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ボブ・ハセガワさん(ワシントン州議会上院議員)

■ 弁護士や政治家として活動を続けている日系アメリカ人に、現在に至るまでの背景と転機や実績、今後のビジョンについて伺いました。
(※ライトハウス・2023年8月号特集「法曹界・政界で活躍する日系アメリカ人」に掲載のボブ・ハセガワさんへのインタビューを元に、作成しています。)

ワシントン州議会上院議員 ボブ・ハセガワさん
Bob Hasegawa
ワシントン州シアトル市出身の日系3世。ワシントン大学で物理学を学ぶ。UPS(United Parcel Services )をはじめとする商業用トラック会社のトラックドライバーとして勤務し、労働組合の活動に携わるようになる。チームスターズ地方トラック運送労働組合の組合長に3期選出された後、全米のチームスターズの労働組合民主主義改革運動のTDU(Teamsters for a Democratic Union)のリーダーも務めた。2004年、ワシントン州議会下院議員、2013年同州議会上院議員に選出。https://senatedemocrats.wa.gov/hasegawa/

” 社会的かつ経済的正義を追求するために、組合活動家から政治家に転身 ”

ー元442部隊員との出会い
私はシアトル生まれの日系三世です。父方の祖父は長野県出身、母方は和歌山の出身です。両親は戦時中に日系人強制収容所に送り込まれました。しかし、私の家族はその経験についてあまり語ることはありませんでした。悲しい経験だったからかもしれないし、アメリカ政府が自分たちを敵国人扱いしたことは恥だと思っていたからかもしれません。

私の父は印刷業を営んでいました。子どもの頃から、そして今でも、私は父こそ自分が知る中で最も賢い人だと尊敬しています。彼は何をやらせても器用にこなせたし、知識も豊富でした。一方、母は穏やかで優しい人でした。

最初の転機は少年時代にボーイスカウトに入隊したことでした。リーダーは、戦時中、442部隊に所属していた人だったのです。米軍兵として活躍していた日系人が子どもを持つようになると、彼らは日系バプテスト教会を拠点に、子どもたちのためのボーイスカウトを編成しました。私は元米軍兵のリーダーたちから多くのことを学びました。しかも、過酷な戦場を生き抜いた彼らは驚くほどにタフでした。私にとってのボーイスカウト活動は、サバイバーの行動を間近に見ることができた貴重な機会でした。

ースカウトされて政治家に
次の転機はUPSの組合時代に訪れました。圧倒的な企業の権力に立ち向かうために、労働者がいかに強力に団結する必要があるかを学びました。当時の労働組合はかなり腐敗していました。私が20代の頃です。組合を汚していた当時の運営者たちから、私たちは組合を取り戻し、新たな基盤を構築し直しました。その経験を経て、「労働者のための平等な社会を作るべき」だという民主主義的な私の考えが形成されました。

実は、私は政治家になりたいと思ったことはありません。コミュニティーの活動家という前職からの流れで、「労働者にとってより良い社会を作りたい」という思いで政界に進出しただけなのです。今の世の中、人々は分断されています。私は多様な人々をつなぎたいという思いで政治家になりました。アジア系の人々のためだけではなく、アフリカ系、ネイティブアメリカン、ヒスパニック系、白人、全ての人々をつなぎたいというのが変わらぬ願いです。そして、労働者の権利向上のための活動を続けていた時に、出馬しないかとスカウトされたのです。「政治家になりたいから政治家になる」というのは間違った動機です。政治家になった時点で終わりではなく、「社会を変えたいから」といったずっと先にある、達成したい目標を持った人こそが政治家になるべきだと考えます。

政治家としての指針は、経済的および社会的正義を勝ち取ることです。しかし、それは大企業や利益を独り占めしたい特権階級の人々の目的とは反するものです。私は彼らの人気取りに興味はなく、人々にとって最善なことをしたいだけです。その考え方はどこから来るか? まさにそれこそ日本的な価値観ではないかと捉えています。

ー社会の格差を埋めたい
ワシントン州議会の上院議員に選出された2013年、私以外のアジア系は2人だけ。1人は白人と日系人のハーフ、もう1人は韓国系でした。アフリカ系議員もヒスパニック系議員もいませんでした。その分、マイノリティー議員として、私は全てのコミュニティーの声を法案に盛り込む責任を感じました。異なるバックグラウンドの人々の声を代弁することができたのは、組合活動時代の経験と実績があったからだと自負しています。

達成したい夢は「世界平和」に尽きます。しかし、世界レベルの平和の達成は私にとってはハードルが高過ぎるので、私はワシントン州に焦点を当てます。州内の貧困をなくし、住宅や医療といった人々が享受すべき権利を確実に保障できるように尽力したいです。

ワシントン州に限った問題ではありませんが、現在の社会には大きな所得格差が存在します。極端な億万長者がいるのと同時に、道端には非常に多くのホームレスが暮らしています。社会制度においてもっと公平性が必要なのです。それこそが私が政界で戦い続ける理由です。

 

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*情報は2023年8月現在のものです