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起業すると節税できると聞きますが本当ですか?

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起業すると節税できると聞きますが本当ですか?

< 回答者|米国公認会計士 松本孝之さん>

税金を減らすには、まず課税対象所得を減らさなければいけません。総所得-控除(個人の場合)=課税対象所得の公式が成り立つので、総所得を減らす、あるいは控除額を増やすことにより、課税対象所得を減らすことは可能になります。ただ個人の場合、事業を営んでいないと、総所得=給与の方がほとんどのため、控除額を増やすことでしか節税できないケースが多いと思います。

控除額ですが、原則として基礎控除(Standard Deduction)と項目別控除(Itemized Deduction)の2種類があり、どちらか控除額が多いほうを選択できる形式となっています。基礎控除については、2005年度の場合は独身者は$5,000、夫婦合算申告者の場合は$10,000の定額の控除を受けることができ、項目別控除がこれを上回れば、節税ができるということになります。項目別控除の例としては住宅ローンが代表的で、基礎控除額以上の金利をお支払いの場合、節税効果があると言えるでしょう。年金への振り込み額を課税対象所得から減額する、特定の年金プランへの加入も節税に有効です。ただ、いずれにしても、収入の中からさまざまな支払いをしなければ控除の対象とならないという意味において、個人でできる節税方法は限られています。

一方、事業を営んでいる場合は、事業主に認められている米国の税法(IRC:Internal Revenue Code)の規定を有効に活用することで節税できます。以下はその規定のいくつかです。

・ Meals or Lodging Furnished for the Convenience of the Employer(食費、滞在費の控除に関する規定)
・ Cafeteria Plans(社員の健康保険プランに関する規定)
・ Educational Assistance Programs(教育費補助に関する規定)

例えば、交通費、食費、保険代、教育費などは、事業を営む上で必要な経費と認められれば控除の対象となり、課税対象所得が減って節税となります。個人事業を営む場合、事業リスクなどはありますが、税金対策という意味においてはオプションが増えるのです。意外といろいろな形で事業を始めることは可能ですので、一度専門家に相談されると良いでしょう。

(2006年4月)

米国公認会計士 松本孝之さん


永野森田米国公認会計事務所(Nagano & Morita, CPAs)でパートナー&シリコンバレー事務所責任者を務めた後、2005年4月にサンノゼで松本&アソシエーツ米国公認会計士事務所を開業。2006年1月よりベルビューに出張所を設置している。関西学院大学経済学部卒。

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