シアトルやポートランドで活躍する方々に人生の転機についてインタビュー
■ 天然木を使用しているのに食洗機で洗える丈夫な箸や、淡く宝石のような色合いの有田焼など、日本産の商品を扱うオンラインショップのYuzu Marché。「ずっと会社員でいるつもりだった」と話す隠岐さんが、ショップを立ち上げるまでの転機を伺いました。(2026年7月)

ベルビュー生まれ、名古屋育ち。13歳から再びシアトル近郊で暮らす。2010年、ワシントン大学を卒業。2011年、Nintendo of Americaに就職し、キャラクターのマーチャンダイズ・コーディネーターとして活躍。ゲームのキャラクター関係の仕事に長く携わる。2022年、Yuzu Marchéを創業。好きな食べ物はタコス(特にシーフード系)。
https://www.yuzumarche.com/
– 社会人になる前までのことを教えてください。
私は両親がベルビューに駐在しているときに生まれ、4歳で名古屋に引っ越しました。中学2年で父が再びベルビューに赴任し、そのままこちらで暮らしてワシントン大学に入学。コミュニケーション学が専攻でしたが、将来どんな業界で働きたいとか明確な夢がなく、ふわっとしたまま大学を卒業してしまい、リーマンショックで就職先もなかなか見つからなかったので、卒業後はしばらくアルバイトをしていました。
– どのような仕事に就きましたか?
運良くNintendo of Americaに就職が決まりました。配属されたのはキャラクターグッズを監修する部署で、例えばマリオ柄のTシャツを作るとき、ガイドラインに沿って正しくマリオが使われているかを関係各所と確認したりしていました。入社時はまだキャラクタービジネスに力を入れてなくて、数人の小さな部署だったんです。ですが、会社として本格的に参入する転換期で、チームのトップと京都の本社との間に入り、ルールを整備することになりました。本社に研修に行き、実際にマリオを作った人たちから直接話を聞きながら、ルールブックを作るなど、キャラクタービジネスの立ち上げに携わったんです。手がけたキャラクターが商品になって世に出て、人に愛されるのを見ると、さらにモチベーションにつながりました。ここで商品開発という私のパッションを見つけたんです。自分の好きなことが見つかったのは一つ目の転機です。
– その後、日本に移住しました。
アメリカ人の夫が日本で働くことになり引っ越しました。大好きな仕事を大泣きして辞めたんです。日本では『星のカービィ』などを手掛けるハル研究所で、フリーランスとして『星のカービィ』のグローバル商品開発に携わりました。約3年日本に滞在し、シアトルに帰るときに食洗機で洗えるお箸がほしいと思って、ネットで探して、福井県小浜市産のお箸を買って帰国しました。
– 帰国後はどうされましたか?
ベルビューのPokémonに入り、初めてマネージャー職に就きました。これが想像以上に難しくて…。私はずっと会社勤めをするつもりで、将来のためにマネージャーになったのですが、向いていないと分かったんです。これも結果的に転機になったと思います。その後、『Fortnite』を出しているEpic Gamesに転職。『ドラゴンボール』など日本のアニメのライセンス関係の仕事に就き、2023年に長女を出産した後もしばらく続けました。
– 起業したきっかけは何ですか?
第一子妊娠前に子育て中の同僚たちの生活を見聞きし、私の夫も激務だったため、もし私たちに子どもが生まれたら平日はワンオペで会社員を続けるのは難しいと感じました。フレキシブルに働くには起業しかないと考え、2022年に会社を設立。日本に住んでいた際、私たちを訪ねてきたアメリカ人の友人に日本の良い物を紹介すると、みんなが買って愛用してくれたので、私は一部の分野ではインフルエンサーであると気付き、自分が心からおすすめできる商品をオンラインで広めようと考えました。商品に思い浮かんだのは、ずっと使っていた食洗機で洗えるお箸です。製造元である老舗のお箸屋さんに問い合わせると、三代目の若社長が快くアメリカでの販売を許可してくれました。でも、会社経営も輸入も初めてで分からないことばかり。仕事や子育ての合間にネットワーキングイベントなどに出かけて勉強をしました。特に日米協会の存在は本当にありがたかったです。日米協会の「スモールビジネスサポート」で輸入の仕方や書類作成などを丁寧に教えもらい、お箸の輸入にたどり着きました。2024年のジャパンフェアでYuzu Marchéをソフトローンチ。良い反響があり、その後正式にローンチできました。今はお箸以外に納豆パウダーや有田焼のお皿も扱っています。
– 今後のショップの展開は?
インスタントカップうどんを作りたいです。商品開発がバックグラウンドなので、オリジナル商品を作ることに憧れがあります。アジア食材やカップ麺は、昔に比べると手に入りやすくなりましたが、日本国内製造のおいしいうどんはラーメンと比べればあまりありません。会社員時代はミーティングの合間の15分でぱぱっと食べられる昼食が必要で、油の多いラーメンよりもギルティーフリーで食べられるインスタントうどんには大変お世話になりました。大人も偏食の子どもも食べやすく、お出かけにパッと持っていけるような、子育ての手助けになるママ目線の商品が作れたらいいですね。だしに肉を使わないので輸入もしやすいですし。初期投資費用が高く、まだ手が届かないのですが、今は商品開発のサポートをしてくださる方を募集しています。いつかお客さまにYuzu Marchéのお箸でカップうどんを食べてもらいたいです。

▲Yuzu Marchéでは、老舗箸メーカーの箸を取り扱っています。写真は九谷焼柄の箸と箸置きのセット。木製で食洗機に対応します。
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(ライトハウス編集部)




