束芋(現代美術家)

2016年11月掲載

2016年11月 特別インタビュー

アニメーションに立体などを組み合わせ、人の闇や不安を描く映像インスタレーションで人気の現代美術家、束芋さん。11月11日からのシアトルアジア美術館での大規模な個展開催を控え、アトリエで準備真っ最中の束芋さんに、お話をうかがいました。

 
現代美術家 束芋
© Kazuto Kakurai
▲ たばいも◎兵庫県出身。京都造形大学デザイン科情報デザインコース卒。卒業制作の「にっぽんの台所」で学長賞を受賞。1999年、同作品がキリン・コンテンポラリー・アワードの最優秀賞を受賞し注目を集める。ヴェネチア・ビエンナーレ日本館(11年)代表作家に選ばれるなど国内外で活躍し、挿絵や、舞台とのコラボなど活動範囲を広げている。名前の由来は「たばた(本名)のいもうと」の略。

”一つの空間で鑑賞者と作品が出会い、
その時間を体感してほしい ”

ー作家になった経緯を教えてください。
もともとグラフィックデザイナーを目指していました。だから、卒業制作として発表した作品が現代美術の賞を受賞した時は、「デザイナーとして就活に有利」と喜び、その後、別の賞で海外研修の機会を頂いた時も、デザインの勉強のため、行き先にロンドンを選んだほどです。でも、そこでデビッド・ボウイのジャケットなどで知られるデザイナー、ジョナサン・バーンブルック氏の素晴らしい仕事ぶりを間近に見て「到底、彼と肩を並べるようなデザイナーになれない」と自覚。以来、目の前にある美術家としての活動に専念しています。

ーなぜ、映像インスタレーションという手段で作品を作るのでしょう?
大学の卒業制作を作る際、ずば抜けた専門技術を持たなかった私は、できることをかき集めて、他人が作らないものを作ろうと考えました。それで、卒業制作展を訪れる全員に作品の存在を知ってもらう解決策として、アニメ、立体、シルクスクリーンなど、単純な技術を絡み合わせ、自分だけの展示空間を確保することを思い付いたんです。それが偶然、「映像インスタレーション」と呼ばれるものだと後で知りました。

ー作品のテーマはどこから見い出すのでしょう?
日常で感じていることから見つけます。特に、信頼する第三者と意見の隔たりを感じた時に見えてくることが多いようです。世間的に何が正しいかには興味がなく、何を自分が感じるかを最も大切にしています。

ードールハウスにタコが出てきたり、足先から花が咲いたりするなど、独特なモノの組み合わせはどうやって発想するのですか?
モノの組み合わせは、じんわり浮かんでくることもあれば、ノートに記していた気になる言葉やモチーフが、突然頭の中で同じ階層に浮かび上がることもあります。また、重要なモチーフになるであろうモノを描くことからスタートすることもあります。

ー日米で作品への反応の違いがあれば教えてください。
日本では「美術」は高尚で、鑑賞者は作家の意図を正確に理解しなくてはならないという強迫観念があるようです。一方、アメリカの鑑賞者は、素直に作品と対峙しているように見えました。鑑賞者はどう感じねばならないかなど考える暇はなく、自分はどう感じるかを理解しているようです。それは、家に絵を飾ったり、散歩がてら美術館に寄ったり、美術と対等に暮らしてきたからだろうと、そんな姿を羨ましく思いました。私も含め、日本人ももう少しで、そうなれる気はするのですが。

ー今回の展覧会はどんなものになりそうですか?
シアトルアジア美術館は、今までに経験したことがないほど展示空間が細切れです。私はいつも、個展全体が一つの大きな作品となるように心がけており、この細切れの空間を、どうつなぐかが課題でした。美術館の収蔵品と私の新旧作品を織り交ぜ、空間をカラスや鳩が飛び、鑑賞者を誘導するような展覧会にしたいと思っています。そこから私の17年間の活動と、母(陶芸家の田端志音)から受け継いだものも見えてくる展示になると自負しています。

ーシアトルの日本人のみなさんへ一言お願いします。
インターネットなどで面白い映像があふれる時代ですが、私は、一つの空間で鑑賞者と作品が出会い、その時間を体感してほしいと思っています。美術館訪問という皆さんの素晴らしい楽しみを忘れられない体験にすべく、私も頑張っておりますので、ぜひ、会場に足を運んでください。

束芋ワールド | 展示予定の作品を、ほんの少しだけご紹介
束芋ワールド 公衆便女
公衆便女(2006)
女子トイレの次々に現れては消える、さまざまなを影を持った女たち。一見、どこにでもありそうな女子トイレで、奇妙な光景が繰り広げられます。

束芋ワールド ふたり
ふたり(2016)
見た目が同じでも中身が同じとは限らない。アジア美術館所蔵の一対のタンスに着想を得て、その2つの個を比べます。
束芋ワールド お化け屋敷
お化け屋敷(2003)
ありふれた日本の住宅地。でも1つ1つの部屋を覗き込むと、そこには人間の闇が広がっています。
© Tabaimo / courtesy of Gallery Koyanagi and James Cohan Gallery

【展覧会情報】
「束芋 Utsutsushi Utsusi」
○日時: 11月11日(金)~2017年2月26日(日)
10:00am-5:00pm(木曜は夜9時まで)、月&火・休館
○会場: シアトルアジア美術館(1400 E. Prospect St., Seattle)
○入場料: $9(一般)、$6(62歳以上)、$5(学生&19歳以下)、12歳以下無料、毎月第1木曜全日と第2木曜午後5時以降は入場無料
○ウェブサイト: http://www.seattleartmuseum.org/Exhibitions/Details?EventId=52626

*情報は2016年11月現在のものです