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【私の転機】音楽教育家・演奏家 今出 望さん

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シアトルやポートランドで活躍する方々に人生の転機についてインタビュー

ポートランドを中心に、音楽教室の運営、ピアニスト、声楽家として活躍する今出望さん。現在は和楽器とピアノを組み合わせたユニットMaido Mindとしてポートランド日本庭園で毎月演奏もしています。そんな望さんに、これまでの転機を伺いました。(2026年9月)

音楽教育家・演奏家 今出 望さん
© Kumasaka photography
今出 望(いまで・のぞみ)

大阪府出身。大阪教育大学教育学部芸術専攻卒業(声楽・ピアノ)後、法律事務所に就職。その後、大阪で高校や中学の音楽教員として働き、2019年に家族とポートランドへ。同年、Nozomi Music Schoolを開校。現地小学校での伴奏、音楽ユニットMaido Mindなど活動の場を広げている。好きな食べ物は餅
https://nozomimusic.school

– 音楽家を目指したきっかけを教えてください
実家の近所に有名な音楽教室があり、2人の姉を追うように3、4歳頃から通い始めました。大学では声楽コースに進学。でも、オペラ歌手になった一番上の姉や、ピアノを専攻した二番目の姉と比べると私はピアノも声楽も中途半端なことにずっと劣等感があって…。音楽から離れようと思い、大学卒業後は法律事務所に就職。事務所職員として勤務しました。

– どのように音楽の世界に戻ったのですか?
ある時、私が担当をしていた先生が、大きな少年事件の国選弁護人に選ばれたんです。証拠品となるメールや現場の写真など全てに目を通した私は、「親が悪い」「周りの大人が悪い」と犯人探しをするような報道に違和感を覚えると同時に、子どもに関わる仕事をしたいと思うようになりました。そして同じ頃、プライベートでは演奏会に行くようになっていたんです。音楽から距離を置いたはずなのに、いつの間にか音楽のために高いお金を払う自分がいました。そこで子どもに音楽を教える先生になろうと勉強を始め、大阪府立高校の音楽教師に転職。日々体当たりで、「明日の授業どうしよう」と悩み、生徒の生活指導もしながら、ドタバタの3年を過ごしました。その後、国立附属高校に異動し、吹奏楽部と合唱部の顧問も担当。この学校に来てから、指揮も含め、本当の意味で音楽と教育を勉強しました。

– そんな望さんはなぜアメリカに来ることになったのですか?
夫がアメリカで挑戦したいというので、家族全員での渡米を決断しました。教師をしていたときに結婚・出産をして、当時、小3の双子の息子と、小1の娘がいましたが「アメリカなんて、絶対めっちゃおもろいから行くしかないやろ」と、行かない選択肢はなかったですね。また、それまで仕事に全力で、今しかない子どもたちとの時間を、もっと大切にしたい思いが心のどこかにあったので、子育ての時間が増えることもありがたかったです。

– 渡米後すぐに音楽教室を始めたそうですね。
船便で日本からピアノが届くとすぐ教室を始めました。ライセンスが取れるまで無料で開校すると、あっという間に枠は満席に。突然日本からやってきた私に子どもを預けると決めてくれた保護者がたくさんいて、アメリカ人の懐の深さを感じました。ところが生徒が宿題をやらないのは当たり前。ピアノの前であぐらをかいて座る子がいたり、うちの冷蔵庫を勝手に開ける子がいたり、発表会の会場に行ったら会場が開いてなかったり、日米のギャップやトラブルに「これまでの経験がこんなにも役に立たないのか」と思い知らされ、いろいろな意味で鍛えられました。

– 私設図書館「さくらぶんこ」についても教えてください。
渡米して半年後にパンデミックが起こり、子どもと一緒に遊んだり、自転車で散策したり、私にとっては良い時間を過ごせました。そんな頃、日本人の友達と、「子どものために日本語の本を集めて図書館にしたらいいのでは」と話が持ち上がり、自宅に小さな私設図書館「さくらぶんこ」を作ることにしました。多くの方が本を寄贈してくださり、今は蔵書が2000冊ほどあります。

– 教室以外の活動もされていますね。
ボランティアとして教会や小学校などで伴奏や合唱の指導をするようになると、少しずつ、いろんなお仕事で声をかけてもらえるようになりました。その一人、和楽器奏者の鳥丸ゆみさんとは、Maido Mindというユニットを結成し、2022年からはポートランド日本庭園で毎月1回演奏をしています。ゆみさんは、私の新しい扉を笑顔でバンバン開けてくるんですよ。ピアノの伴奏だけで始めたはずが、いつのまにか歌い、ソロでピアノを弾くようになり、民謡まで挑戦することになって、さらに「オリジナルの曲を作ろう」と言われるうちに、いつのまにか自分たちの曲がいくつかできてしまいました。気付かぬうちに、私の可能性を高めてくれるゆみさんに、心から感謝しています。9月6日には、ゆみさんの主催するTakohachiのコンサートにゲストとして出演します。ここでは私の作曲した曲も披露する予定です。こうして振り返ると、何か転機があったというより、新しい世界に飛び込む度に、次の楽しいチャレンジが待っていたように思います。

– これからの夢は?
あと数年で子どもが手を離れます。そうしたらもう一度合唱の指導をやりたいし、もっと先にはアメリカでの経験を日本の音楽教育で生かせる機会があればいいなと思っています。ポートランドに来てから出会った女性たちは、パワフルで強い人ばかり。彼女たちのように、全てに優しくありたいと、まだまだ成長期真っただ中です。

音楽教育家・演奏家 今出 望さん
©Consular Office of Japan in Portland
▲日中韓友好交流のキッズコーラスの指揮を務めた縁から、2024、2025年には領事事務所主催の天皇誕生日祝賀レセプションで国歌を独唱しました。
 
*情報は2026年9月現在のものです

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(ライトハウス編集部)