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抹殺された作品

ロゴ 第43回
抹殺された作品
往年のヒーロー番組「ウルトラマン・セブン」には、公には存在しないことになっている第12話があるらしい。登場するスペル星人が、ある雑誌にヒバクセイジンと表記されたために某団体から抗議を受けたのだという。やはり人気だったTVシリーズ「怪奇大作戦」第24話「狂鬼人間」は業界では完全なタブーとなっている。

後作は私も観ているが、世紀の悪法、刑法第39条(心神障害者による犯罪は罰しない云々)にメスを入れた作品で、森田芳光監督の「39・刑法第三十九条」とストーリーでは似ている部分も多い。家族を殺した犯人が刑法39条のために無罪になってしまったことを怨む男が、社会の復讐のために関係のない人の脳波を狂わせて殺人を犯させるという話(どうせ、もう誰も観られないだろうからストーリーを書きます)。最後の「日本のように野放しになっている国はないんだから、国ももっと考えてくれなくちゃねぇ」というセリフと、「キ○ガイ」という言葉の多用が原因でクレームが来たのだろうが、どこの団体からどんなクレームが来たのか、全く関係者が真相をしゃべらない所も不気味である。

民放局の作品が諸問題で放送中止にされることは多々あるが、映画にも現在日本で市場に出ていない作品がある。中でも東宝2大封印作品として有名なのは、1974年の舛田利雄監督によるパニック映画「ノストラダムスの大予言」。後半、ニューギニアに派遣された調査団が放射能で侵された原住民に襲われるシーンと、中盤に登場する頭の巨大な生物が被爆者差別を助長すると批判された。ゴジラやガメラは良くても、だ。そして、もう1作品が1954年の本多猪四郎、円谷英二両監督による「獣人雪男」。山中で遭難したスキーヤーの捜索に向かった仲間が、雪男に遭遇するストーリーだが、登場する部落の描写で明らかに差別的な表現がある。

封印されると見たくなるのが人間の心情というもので、上記作品はネット・オークションで高値で取り引きされているという。私は幸運にも「ウルトラセブン」「怪奇大作戦」を小さなビデオ屋で入手することに成功し、「ノストラダムスの大予言」と「獣人雪男」はアメリカで入手した。しかし、日本のことなかれ主義というか、奇妙に思える圧力団体の方向性というか、1969年、1970年に今井正監督が部落解放を込めて作った名作「橋のない川」まで反対に遭ったのはどういう訳か?

前川繁(まえかわしげる)
1973年愛知県生まれ。シアトルで4年間学生生活を過ごす。現在、東京でサラリーマン修行中。コネクションを作って、いつか映画を作っちゃおうと画策している。