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アメリカの資産整理から日本の入居施設まで 〜 おひとりさまの終活・老後の日本への帰国

アメリカの資産を整理して単身で日本に引き揚げる場合の「おひとりさま」向け終活ガイドをお届けします。アメリカの税金と年金、不動産売却、荷物整理と日本への引っ越し準備、アメリカでの遺言書とリビングトラスト、日本の後見人制度と保証人について、以下に詳しくまとめました。(2023年3月)

※ 掲載情報は2023年3月時点のものです。


「おひとりさまの終活」と聞いて、現在「おひとりさま」ではない方は他人事だと思うかもしれません。しかし、今は配偶者や子どもと一緒でも、将来的に配偶者と離別、または死別する可能性は常にあり、子どもが独立したら、時には州外など遠く離れて暮らすケースがアメリカでは一般的です。つまり、現在独身の方もそうでない方も最期に頼れるのは自分だけかもしれないのです。

実際、おひとりさまの高齢者は、アメリカで増え続けています。「Housing America’s Older Adults 2019」という調査によると、65歳以上が世帯主である世帯の37%が高齢の夫婦のみ、また実に42%が高齢者による単身世帯であることが分かっています。日本人の高齢者は多くの場合、入居したい施設の条件として「日本語が通じること」「日本食が食べられること」などを挙げます。そうなると、アメリカでそのような施設を選ぶにはハードルが高くなります。

アメリカの資産を整理して日本に引き揚げるためにはやるべきことが多くあります。手続きの内容は1人でも2人でもそれほど変わりませんが、あなたがおひとりさまなら、決断し実行するのは全てあなた自身なのです。そこで今回は、終活のパターンとして単身者がアメリカの資産を整理して日本に引き揚げるケースを想定し、おひとりさまの終活のための参考情報をまとめてみました。

日本へ帰国する際のアメリカの資産整理(年金・税金、不動産)

アメリカの税金と年金

最初にアメリカから日本に引き揚げる際に、知っておきたい税金、年金などに関わる事項を公認会計士の石上洋さんに解説していただきます。「帰国前に知っておきたい日米の税制として、まず基本的に居住者と非居住者では、アメリカでのタックスリターンの義務が異なります。アメリカ市民は日本で暮らしてもアメリカへのタックスリターンの義務があり、永住権保持者も正式にそのステータスを放棄しないまま日本に帰国すると、アメリカの居住者と見なされます。日本のアメリカ大使館で永住権の放棄申請を行った後は、基本的にタックスリターンは不要となりますが、アメリカで家賃収入が発生しているなど、なんらかの収入がある方は引き続きタックスリターンの義務があります」。

注意が必要なのが、グリーンカード上の有効期限が切れれば自然と永住権も失うと思っている人が多いという点です。石上さんはアメリカの大使館で正式に手続きを行わない限りは、引き続き永住権保持者として、日本に帰国してもタックスリターンの義務が生じると注意喚起をしています。

さらにタックスリターンだけでなく、市民権、永住権を保持したまま日本で生活する人には、海外資産開示の義務が発生します。これは海外金融資産の期中最大残高が一度でも1万ドルを超える人には申告が求められるというもので、金融資産に含まれるものは、銀行口座、証券口座、投資信託、積み立て保険、株券などです。

また、米国居住者から非居住者に変わる際には、最後に出国税と呼ばれる税金が発生します。これは全ての永住権・市民権保持者、長期滞在者が対象で、次のいずれかに当てはまる場合にのみ税金がかかります。

  • 過去5年間の平均所得税額が一定額以上(2021年の場合は17万2000ドル注:所得額ではなく所得税額)。
  • ステータス放棄日時点での純資産額が一人につき200万ドル以上
  • 過去5年間の所得税申告を正しく行っていない。

アメリカで利用した年金制度(「IRA」や「401(k)」など)について、石上さんは「市民権、永住権を放棄予定の方が『Roth IRA』を日本で引き出すと税金がかかるため、帰国する前に引き出すのが有利です。逆に『Traditional IRA』は日本で引き出すと有利に計算される可能性があります。アメリカの会計士だけでなく、日本の税理士にもアメリカの個人年金から得る収入への課税の認識を確認されることを強くお勧めします」。また、石上さんは年金に限らず、節税および税金の過払いを避けるために、日米両方の税理士や会計士との連携の重要性を強調しています。

米国公認会計士 石上洋さん


Ishigami, Ishigami & Ochi, LLP

 

アメリカの不動産の売却

アメリカで所有している不動産の処分について、Kohtoku Enterprise, Inc.の菅沼秀夫さんに伺いました。通常の売却では、金利、株価や為替の変動、世界情勢など考慮しますが、おひとりさまの売却の場合はどうでしょうか。「おひとりさまの場合、老人ホーム入居への資金、帰国のための売却、ローンの支払いが難しくなったなど“売り時”を考慮しない場合が多いようです。ここワシントン州では昨年5月末までは市場売り出し価格以上で、オファーも重なって入ってくる市場でしたが、金利や株価の変動があったとたん市場売り出し物件にオファーが入ってこなくなる現象が突然起き、バイヤー、セラー、エージェントが戸惑う時期に突入しました。その後、現在の金利が元来は平均的とされていたこと、今までの金利が低過ぎだったと認識され、市場は再び少しずつ動き出し始めました。

ここ数年、インスペクションをしてから購入するオファーは初めから振り落とされる売り手市場でしたが、2022年後半には住宅ローンの金利変動による市場売買に変化が生じ、バイヤーがインスペクションをしてから購入することも可能になり、あるべき健全な市場に戻ってきたという見方も多くなり始めた年明けでした。現在、地元大手企業の大幅リストラが不動産売却に影響を及ぼすものの、エリアによってはオファーが重なる気配も再び出てきています。とはいえ、おひとりさまの不動産売却は、市況を気にしながらも、資産、税金、全ての人生における整理のタイミングを優先されることが多いようです」。

また、売却準備については「必要に応じたペンキ塗り、補修、水回りのリノベーションなどは、どなたにも必要ですが、おひとりさまの場合、業者の選択、手配など一人でできないことが多く、何から始めたら?と頭を抱えることも。なお、弊社では売却に必要な補修、リノベーションのアドバイス、業者の選択、売却完了までの費用の立て替えをしています。売却が決まったら家具、衣類、家財道具の縮小化を。また、アメリカから日本への帰国後の郵便物の受け取り住所の指定も必要です」とのことでした。

なお、アメリカの不動産を賃貸物件として残しての帰国はデメリットが多そうです。「高齢になってのテナント探しから家の管理、補修は大変で、信頼できる管理者を選び管理させるには、コストがかかります。アメリカの友人や隣人に任せると、トラブルが発生することも。値上がりを期待して所有しても、将来の動向は分かりませんし、万一の際は家族が手続きをしなければならず、問題が発生することが考えられます」と、家賃収入と管理補修費用や手間とのバランスを考えることの重要性を菅沼さんは解説してくださいました。

不動産エージェント・CEO 菅沼秀夫さん


Kohtoku Enterprise, Inc.

 

アメリカでの荷物整理と引っ越し準備

不動産売却と並行して取り組みたいのが不用品の処分と引っ越しの準備です。Nippon Express U.S.A., Inc.(日通)の服部正和さんは、不用品の処分方法について次のようにアドバイスしています。「絶対に日本に持っていきたい物や日本で買い替えができない物を除き、部屋ごとに処分する物の仕分けをしましょう。捨てられる物は毎週のゴミに出す、捨てられない物は友人知人に譲る、オンラインの個人売買サイトなどで売却するなどします。処分する際に重要なのは、日本でどのような場所に住むかということです。いろいろと持ち帰っても、結局、スペースがなくて箱を開けず、そのまま日本で処分するという方も少なくありません。そうなると、輸送代に加えて処分費用もかかってしまいます」。

Nippon Express U.S.A., Inc.では、単身者向けに「シングル人パック」というサービスを提供しています。「S、Mと2つのサイズの箱のそれぞれにポイントが付いていて、シングル人パックの1パック分が50ポイントです。これはSサイズの箱では25個分に相当し、シアトルから日本までで1480ドルという料金になります(地域により料金は異なる)。さらに3000ドルまでの損害をカバーする保険料も含まれています」。 

保険に関しては、「輸送の過程でお皿が割れてしまったり、大切な物が壊れてしまったりと事故が起こる可能性があります。ですから、パック商品以外で保険が料金に含まれていない場合は、当社の場合はあくまで任意ですが、保険に加入していただくようにお勧めしています。たとえば1万ドルの価値の物品に対する保険料は1.5%で150ドルほどです。(保険料を抑えるために)実際のバリューよりも安く申告される方もいますが、最悪のケースを考えて実際の価値を申告するようにしましょう」と服部さん。

さらに、国境を越える引っ越しに関する注意点について聞くと、「物品によっては、日本の法令に抵触するものがあります。例えば、ギターが趣味の方がローズウッドやマホガニーでできたギターを日本に送ろうとしたことがありました。その場合、ワシントン条約に引っかかることもあります。また、ワインは免税範囲を超えて税金を払ったとしてもお一人につき日本に送れる量が決まっています。サプリメントやコンタクトレンズなども、日本に持ち込める量は2カ月使用分などの規定があります。何を送るのか、持ち込むのかなど、当社のような引っ越し会社の専門家に問い合わせされると良いと思います」と話してくれました。

ちなみにコロナ禍以降のタコマ港をはじめとする全世界の港の大混雑で、引っ越し荷物が日本に到着するのは2023年1月現在、送り出しから2カ月前後かかる見込みだということです。

Export Manager 服部正和さん


Nippon Express U.S.A., Inc.

 

遺言書とリビングトラストとは?

アメリカ国内の財産を第三者に残すなら、遺言書やリビングトラストの準備が重要です。ジョン比嘉弁護士に用語を解説していただきました。

遺言書(Will)

遺言書(Will)は、自分が死んだ時に、誰が自分のどの財産を受け取るべきかを書く書類です。遺言書を有効なものにするには、いくつかの法的な要件(例:2人の証人が必要)があります。遺言は、死後、その人の財産をどうするかを裁判所に伝えるだけのものなので、多くの人に適してると言えます。もし、遺言が無い場合、遺産はワシントン州の法令「RCW11.04.015」により分配されますが、この法令による分配方法は故人が望んでいたものと異なるケースが多いようです。

リビングトラスト(Living Trust)

リビングトラスト(Living Trust)とは、例えばジョンさんが受託者(Trustee)を指定し、財産を信託(ここでは仮に信託の名前をJohn Doe Living Trustとします)に移すとします。ジョンさんは自宅所有権をJohn Doe Living Trustに移す証書を作成し、自宅を信託に譲渡できます。法的には、信託がその財産を所有するので、ジョンさんはもはや所有者ではありません。受託者は、信託文書に記載された規則に従って信託財産を管理します。ジョンさんが亡くなると、受託者は、信託証書に従って指定された受益者たちに信託財産を分配します。このように、信託によって遺産をプロベートから回避できるのです。

リビングトラストは非常に複雑なので、信託を作成する際には、まず、弁護士に助言を求めることをお勧めします。また、全ての人にトラストが必要なわけではなく、ワシントン州では大多数の人はトラストを行なっていないのが実情です。

※この解説はワシントン州の場合を解説しています。一般的な情報提供を目的とし、法律上のアドバイスではありません。

弁護士 ジョン比嘉さん


Clement Law Center

 

日本帰国の準備(後見人・保証人、アメリカのソーシャル・セキュリティーなど)

日本の後見人制度と保証人

日本帰国に向けて、知っておきたいのが後見人制度です。独り身の高齢者の支援に長年携わっている日本ライフパートナーズ協会の東向さんに解説していただきました。「日本には、認知症などになってしまい、自分で財産管理ができなくなってしまった場合、成年後見制度という法律制度があります。後見人と呼ばれる方が本人に代わって財産を管理したり、行政関係の手続きを行ったりすることができます。これは2000年4月に判断能力が十分でない方々のために成立した法律で、背景には日本の高齢化があります。家庭裁判所へ後見人の申し立てができるのは本人、配偶者、4親等内の親族、市町村長、検察官に限られます」。

この後見制度には2種類があり、現時点ですでに判断能力がない人のための法定後見制度、また現時点では判断能力があるが判断能力が衰えていくであろう将来に備えた任意後見制度があります。後者の任意後見制度はあまり知られていませんが、「海外から日本に帰国した際には、ぜひ活用してほしいと思います」と東向さんは推奨しています。「まだ判断能力がある間に任せたい相手と任意後見制度の契約を結び、『考える能力がなくなったら財産管理をお願いします』と依頼しておきます。契約内容は国に登記するために、必ず公証役場で契約を交わす必要があります。ご本人が信頼している方なら家族以外の方、または法人を後見人に指名することも可能です。他方、法定後見人の指名は、本人の判断能力がなくなってからなので裁判所の決定に委ねることになります。元気なうちにぜひ、任意後見の契約を済ませておきましょう」。

次に施設入居の際に求められる保証人としての身元引受人の提示について、東向さんは次のように話しています。「ご本人の状態が急変した際に対応できる方、究極的には遺体の引き取りも想定し、それらを引き受けてくれる人が身元引受人です。また、本人が病院の治療費や施設の利用料を払えなくなった際に代わりに払ってくれる連帯保証人の提示も入居時には求められます。保証人を頼める人がいない場合は、それを引き受けてくれる団体を探すことになります。しかし、名前貸しだけでそれ以外のことはしてくれないところも多いため、一時帰国の際に、そのような団体の方と直接会って費用にはどこまで含まれるのかを見極める必要があります。親族が日本にいる場合は問題ありませんが、単身者でかつ日本に身寄りがいない場合は保証人を引き受けてくれる団体探しが鍵となります」。

まとめると、単身者の日本の永久帰国に際しては、任意後見制度を活用するように、そして身元引受人や連帯保証人を引き受けてくれる団体選びを慎重に行うようにとのことでした。

日本でアメリカのソーシャル・セキュリティーを受給する

老後の大切な収入源となるアメリカのソーシャル・セキュリティーは、日本で申請または受給することが可能です。現在、すでに受給している場合は、アメリカの銀行口座を維持し、そこから日本に送金します。送金には手数料がかかるのでまとめて送ったほうが良いでしょう。または日本の銀行口座に入金してもらう方法もあります。

日本に帰国した後に申請する場合は、日本の「日本年金機構」で手続きを行います。またはアメリカ大使館領事部年金課で手続きする方法もあります。

代表理事・行政書士 東向(ひがしむき)勲さん


日本ライフパートナーズ協会

 

日本にある単身者の高齢者施設

アメリカから単身者として帰国して、高齢者施設に入居することを検討する場合の施設の選び方、地方自治体の終活サポートなどについての情報は、下記リンクのライトハウス電子版で詳しく紹介しています。海外からのシニアの受け入れに積極的で、かつ単身者向けのサービスが充実している日本の住宅や施設の情報もまとめています。

ライトハウス2023年3月号『おひとりさまの終活』/日本の高齢者施設に関する情報(P21~P23) »

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*情報は2023年3月現在のものです

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