても、きっと彼はシアトルで気まずい思いをすることはなかったでしょう。

会員証
▲1920年代に発行された『シアトル商工会』の会員証
提供:オクノマサトシ氏

ワシントン州産の農作物

(2003年11月)

グレーター・シアトル圏”と“貿易”と言えば、航空機、ソフトウェアなどのハイテクノロジー製品を思い浮かべる人も多いでしょう。それはもちろん間違いではありません。なぜならワシントン州から最も輸出されているものが航空機とソフトウェアだからです。しかし、ひとつ忘れているものがあります。それは農作物。ワシントン州からの三大輸出物は航空機、ソフトウェアに加え、農産物があります。

あなたがムシャムシャとかぶりついているリンゴやソテーに使う玉ねぎ。こういった農産物はワシントン州でよく生育します。また、あなたがアジアで飲むビールはワシントン州のホップから作られている可能性があります。ワシントン州で育った農作物の30%以上は海外市場に輸出されますが、そのうちの約70%が日本、台湾、韓国を中心としたアジア諸国に運ばれています。2002年には、ワシントン州の総輸出農作物の25%以上が日本へ輸出されました。

農作物や食品の輸出総額は39億ドルに達し、同州で農業に従事している人は17万人を超えています。この業界は航空業に次ぐ州で2番目に大きな産業なのです。

ワシントン州はリンゴの生産でよく知られていますが、ここで取れる作物の種類は驚くほど多岐にわたっています。230種類以上の食物、飼料、種が毎年育てられ、その収穫量はカリフォルニア州に次いで多くなっています。また右の作物では、ワシントン州が生産高において他州をしのいでいます。

  • リンゴ
  • 西洋ナシ
  • スペアミント油
  • 加工ニンジン
  • フライドポテト用のジャガイモ
  • スイート・チェリー
  • レンティル
  • コンコード・グレープ
  • レッド・ラズベリー

この作物のほとんどは、グレーター・シアトル圏からは数時間のドライブを要するカスケード山脈の東側で育てられています。しかしグレーター・シアトル圏も農業に貢献する大きな役割を持っています。シアトルは食品の仲介業者と卸売業の本拠地であると共に、農業関連の財務、法、会計に絡むエキスパート達の拠点となっています。また、この地域にある港や空港は、日本を始めとするアジア各地への輸出業に大きく依存しています。

日本への農産物の輸出がワシントン州にとって重要であることは、ワシントン州農務省が日本の市場に貢献するさまざまなセミナーや情報の提供を行っていることからもわかります。その中には“ポテトチップス用にスライスされたジャガイモの日本への輸出”や“日本向け食品原料”をテーマにした日本語のガイドもあります。

ノート・パソコンにインストールしたマイクロソフト社のソフトウェアを使って仕事をしながら、ボーイング社製のジェット機で東京に向かう際、これらの故郷がワシントン州だと思うのと同様に、日本で食べるポテトチップスやグレープ・ジュースの原料も高い確率でワシントン州産だということは、覚えておくのに価するでしょう。

マーケット
▲シアトル市民がマーケットで買う食材と同じものが、海を渡ったアジアで食されていることも
© Washington State Tourism
リンゴの選別機
▲リンゴの産地として知られるウェナッチーの『North Central Washington Museum』には、リンゴの選別機械が展示されている
©Sunny Walter
●文・グレーター・シアトル貿易開発連合・副会長 サム・キャプラン氏
Sam Kaplan Vice President, Trade Development Alliance of Greater Seattle

Trade Development Alliance of Greater Seattle
グレーター・シアトル貿易開発連合

貿易振興の活動を通じ、当地域を北米第一の貿易の窓口、並びに商業中心地にするために貢献している組織。キング郡やスノホミッシュ郡大都市圏、シアトル市、エベレット市、シアトル港湾局、タコマ港湾局、シアトル商工会議所、そして労働関係団体と公私に渡り提携関係を結んでいる。

ウェブサイト:www.seattletradealliance.com