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渡辺謙、「たそがれ清兵衛」…今年の賞レースの行方

ロゴ 第28回
渡辺謙、「たそがれ清兵衛」
……今年の賞レースの行方

今年も賞シーズンがやって来ました。アカデミー賞は予想通り「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」が11部門にノミネート。下馬評の高かった「ロスト・イン・トランスレーション」は4部門、「ミスティック・リバー」も6部門にノミネートされた。我らが渡辺謙も助演男優賞にノミネートされ、日本人俳優としては1966年の「砲艦サンパブロ」のマコ(岩松信)以来で、これは快挙である。しかし、米映画俳優組合賞(スクリーン・アクターズ・ギルド賞)の助演男優賞候補になった時点で、アカデミー賞のノミネートは確実に予想範囲内だった。

本当の快挙は「たそがれ清兵衛」の外国語映画賞ノミネートだった。今まで日本側のアカデミー外国語映画部門へのエントリー選考がずさんであり、それが22年も同賞にノミネートされなかった原因だと散々書いてきた。今でも「たそがれ清兵衛」が「座頭市」より適作だったかというと、そうは思わない。でも、世界の中の5本に入ったのは並大抵のことではなく、それは賞賛に値する。

これらのノミネートを日本のマスコミはサムライ旋風だとか、日本ブーム到来だとか書き立てているが、それは全くの誤解である。「ラスト・サムライ」は全米ではやっと興収1億ドルをやっと突破したレベルで、トム・クルーズ主演作では平均以下。しかもアメリカのマスコミでは、日本武士道を美化したと批判的なものも多かった。「たそがれ清兵衛」にしても、各国で賞を総なめにした「座頭市」と対照的に、ベルリンやシカゴ映画祭にコンペに出品したが全く賞を取っていない。よって、渡辺謙は本当に演技の実力が認められた結果であり、「たそがれ」は偶然の産物であったと言うべきだろう(ゴールデン・グローブ賞を取ったアフガン映画「オサマ」は、外国語映画賞にノミネートされなかった)。

今までアカデミー賞の演技部門にノミネートされた日本人は、1958年度の早川雪舟(「戦場にかける橋」)とナンシー梅木(「サヨナラ」)、前述のマコの3人である(1985年「ベスト・キッド」でノミネートされたノリユキ・パット・モリタは日系二世)。ナンシー梅木は映画デビュー作で助演女優賞を受賞するというオスカー史上始まって以来の快挙で、当時の会場は騒然となったという。同年に助演男優賞候補になっていた早川雪舟は、戦前から知られるハリウッドの大スター。下馬評では彼が受賞すると言われていたが、やはり「サヨナラ」で梅木の相手役を務めたレッド・バトンズに奪われた。

1988年「ラストエンペラー」に主演したジョン・ローンは、その演技が高く評価され、ゴールデン・グローブ賞主演男優賞にノミネートされたが、アカデミー賞にはノミネートされなかった。作品自体はアカデミー賞10部門にノミネートされ、ノミネートされた10部門すべて受賞するという快挙を成遂げると共に、作品賞を受賞しながら演技賞はノミネートされなかった唯一の作品として記録に残る。やはり10部門にノミネートされた「グリーン・デスティニー」も演技部門はノミネートされなかった。作品や俳優を演出するのが監督で、その作品と監督を評価して俳優を評価しないという理屈は通用しないが、やはり、この賞におけるアジア人俳優への壁は相当高いと言わざるを得ない。渡辺謙がティム・ロビンスら強豪を破って受賞すれば、それこそ大快挙だ。

実は、今回アニメ部門で今敏監督の「千年女優」が長編アニメ賞にノミネートされるだろうと確信していたが、それは残念ながら成し遂げられなかった。

前川繁(まえかわしげる)
1973年愛知県生まれ。シアトルで4年間学生生活を過ごす。現在、東京でサラリーマン修行中。コネクションを作って、いつか映画を作っちゃおうと画策している。