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介護費の備えとして、早いうちからできることは?

さまざまな分野の専門家が読者の皆さんの質問にお答えします。

介護費の備えとして、早いうちからできることは?

< 回答者|ファイナンシャル・プランナー 田口トレーシーさん>

介護に掛かる費用には地域差がありますが、ナーシング・ホームの個室の2009年度全国平均は年$79,000、アシステッド・リビングが年$38,000、自宅介護を週10時間受ける場合でも年間$10,000掛かります。介護費用は、健康保険やメディケアでカバーされると考えている方が多いですが、実は健康保険もメディケアも、介護費用のほんの一部、場合によっては全くカバーしません。また、家族による介護は介護する側に多大な経済的、精神的負担を掛けることになります。

長期介護保険(ロング・ターム・ケア保険)は介護費用のための保険で、若いうちに加入すれば保険料が安く、加入が10年遅れるごとに保険料は倍になり、なおかつ加入できる可能性は半減すると言われています。にもかかわらず、介護の必要性が目前に迫るまで介護保険のことを考えず、加入しようと思った時には保険料が高過ぎるか、健康上の理由で加入を拒否される人が多いのが現状です。統計によると、人が一生の間に交通事故に遭う確率が240分の1、家が火災に遭う確率が2,400分の1なのに対し、介護が必要になる確率は2分の1です。しかし、車両保険や火災保険に比べて、介護保険に加入する人は圧倒的に少ないという現実があります。

国や州政府も介護の問題には頭を痛めており、介護保険加入を促進するために、お持ちの生命保険やアニュイティーを非課税で介護保険へ買い替えることができるなど、数々の恩典を出しています。また、最近では、アニュイティーや生命保険に介護保険が付加されたハイブリッド型の介護保険もあり、これなら介護が必要にならなかった場合は、アニュイティーまたは生命保険として使え、掛け捨てにならないのが魅力です。

なお、引退後の資金不足を補うツールのひとつとしては、リバース・モーゲージもあります。これは62歳以上の人が自宅を担保に借りられる住宅ローンですが、クレジット・スコアや所得に関係なく借りられ、そこに住む限り返済の必要もありません。マイホームを持って、住宅ローンをきちんと支払っておけば、将来必要な時に、家のエクイティーを頼りにするという方法もあるわけです。

老後の生活設計を考える時、介護費用を含む医療費対策は誰でも避けては通れない深刻な問題です。この記事をきっかけに、一度、考えてみていただけると幸いです。

(2011年6月)

ファイナンシャル・プランナー 田口トレーシーさん


渡米して約30年、会社経営や不動産業を経て、現在はファイナンシャル・プランナーとして活躍。各種投資から、保険、リバース・モーゲージ、税金対策そして相続計画まで、資産を増し、守り、残すための総合的なサービスを提供。毎月日本語セミナーも開催する。

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