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【私の転機】弁護士 佐野郁子さん

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シアトルやポートランドで活躍する方々に人生の転機についてインタビュー

これまでカリフォルニア州を中心に活動してきた佐野郁子弁護士が、2025年にワシントン州で資格を取得しました。リビングトラストなどを含むエステートプランニングを得意とする佐野弁護士に、これまでの転機を伺いました。(2025年5月)

弁護士 佐野郁子さん
佐野郁子(さの・いくこ)

埼玉県出身。シンガポールやハワイで子ども時代を過ごす。明治大学法学部卒業後、ニューオーリンズのTulane Law Schoolで学び、法学修士を取得。2005年司法試験に合格。2009年に独立。現在はCA州、HI州、NY州の弁護士資格を持ち、2025年にはWA州の弁護士資格を取得。毎朝欠かさない食べ物は納豆と梅干し
www.instagram.com/saplc_attorney/

ーまず、弁護士を目指したきっかけを教えてください。
生まれは日本ですが、父の仕事の関係で小4までをシンガポールで、その後、高校卒業まではハワイで過ごしました。高校の授業で法律が私たちの日常生活に深く関わっていると知ったのが、法律に興味を持った最初の転機です。日本の大学で法学を学びたいと思ったのですが、当時は今ほど日本語力がなく、必死に日本語の勉強をしました。晴れて明治大学に合格し、親族法・相続法を専攻。大学卒業後はニューオーリンズのロースクールに入ることが決まりました。しかし、留学資金がなく、ロースクールに入学の1年延期を依頼し、外資系証券会社に就職。資金を貯めてから入学しました。そして、2005年にニューヨーク州の弁護士資格を取得しました。

– どのようにキャリアを積まれたのですか?
「日米の架け橋になりたい」との思いから、ニューオーリンズの法律事務所に就職し、海事法を専門に手がけるようになりました。ところが、さあこれから!という矢先、ハリケーン・カトリーナが襲来して被災してしまったんです。仕事も、住む家も、全てを失ってしまいました。3カ月ほどホームレス生活となって各地を転々とし、一時は帰国も考えたのですが、アメリカで弁護士になることが私の夢だったので、ここで日本に帰ったらこれまでの努力が全て無駄になると思い、慣れ親しんだハワイに戻って再出発することを決断しました。ハワイでは大手の法律事務所に勤め、国際企業紛争などを中心に手掛けていたのですが、後に日本人のクライアントが多い相続部門に引き抜かれ、そこでエステートプランニングに携わるようになっていきました。ですが、よりお客さまに寄り添った仕事をしたいと考え、独立を決意。カリフォルニア州の弁護士資格を取得し、サンディエゴで2009年に独立開業しました。そして、おかげさまでカリフォルニア各地とハワイにも事務所を開設することができました。

ーエステートプランニングを多く請け負っている理由を教えてください。
独立以来、離婚や遺産相続に関する案件を請け負っていましたが、問題が起きた後の弁護を続けるうちに、問題が起きる前の対策に力を注ぎたいと思うようになったからです。離婚や遺産相続は、裁判所の監視下で行われ、莫大な時間と費用がかかります。裁判で現状を目の当たりにし、エステートプランの重要性に気付いたのです。例えば、ひとたび離婚の話が持ち上がると、互いにフェアな立場で話し合いを続けることは難しいものです。でも、夫婦間に問題がないときなら、冷静な判断の元に意思決定ができます。財産分与などあらかじめ決めておけば、万が一のとき、経済的・精神的な負担を抑えられます。また、生前にリビングトラストを用意しておけば、本人の意思や希望を示して相続紛争を防げますし、裁判所の手続きを避け、費用と時間を軽減できます。併せて医療や財産に関する委任状も用意しておけば、けがや病気で寝たきりになったときでも安心で、後々の問題を予防できるのです。「エステートプラン」と聞くと、「自分にはまだ先」「関係ない」と思う方も多いのですが、人生、いつ何が起こるか分かりませんので、知っておくべき知識ということは、経験上痛感しています。なので、エステートプランの作成のお手伝いに留まらず、エステートプランという手段そのものや、その大切さを伝えていくことにも使命を感じています。そこで、セミナーの開催や啓蒙のためのYouTube動画配信にも力を入れるようになりました。

ー2025年、なぜ、ワシントン州の資格を取得されたのですか?
ここ数年、ワシントン州在住の方々から多くのお問い合わせをいただいていましたが、対応できず歯がゆい思いをしていました。できることなら州を問わず、アメリカにお住まいの皆さまのお役に立ちたい、ご要望にお応えしたいという思いから、ワシントン州の弁護士資格を取得することにしました。

ーワシントン州でお仕事を始めるにあたっての抱負を教えてください。
弊社のお客さまは、相続人が日本にいるなど、日米間をまたぐ特殊なケースが多く、これまでエステートプランニングを通して「日米の架け橋」として貢献させていただいてきたことに心から感謝しています。ワシントン州への進出は、私と弊社にとって大きな挑戦と転機であり、同時にワシントン州の皆さまに貢献できる素晴らしい機会でもあり、ドキドキワクワクしています。私自身もアメリカ人の夫を持ち、グリーンカードでアメリカに在住する日本人で、日本には高齢を迎える両親がおり、多くの方々と同じ境遇になります。自身の知識と経験を生かして皆さまのお役に立てることができれば幸いです。ワシントン州の皆さまのニーズにお応えできるよう、誠心誠意努めますので、どうぞご期待ください!

弁護士 佐野郁子さん
YouTubeチャンネル『弁護士法人佐野&アソシエーツ』での佐野さん。アメリカの相続のTipsを知ることができます。
 
*情報は2025年5月現在のものです

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