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尿失禁の症状を手術ではなく理学療法によって治療する方法とは。

さまざまな分野の専門家が読者の皆さんの質問にお答えします。

尿失禁の症状を手術ではなく理学療法によって治療する方法とは。

< 回答者|理学療法士 澤野井恵さん>

一般的に女性に起こりやすい尿失禁には、腹圧性尿失禁(Stress Urinary Incontinence)と、切迫性尿失禁(Urge Urinary Incontinence)の2種類があります。

腹圧性尿失禁は、特に出産後、骨盤底筋群が弱くなった女性が、くしゃみやせきをした時、走ったり重い物を持ち上げた時などに起こります。妊娠中や出産後に骨盤底筋群の運動(Kegel Exercise)をするように指導されることもありますが、この骨盤底筋群の運動と共に、骨盤周りの筋肉や腿の筋肉を強化すると、比較的早く症状の改善が見られます。骨盤底筋群の運動は、やり過ぎるとそれに伴う問題が起きることもあるので、筋肉に力を入れ終わったら完全にリラックスさせることも大切です。骨盤底筋は、自分では目に見えないためうまく運動できているかわかりにくいのですが、理学療法では、センサーを肌の上に貼り付けて筋肉の収縮と弛緩の度合いを計るバイオフィードバック(筋電計)などを利用して運動の指導をします。

切迫性尿失禁は、尿意をもよおしてからトイレに行くまで間に合わず、漏らしてしまう症状です。膀胱を刺激する食べ物や飲み物(カフェインが入っているコーヒーやお茶、アルコール、尿を酸性にしやすい柑橘系の食べ物など)を避けることや、骨盤底筋群に力を入れて膀胱の収縮を一時的に防ぐことなどにより、症状を緩和することができます。

尿失禁の症状がある方は、水分の摂取を控えることが多いのですが、これがかえって症状を悪化させる場合もあります。水分の摂取を控えるより水をたくさん飲むほうが、体内の刺激物を薄める効果が得られます。1日に飲む水分の2/3は、お茶やジュースではなく水にしたほうが膀胱の機能にとって好ましいです。尿失禁を心配するあまり、トイレに何回も行く方も多いのですが、これもまた膀胱が過度に敏感になるので、夜中に何度もトイレのために起きる原因になりかねません。

尿失禁の問題は、ひとりで悩むよりも泌尿器科や婦人科の医師に相談したり、ウーマンズ・ヘルスを専門とした理学療法士に上記のような運動や食生活の指導をしてもらったりすることにより、症状の改善を試みることをお勧めします。

(2010年12月)

理学療法士 澤野井恵さん


94年にテキサス州立女子大学理学療法学科の修士課程を修了後、理学療法士として就労。08年に米国徒手療法協会認定のフェローシップ取得、09年にはオレゴン州のパシフィック大学で理学療法の博士課程修了。ベルビューのオリンピック・フィジカル・セラピーで関節や筋肉の疾患治療を中心に、骨盤内の痛みや失禁の治療も行う。