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失われた映画を求めて

ロゴ 第49回
失われた映画を求めて

東宝の特撮映画にはなぜか現在見られない映画が多い。それは表現上の問題であったり、原版そのものが紛失している場合もある。

有名なのが「ノストラダムスの大予言」(1974年)で、劇中でニューギニアの現地人が人食いをする場面と、ラストに登場する原爆で奇形化した新人類が被爆者団体から抗議されたため、会社はソフト化も断念している。「獣人雪男」(1955年)は、劇中で東北のある町を“日本のチベット”と称し、住民がいかにも前近代的なところが差別的だという理由で封印された。「大怪獣バラン」(1958年)も同じ理由でソフト化されていない。

「緯度0大作戦」(1969年)は共同製作したアメリカのプロダクションが倒産し、権利関係がはっきりできず、ソフト化が不可能な状態だ。東宝とアメリカの合作「マルコ」(1973年)は、日本の小谷承靖監督が日本側監督を、衣装をワダエミが手掛けたミュージカル映画で、ゼロ・モステルや岡田真澄などが出演しているが、日本では劇場公開もソフト化もされていない。

しかし、これらの作品はアメリカではソフト化されており、「ノストラダムスの大予言」は食人シーンだけカットされ、英語吹き替え版がパラマウント・ビデオから発売されている。「獣人雪男」はアメリカのジョン・キャラダイン(「キルビル」のデビッド・キャラダインの父親)が出演したシーンを追加したバージョンがビデオ化されている。「スタートレック」シリーズのスール(ミスター・カトー)役でお馴染みのジョージ・タケイが吹き替えを担当するなど、マニア受けしそうな作品だ。

これらの作品はアメリカのTVやビデオで拝見することができたが、最も鑑賞が困難な作品が「The Big Wave」(1961年)。パール・バックの原作を、東宝とアメリカのアーティスト連盟が共同で映画化した作品で、日本が生んだハリウッドの大スター、早川雪洲、若き日の伊丹十三(当時は一三)、ジュディ・オング、ミッキー・カーチスらが主演し、タッド・ダニエルスキーが監督。撮影を「隠し砦の三悪人」の山崎一雄、音楽を黛敏郎、円谷英二が特撮を担当するなど、日本の一流スタッフが参加した。しかし日本では劇場公開、TV放映、ソフト化は未だに実現していない。その理由の最大の原因は原版の紛失だと言われていたが、最近フィルムの所在が最近明らかになったらしい。日本でもぜひ上映してもらいたい(阿佐ヶ谷辺りのマニアックな映画館で)。

最近では、長らく封印されていた石井輝男監督の作品も続々とソフト化され、題名からしてヤバイ「恐怖奇形人間」はベネチア映画祭でヤンヤヤンヤの大喝采だったという。東宝もそろそろ隠すことは止めて、ソフト化に前向きな姿勢を示して欲しい。

前川繁(まえかわしげる)
1973年愛知県生まれ。シアトルで4年間学生生活を過ごす。現在、東京でサラリーマン修行中。コネクションを作って、いつか映画を作っちゃおうと画策している。