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会社で残業を余儀なくされますが残業代が出ず、断ることもできません。

さまざまな分野の専門家が読者の皆さんの質問にお答えします。

会社で残業を余儀なくされますが残業代が出ず、断ることもできません。

< 回答者|弁護士・J.D. 楠瀬太郎さん>

ワシントン州の場合についてお話します。ワシントン州内の雇用主は、残業について州法(最低賃金法 MWA)、及び連邦法(公正労働基準法 FLSA)に従うことになっています。この2つの残業規則が異なる場合、雇用主は被用者に有利な方の規制に従わなければなりません。時間給で働いている人には、1週間に40時間を超える勤務時間に対して50%増しの賃金が支払われることになっており、月給または歩合制の雇用者も残業手当の対象になる場合があります。米国企業、在米の日本企業を問わず、あなたの職が残業手当免除の対象でなければ、雇用主がしていることは違法にあたります。

解決法としては、まず実際に働いた時間数と賃金が支払われた時間数を記録し、管理職との対話を開始しましょう。これは残業手当の権利の確認が目的ではなくても、あなたがこの件に関心があることを雇用主に知らせるためです。手紙や電子メールでも構いませんが、このように正式に苦情申し立てを行うことです。書面の場合はコピーを取っておくようにしましょう。

あなたが残業手当免除の対象ではなく残業手当を受け取る立場にあり、そのことを話し合った後でさえ、手当てを支払わないまま雇用主が残業を強制するようであれば、さらなる対策を検討する必要があります。

仕事を始めるにあたって雇用主と被用者が交わす契約書には、雇用に関して問題が起きた場合、まず調停または仲裁で解決に努める(訴訟を提起してはならない)という文章を含んでいることがあります。とは言え、公式な苦情申し立てはいつでも行うことができます。連邦労働局の賃金・時間部門、及びワシントン州労働産業局が、それぞれMWAやFLSAに含まれる残業手当の徹底強制にあたるので通達しましょう。報復(※)はワシントン州法でも違法とされており、残業手当の苦情申し立てへの直接の対応として、雇用主があなたを解雇などすることは法律で禁じられています。

※報復……苦情を申し立てたり、FLSAの規定による法的手続きを取ったりすることにより、雇用主が被用者を解雇したり、差別待遇を行うこと

注意:上記の回答は一般的な情報提供のみを目的としたものです。法的なトラブルは個々の状況によって大きく変わりますので、何らかの行動を起こす場合は、個人的に弁護士に相談してください。

(2004年10月)

弁護士・J.D. 楠瀬太郎さん


東京生まれ。カリフォルニア州立大学サンディエゴ校(UCSD)を卒業後、1999年にカリフォルニア州立大学デイビス校(UCD)法律大学院を卒業。その後、ワシントン州の弁護士資格を取得し、シアトルの法律事務所へ入所。日系企業や日本人クライアントを多数抱えて活躍中。

Betts, Patterson & Mines, P.S.
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