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United 93

第124回 「United 93」
監督:ポール・グリーングラス
出演:オパール・アラジン、エーリヒ・レッドマン、ベン・スライニー、スーザン・ブロンミート、ほか
ウェブサイト:www.united93movie.com

 
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© Universal Studio

9.11で唯一目標に到達せずに墜落したユナイテッド航空93便を題材にしたこの映画は、ニューヨークで予告編を含めた上映を自粛する映画館が出るなど、遺族や批評家の反応も含めて物議を醸している作品。テロから約5年の歳月が経ちましたが、この映画化が時期尚早だったのかどうか、まだまだ賛否両論のようです。

さて、90分ほどの本編は93便が客を乗せるところから墜落するまで、実際の時間軸にほぼ忠実な形で描かれています。舞台は93便の機内に加え、民間や軍の航空管制室などが登場し、そこに所属する航空管制官達は本人がその役を演じています。当然、スタッフロールを見るまで本人だと気付かなかったのですが、彼らのすごみのある演技に、9.11当時の雰囲気を垣間見ることができました。監督は「ボーン・スプレマシー」のポール・グリーングラス。手持ちカメラを駆使したドキュメンタリー・タッチの映画には定評があり、構成の難しいストーリーを含め、ストイックであったろう今作の撮影現場が容易に想像できます。

ところで、この再現ドラマ風の映画が果たしてどこまで事実に基づいているのか、どこからがフィクションなのか、疑問に思う方は多いと思います。映画では最終的に乗客が操縦席に突入しますが、先日公開されたボイス・レコーダーの音声によると、93便は乗客が操縦席に入ることなく墜落したことが確認されており、また、機内電話などの記録が残っているとはいえ、誰が反乱する乗客のイニシアチブを取ったのか、など考えていけばキリがありません。ただ、この映画の良いところは、創作が入っているにしても、偏った見方を排除し、3人称に徹した描き方をしているところだと思います。特定の登場人物にスポットを当てることなく、ストーリーは淡々と進行していきます。

最初からストーリーの結末はわかっているのですが、やはり見終わった後にはどうにもならない、茫漠とした感情が湧きあがってきました。リアルタイムでニュースを見ていた5年前と同じ感覚。アメリカが、世界が、変わっていくきっかけとなったあの事件を見つめ直すのに、これ以上相応しい映画はないでしょう。2001年9月11日、あなたは何を思っていましたか?

ミトウ :
札幌生まれ、札幌育ち。高校卒業後、渡米。現在はショアライン・コミュニティー・カレッジで4年制大学への編入を目指して勉強中。好きな映画は「Down By Law」「Crash」「博士の異常な愛情」「リアリズムの宿」「tokyo.sora」「秋刀魚之味」など。