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夫が自分名義のクレジットカードの返済を残して死去。妻に返済義務はありますか?

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夫が自分名義のクレジットカードの返済を残して死去。妻に返済義務はありますか?

< 回答者|弁護士 志熊(しくま)美恵子さん>

今回はワシントン州のみに限った回答となりますが、必ずしも亡くなったご主人のクレジットカードの負債が返済されなければならないとは限りません。夫が結婚期間内にクレジットカードを取得したならば、この負債は共同債務と見て間違いないですが、夫が亡くなった後に妻がこのクレジットカードを使用していなければ、妻の個人債務を問われることはまずないでしょう。共同債務は、共同財産に対してのみ行われます。

次にプロベートにおける債権者への負債返済のプロセスを説明します。プロベートとは、必要経費、税金、正当な債務の支払いを終えて、故人の資産が相続人に渡される法的手続きです。パーソナル・リプレゼンティティブ(PR)と呼ばれる執行人は、プロベートの法規に従って債権者への通達を新聞に掲載できます。それから3カ月後にPRは直接クレジットカード会社に通達と債務返済請求書式を送ります。クレジットカード会社が法的に負債の返済を請求するには、直接PRから通達を受けた後30日以内に、法規で定められた通り、プロベートが行われている裁判所にサインをした請求書式を提出し、PRまたは弁護士にその書式のコピーを送らなければなりません。この期間内に以上の必須事項を怠った債権者は、負債返済請求の権利を失います(先日私が扱ったケースでは、10社のクレジットカード会社のうち、負債請求条件を満たしたのは2社だけでした)。

債権者の共同財産に対する負債請求は、亡くなった夫が2分の1、残された妻が2分の1と、両方の利権に対して行なわれます。ですからクレジットカード会社が前項の期間内に必要手続きを怠った場合、亡くなった夫の資産のみならず、妻からも永久に負債を請求する権利を失います。クレジットカード会社が、法規で定められた条項通りに正当に負債請求を行なった場合には、その負債は夫婦の共同財産から支払われます。

このように、綿密法規条項に従って債務負債請求手続きを完了した債権者のみが負債請求をできます。しかし多くのクレジットカード会社はプロベートが行なわれている州の法規に詳しくないため、負債請求に失敗しているようです。ただ各ケースにより事実状況が異なりますので、専門家に相談し、対策を練られるのが良いでしょう。

※上記内容は、一般的・教育的な目的のための回答であり、個人に対して当てはまるものではありません。個々の状況に合わせ、弁護士に相談してください。

(2011年12月)

弁護士 志熊(しくま)美恵子さん


シアトルで、エステート・ プラン作成、リビング・トラスト、アセット・プロテクション(財産保護)、メディケイド・プランニング、VAペンション、ベネフィット・プランニングなどを手掛ける。プロベートの弁護士、エルダー・ローの弁護士として幅広く活躍する。
Shikuma Law Offices, PLLC.
TEL: 206-853-1541 www.shikumalaw.com