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SAW

ロゴ 第38回
SAW

2人の男が目覚めると、自分が狭い密室に監禁されていることを知る。映画はそんな悪夢から始まる。

男達は鎖でつながれ、密室の中央には男の死体が転がっている。死体が持っていたテープレコーダーから、「6時間以内に相手を殺すか、2人共死ぬか」というメッセージを受け取る。テープレコーダー以外にも、のこぎり、携帯電話などの小道具が次々と登場し、男達を錯乱させる過程がとてもスリリングだ。

監督のジェームズ・ワンは若干28歳の中国系オーストラリア人で、本作がサンダンス映画祭で注目され、次作ではユニバーサルの大作を監督することが決定したという。日本のホラー映画の心酔者らしく、本作も三池崇史の「オーディション」からの影響が随所にうかがえる。

殺人鬼「ジグゾウ」の過去の異常犯罪を被害者や刑事の回想で描きつつも、監禁状態から抜け出すために犯人のトリックを破ろうとする男達の心理戦をじっくり描写。ビンセント・ナタリ監督の「CUBE」を思い起こさせる緊迫の密室劇は、閉所恐怖症の者が見ると極度のストレスに感じるだろう。      

ただ、いかにも今風のスピード感溢れるカメラワークは、舞台が密室なだけに気分が悪くなった。低予算を技術でカバーしようとしたのだろうが、脚本がよく練られているのだから、ここまでカメラを動かさなくてもいいのだが……。

良い映画はなにも本編に大金をかけるだけでなく、よく練られた脚本と展開を期待させる予告編であることを、本作は図らずも証明してみせた。現在全米で大ヒット中のジャパニーズ・ホラー「ザ・グラッジ」も同様である。

ただ欲を言えば、犯人が犯行に至る動機と残虐性がいまいち結び付かず、納得のいかない結末だったのは残念だった。それに犯人と超細密な人体破壊装置も結び付かない。犯人は別に科学者でも機械工でもないのだから……。

 
今後要注目の監督だが、繊細な人間描写力と説得力を付けないと第2のM・ナイト・シャラマンになってしまうだろう。

前川繁(まえかわしげる)
1973年愛知県生まれ。シアトルで4年間学生生活を過ごす。現在、東京でサラリーマン修行中。コネクションを作って、いつか映画を作っちゃおうと画策している。