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Microsoft シニア・ソフトウエア・エンジニア 牛尾 剛さん


特集「アメリカIT最新動向&IT業界で活躍する日本人」より

■ 世界一のIT先進国と言われるアメリカ。中でもIT系の大企業はベイエリアやシアトルなど、西海岸に多くあります。今、この地から何が起きているのか。最新の動向と、その現場で働く日本人をご紹介します。(※ライトハウス・2024年3月号特集記事に掲載のMicrosoft シニア・ソフトウエア・エンジニア 牛尾 剛さんへのインタビューを元に、作成しています。情報は同号の発行時点のもの)


MicrosoftでクラウドプラットフォームAzureのソフトウエアエンジニアを務める牛尾剛さん。シアトルの本社に来て学んだことを記した『世界一流エンジニアの思考法』を昨年出版し、日本でヒット中です。自称「三流エンジニア」の牛尾さんにお話を伺いました。

Microsoft シニア・ソフトウエア・エンジニア 牛尾 剛さん

牛尾 剛
うしお・つよし◎大阪府出身。関西大学卒業後、日系大手SIerでITエンジニアとなる。2009年に独立し、IT系のコンサルティングや講演を手掛ける。2015年、Microsoftに入社。エバンジェリストとしての活躍を経て、2019年に渡米。著書に『ITエンジニアのゼロから始める英語勉強法』(日経BP)、『世界一流エンジニアの思考法 』(文藝春秋)がある。
https://note.com/simplearchitect/

 

”専門性を極め、AIを組み合わせたら価値が生まれる。”

ー エンジニアになった経緯を教えてください。
コンピューターに興味があって大学でも学び、エンジニアになりたかったのですが、社会人のスタートは情報システム系の営業職で、終業後にUNIXマシーンを触る日々でした。数年後に異動でシステム・エンジニアに転身。でも、技術が通用せず「プログラミングはやめた方がいい」とか「才能ない」と言われたこともあります。その後、転職して技術系のコンサルタントになり、2009年にはコンサルとして独立。ずっとエンジニアになりたかったけど、実際仕事で成功できたのは、教えることやストラテジーを考えることだったんです。

ー 独立していたのに、なぜMicrosoftに転職したのですか?
一言で言うと飽きたから。当時の仕事のメインはアジャイル(ソフトウエア開発プロセス)コーチでした。アメリカでは時代が進むにつれてアジャイルコーチングが高度に進化したのに、私は10年近く日本でずっと入門編ばかり教えていました。そこで新しいことをしたくなり、40歳を過ぎてから本格的に英語を学び始めたんです。でも、仕事で英語を使いたくても、なかなか機会がありません。そんなある時、友人がMicrosoftなら合いそうと勧めてくれたので試験を受け、エバンジェリスト(技術や製品を顧客に普及させる仕事)として入社しました。私は日本にいましたが上司はシアトルで、「アメリカで働きたい」と伝えたら、数年後の忘れた頃に「アメリカで働けるようにした」と言われたので、即、こちらに引っ越しました。

ー どのようにエンジニアになりましたか?
偶然、組織変更で所属していたチームの仕事内容が変わったんです。ハッカソン(制限時間内でアプリやサービス開発を競うイベント)を開き、ハック職人のような人たちと仕事をすることで、テクニカルなスキルが必要になってプログラミングを覚えました。ハッカソンを機に学び、イベントで判明したバグや機能追加を該当部署に伝えるうちに、現在、所属する部署と近しくなり、募集があると聞いて受験し、エンジニアとして異動しました。

ー なぜ、それほどエンジニアになりたかったのでしょうか?
子どもの頃からプログラムは書いていて、上手くできないけど、なんかかっこいいと思ったんです。全然できないし、才能がないと言われたけど、プログラミングは面白いし飽きないし、新しいことを覚えるのが好きなんです。私は不器用で、子どもの頃から成功体験がほぼありません。だから人生で一つくらい何かできるように、そしていつか胸を張って「僕はちゃんとしたエンジニアです」と言えるようになりたいんです。まだ言えない僕は三流。「Microsoftのエンジニアなんてすごい」と言う人もいるけれど、全員とは限りません。もちろん、すごい人は周りにたくさんいますが。

ー 現在の仕事内容を教えてください。
Azureというクラウドの部門で、お客さまが自分のプログラムを送ったらすぐにそのサービスが動くように基盤を開発しています。ユーザーはスクリーン上のアイコンをポチッと押せば、自分のやりたいことが画面上ですぐに始まりますが、その裏では非常に複雑なプログラムが無数に動いていて、それをサポートしているわけです。現在、Microsoftではクラウド分野の売り上げは会社全体の売り上げの5割以上を占めています。

ー 牛尾さんは、日頃からAIは使いますか?また、AIは人間の仕事を奪うという声をどうお考えですか?
シーンによってはすでにAI は良い仕事をしますね。私も他人の書いた古いコードを理解する時などは助かっています。ただ、ごく簡単なコードは書けても、普段必要な複雑なコードに関してはまだまだで、例えば、AIの提案通りにしたら訳の分からないバグが発生することは多々あります。ところでMicrosoftのWordやPower Pointなどに搭載されているAI機能の名前はCopilotです。つまり、どこに行くか決めるパイロットは自分で、AIはあくまでも横で助ける副操縦士というわけです。とはいえ、これからどれくらいの勢いでAIは進化するのか? 専門家から「プログラマーはいずれAIに食われる。残るのは料理を作るシェフなど人間が行うことが喜ばれる仕事だけ」などと聞き、私も一時期は非常に不安でした。一方で尊敬するエンジニアの友人は「AIに関係なく専門性が重要」と言います。自分の専門性を極め、そこにAIを掛け合わせれば、価値が生まれるというんです。今の専門性を大事にしながら、少しずつAIを勉強したり、使ったりすれば、自然とトランスフォームできるのかもしれませんね。ずっと続けてきた専門性には価値があります。世の中の全員がAIに全振りする必要はないと思いますし、心配しても仕方ありません。もしもエンジニアが滅びたら、その時考えます(笑)。AIがどうであれ、自分がハッピーでいられるかどうかが最終的には重要じゃないかと思っています。

Microsoft シニア・ソフトウエア・エンジニア 牛尾 剛さん

 

『世界一流エンジニアの思考法』牛尾 剛さん

『世界一流エンジニアの思考法』
牛尾 剛/文藝春秋
https://bit.ly/4bv3p2G

牛尾さんがMicrosoft で一流のエンジニアたちから学んだ思考法や、生産性爆上がりの技術をまとめた一冊です。

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*情報は2024年3月時点のものです