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オレゴン話のたね|バックナンバー 2008

オレゴン話のたね

オレゴン州在住の日本人ライターが、食、自然、文化と魅力あふれるオレゴンを、ローカルの視点から紹介。(2008年掲載記事)

*掲載の情報は( )に記された年月時点のものです。
*連載は2013年6月に終了しています。

現金をお忘れなく ファーム近くのバーガー・ショップ
(2008年12月)


今月のレポーター/大石洋子
夫の海外勤務でアメリカに暮らし始めて19年。以前は東海岸に住んでいたが、03年からオレゴンに。雨ばかりの冬にもだいぶ慣れた。趣味は映画鑑賞と読書。ビールも好き。

少し前に日本の新聞で、「いつも財布の中にいくら入れているか」という記事を読んだ。詳細は忘れたが、「現金を3万円くらい持っておくようにしている」という人がいちばん多かったと記憶している。日米では生活スタイルが違うから、単純に比較しても意味がないとは思いつつ、「3万円ですか!」と驚いてしまった。私の財布には20ドル札が2、3枚あれば良いほうで、数ドルしか手持ちがないということさえある。そんな状態で何日も過ごせるのは、クレジットカードだけ持っていれば事足りるアメリカならではだ。

そんなクレジットカード天国のアメリカで、時おり「現金しか受け付けない」というレストランに出くわして面食らうことがある。クレジットカードにすっかり慣れている客に現金払いという不便を強いるなど、よほど自信がなければできるものではない。強気の商売である。だからこういう店には、まず間違いなくハズレはないと思っている。
つい最近、ご近所さんに「ハンバーガーがおいしいよ」と教えてもらった「Helvetia Tavern」も、そんな店のひとつだ。場所を聞いたら、家からクルマで20分以上も掛かる。「遠いねえ」とつぶやく私に、「それでも行く価値はあるよ」とご近所さん。

ヒルズボロのファームが広がる地域にぽつりと立つ、40人も入ればぎっしりという小さい店。天井には、無数の野球帽がコウモリのようにぶら下がっている。ダウンタウン辺りのすかした店で出てくる、肉がごろりと大きいグルメなバーガーを期待してはいけない。ゴマ付きのパンに、薄いビーフのパテ、それからレタスにトマト。いたってシンプルでどこにでもありそうなのに、なかなかほかでは食べられない味だ。肉と野菜とパンのバランスがちょうど良く、また、自家製というマヨネーズ・ベースのソースが、出しゃばることなくすべてをまとめている。ごまかしや気負いの一切ない、正直者が作ったという感じのバーガーは、安心して食べられる。きびきびと働く店員達も、見ていて小気味良い。チーズ・バーガーが$4.25、ボリュームたっぷりのジャンボ・チーズ・バーガーは$7.75だ。

近くには農場が点在し、夏はベリー摘み、秋はパンプキン・パッチでにぎわう。これから12月は、クリスマス・ツリーが売り出される季節。自分達で切ったモミの木をクルマに積み、お腹が空いたところでハンバーガーをがぶり。我が家の年末定例行事になりそうだ。

Helvetia Tavern
10275 NW Helvetia Rd., Hillsboro, OR 97124  TEL: 503-647-5286
営業時間:11:00 a.m.~10:00 p.m. (金・土曜~11:00 p.m.) 休み:なし

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みんなで参加しよう 1歩先行くリサイクル・イベント
(2008年11月)


今月のレポーター/大石洋子
夫の海外勤務でアメリカに暮らし始めて19年。以前は東海岸に住んでいたが、03年からオレゴンに。雨ばかりの冬にもだいぶ慣れた。趣味は映画鑑賞と読書。ビールも好き。

9月から娘が通い始めたプリスクールでは、弁当と共に毎日、水筒を持たせるようにと言われている。繰り返し使える容器を、とのことなので、アルミ製ボトルを購入。子供向けのかわいらしい絵付きだ。娘に買ってやったら、自分用にも欲しくなって、ステンレス製ボトルを買ってみた(絵は付いていない)。フタに付いたリングに指を通してぶらぶら持ち歩くと、なんとなくエコな人になった気分。

ふた昔前くらいには、ペットボトル入りの水を持ち歩くのがおしゃれに映ったものだが、時代は変わった。大体、アメリカで売られているボトル入り飲料水の売上げ1位、2位の中身は、どちらもミネラル・ウォーターではなくてただの水道水なのだ(一応、浄化はされているらしいが)。それなら、マイ・ボトルに水道水を入れて持ち歩いても同じ、というか、そのほうがずっと経済的である。

それでも、ペットボトル入りの水を買う羽目になることがままある。中身を飲み切って、ボトル本体はリサイクル収集に出せるが、フタは出すことができない。これまで「捨てるしかないのかな」と思いつつ、ゴミ箱に捨てていたのだが、リサイクル先があることを知った。「マスター・リサイクラー・プラスチック・ラウンドアップ」というイベントである。これは、収集に出せないプラスチックを引き取ります、という催しで、今年は春と秋の2回、ポートランド近郊数カ所で行われた。

引き取ってくれるのは、ペットボトルのキャップに加え、ストロー、スーパーマーケットでもらうレジ袋、CDやDVD、ガーデン・チェアなどの屋外用家具や洗濯かご、などなど。プラスチック製品には大抵、三角の中に番号が書かれた印が付いているから、持ち込む前に、その番号ごとに仕分けしておくと良い。「これ、リサイクルできないのかな?」と迷うものや、番号が付いていないものも、当日、イベント会場にいるボランティアの人達に聞けば、行き先を教えてくれる。

“マスター・リサイクラー”と呼ばれるボランティア達は、9週間に及ぶ講座を受けたリサイクルの達人。ゴミ減らしやリサイクルなどに関する最新の知識を得ており、それを地域に広めていく伝道師の役割も果たす。イベントは、学園祭みたいなノリで楽しそうだった。次回開催は、来年1月か2月とのこと。

Master Recycler Plastic Roundup
ウェブサイト:www.masterrecycler.org
このウェブサイトから申し込んでおけば、開催情報をEメールで送ってもらえる。どんなものを引き取ってもらえるのか、前もって確かめてから出掛けよう。

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ホリデーのお買い物
(2008年10月)


今月のレポーター/大石洋子
夫の海外勤務でアメリカに暮らし始めて19年。以前は東海岸に住んでいたが、03年からオレゴンに。雨ばかりの冬にもだいぶ慣れた。趣味は映画鑑賞と読書。ビールも好き。

ここ半年の間、いちばん生活に影響していることと言えば、ガソリン代や食費の高騰だろう。私自身、クルマはなるべく使わないように心掛けるほか、無駄な洋服やアクセサリーなどは買わないようにしている。以前に勤務していた大手デパート、ノードストロームのマネジャー達に聞いても、売り上げが全く伸びないと悲鳴を上げている。 

しかし、この景気が悪い中、ポートランド近辺で、いわゆる“ブティック”が急増しているのをご存知だろうか。特にパール・ディストリクトは、その宝庫。ポートランド付近なら、商品の値段も決してお高くはない。 

中でも人気となっているのは、2年前にオープンした「バブル・ブティック」。NW Glisan St.&NW 13th Ave.に位置し、おしゃれなカフェやレストランがたくさん集まる場所にある。中に入ると、フレンドリーな店員さんが必ず挨拶してくれる。それは決して、慣れ慣れしく、売り上げを上げるためだけに挨拶してくるようなものではない。心から洋服を愛し、来店者にも「その洋服を感じ取ってもらいたい」という思いが込められている。

店内は、とても清楚で、アットホームな雰囲気。木製のタンスやショーケースが、店の温かみをより増しているように思える。オーナーのジェシカさんによると、同店のすべての商品は、ヨーロッパからの輸入物。有名なフランスのデザイナー・ブランド、Paul & Joeのカクテル・ドレスやジャケットも並ぶ。パシフィック・ノースウエストで唯一、同ブランドを扱う店だそう。早速、値段をチェックしてみたが、カクテル・ドレスは$200から、冬物のコートは$400から、カシミア100%のスカーフは$300から、そしてジーンズは$200からが目安。何よりも品質を重視しているという商品にしては、お手頃といったところではないか。安くて質の悪い、1年後には穴が開いてしまうような服を売るよりも、少し高めだが質が良く、長持ちするような服を中心に売っている。 

シアトルからの顧客も多いので、いつでもどこでも同店で買い物ができるようにと、オンライン・ストアもオープンしたばかり。少し早いかもしれないが、これからのホリデー・シーズン、大切な女性へのプレゼントや、何よりも自分へのご褒美に、少し特別な物を購入してみても良いのでは。 

日本では、食品の偽装表示など品質管理を疑問視する声が上がっている。そんな中、ポートランドでは、地域に密着し、質にこだわる小さなショップの存在感がますます増しているのを肌で感じる。

Bubble Boutique
1238 NW Glisan St., Portland, OR 97209
TEL: 503-219-0098
営業時間:11:00 a.m.~6:00 p.m.
(日・月曜12:00 p.m.~5:00 p.m.)
休み:なし 
ウェブサイト:www.bubbleboutique.com

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職人技が光る かばん修理の名店
(2008年9月)


今月のレポーター/大石洋子
夫の海外勤務でアメリカに暮らし始めて19年。以前は東海岸に住んでいたが、03年からオレゴンに。雨ばかりの冬にもだいぶ慣れた。趣味は映画鑑賞と読書。ビールも好き。

この夏、コントラクターに仕事をいくつか頼んだ。下見に来たのは6月初めだったが、見積もりが出るまでに3週間。それもこちらが催促してようやく。すぐ契約にサインしたが、実際の作業がまた、なかなか始まらない。再び催促すると、「今週やります。夏は忙しくて休みなしなんですよ」という返事。ようやくその週にやって来て最初の仕事を終えたが、まだ別の仕事が残っている。「来週やる」と言い残して帰ったものの、その「来週」には、もちろん来やしない。「今週来るって言ったから待ってるんだけど」とまたまた催促すると、「正直言って忙し過ぎて、お宅の仕事のための材料も買ってないし、準備作業も何もしてない。契約を破棄してほかの業者を雇うなら、それはそれで構わない」という返事が来た。

なんだそれ。ウチのが大した仕事でないから、大掛かりで実入りがいい、よそのプロジェクトを優先したい気持ちはわかる。が、どうにも解せないのは、この一連のやりとりに「ごめんなさい」のひと言がないことだ。こんなプロ意識ゼロの業者には、もう2度と仕事を頼む気がしない。まあ、こんな話は掃いて捨てるほどあるわけで、アメリカで受けるサービスは多かれ少なかれこんなもんだとあらかじめ思っていたほうが、精神衛生上よろしい。スタンダードは低く設定。これが、がっかりしないための心構えだ。

というようなことを考えていた折、非常にまっとうなサービスを受けて、心が洗われる思いがした。夫が15年来使っていた革製のかばんの取っ手がはずれてしまい、修理してくれるところを探していたのである。靴修理店などいくつか回ってみたが、どこも首を横に振るばかり。諦めかけていた時に、ある皮革製品修理店の人が、ダウンタウンにある「ポートランド・ラゲッジ・カンパニー」を勧めてくれた。

半信半疑で壊れたかばんを持ち込んでみると、「直せると思います」と言う。それから4日後には、修理が済んだという電話がかかってきた。取っ手はすっかり新しいものに替わっていたが、革の色がぴたりと合っていて、まるで違和感がない。裏地の切れたところもきれいに縫ってあった。

思えば、かばん屋が当たり前にかばん屋の仕事をしただけなのだが、そういうことができる店が少なくなっている今、希少である。ウェブサイトによれば、この店は1916年からかばん修理を手掛けており、今や国際かばん修理協会の理事を務めるそうだ。
プライドばかり高くてプロ意識の低い業者にうんざりさせられることが多い中、職人のきっちりした仕事に出合うと、感動すら覚えるのである。

Portland Luggage Company(ダウンタウン店)
440 SW 4th Ave., Portland, OR 97204
TEL: 503-226-3255
営業時間:8:00 a.m.~6:00 p.m.
(日曜11:00 a.m.~) 休み:なし
www.portlandluggage.com

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豊富なラインナップに 心躍るデリ
(2008年8月)


今月のレポーター/大石洋子
夫の海外勤務でアメリカに暮らし始めて19年。以前は東海岸に住んでいたが、03年からオレゴンに。雨ばかりの冬にもだいぶ慣れた。趣味は映画鑑賞と読書。ビールも好き。

日本の友人から「アメリカでは納豆なんて手に入らないんじゃない?」などと聞かれる。いや、日系スーパーには納豆など何種類も置いてある。そう答えると、友人は意外というか、期待外れというような表情をする。ポートランドは、日本人が住むにはありがたい街だ。同じアメリカでも、場所によっては何時間も掛けて日系スーパーまで買い出しに行く、などというケースもあるようだし、その昔、日系食材店があちこちになかったころは、ビールと食パンでぬか漬けもどきを作っていた、という話を聞いたこともある。

日本の食べ物を簡単に手に入れられることに感謝しなければいけない。が、人間というのは欲深いものだ。足ることを知るというのができずに、ないものばかりを考える。そして、「デパ地下が恋しいなあ」とぽつり、つぶやくのだ。
日本のデパートの地下と言ったら、際限がない。生鮮食品はもちろん、和菓子、洋菓子、和洋中の惣菜、乾物、調味料に香辛料……なんでもある。地下階に降り立っただけで、気分が高揚する。地方の物産展など開催されていると、すっかり興奮状態。残念ながら、アメリカには日本のデパ地下のようなところはない。けれども、規模がまるで違うにしろ、食に関して心躍る場所はある。

私がよく行くのは、デリ。NW 21st Ave.にある「シティー・マーケット」は小さな高級食材店で、野菜や果物、肉、魚、チーズやハム類、ワイン、それにパスタ・サラダやグリルした野菜などを扱う。イタリアの生ハムはスーパーのデリにもあるが、スライスの仕方を知らない店員が分厚く切ったり、周りの脂肪部分をそがないままスライスしたり、というのがしょっちゅう。しかし、ここではそんな経験は皆無だ。好みを言えば、「これはどう?」と、さっと1枚スライスし、試食させてくれる。チーズの種類も豊富で、こちらも試食しながら買うことができる。この店は、イーストサイドにある自家製パスタが評判の「パスタワークス」姉妹店。そのパスタも、もちろん売られている。

また、最近発見したのは、NW 22nd Ave.にある「エレファンツ・デリカテッセン」。生鮮食品はないものの、ハムやチーズ、惣菜っぽいサラダの種類が豊富だ。皿に3種類ほど載せてもらえば、ちょっとしたランチのでき上がり。サンドイッチやスープもある。注文すると釜で焼いてくれるピザもなかなかだ。焼き上がるまでにちょっと時間が掛かるけれど、薄いクラストにシンプルな具のピザは、びっくりするほどの洗練振り。

夕飯を作るのが面倒な時に、ちょっと立ち寄って重宝する、デパ地下代わりのグルメ屋である。

City Market
735 NW 21st Ave., Portland, OR 97210
TEL: 503-221-3002
営業時間:9:30 a.m.~7:00 p.m.
(日曜10:00 a.m.~) 休み:なし
ウェブサイト:http://pastaworks.com

Eastmoreland Golf Course
115 NW 22nd Ave., Portland, OR 97210
TEL: 503-299-6304
営業時間:7:00 a.m.~7:30 p.m.
(日曜9:30 a.m.~6:30 p.m.) 休み:なし
ウェブサイト:
www.elephantsdeli.com

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ゴルフをしよう!
(2008年7月)


今月のレポーター/大石洋子
夫の海外勤務でアメリカに暮らし始めて19年。以前は東海岸に住んでいたが、03年からオレゴンに。雨ばかりの冬にもだいぶ慣れた。趣味は映画鑑賞と読書。ビールも好き。

自分で始めるようになるまで、ゴルフは“おじさん達のスポーツ”のイメージであった。しかし、プレーする時の精神統一、爽快感、そしてじれったさは、まるで座禅の世界。それは、日本、ハワイ、オーストラリア、どこでも同じだった。違うところは、コース特有の自然と難関。同じゴルフをするにしても、土俵を変えることで新たな挑戦や楽しみができるゴルフは、ほかの球技にはない面白みがあると思う。オレゴンに来て1年。これまで行ったゴルフ場の中でも、特に魅力的な「イーストモアランド・ゴルフ・コース」をここに紹介したい。

ポートランドの高級住宅地、イーストモアランドにあるパブリック・コースは、1918年に設立された歴史あるゴルフ場。オレゴンでは3番目に古く、『ゴルフ・ダイジェスト』誌でパブリック・コースとしては全米トップ・クラスと紹介された。ゴルフ場の設計を担当したのは、カリフォルニア州にある有名ゴルフ場「ペブル・ビーチ」と同じ、H・チャンドラー・イーガン氏だ。

古い巨木、渓流のせせらぎ、柳のカーテン、そして春には満開の桜と、自然美を堪能できるだけではない。後半9ホールは、前半で楽した代わりとでもいうように、狭めのコースが上り下り、曲がりくねり、これでもか!のハザード三昧でチャレンジ精神を刺激する。下り坂の先に川越えがあったり、障害物をやっと抜けてもバンカーで囲まれたグリーンがあったりと、決して気を抜かせてはくれない。

そして、私にとっての魔のショート17番ホール。クリスタル・レイクを挟んでつつじ庭園があり、なんとも美しい光景だが、最初に回った時、そこからこちらをじっとうかがっている人達がいた。ただでさえ目の前の水がプレッシャーを与えるのに、どうしてあんなところに公園が、と恨めしくなる。ギャラリー用以外の何物でもないベンチまで設けてあり、彼らはそこに座り“瞬間”を待っていた。ギャラリー付き池越えは、なかなかの精神力が要求されることは言うまでもない。結果、ボールをふたつ池の中に沈めた……。ようやくグリーンにのせると、池の向こうのギャラリーから拍手がわいて、うれし恥ずかし、赤面を隠しながらお辞儀した。2回目の時は強風で、スコアどころではなかった。とにかく越えてくれ!と、ドライバーを持ち出す始末。

心と体がボロボロになっても、壮大な自然や動物との出合い(ビーバーの走る姿も!)を満喫して帰って欲しい。ボールを落とし過ぎて湖の水かさが増さないよう、ご協力を!

Eastmoreland Golf Course
2425 SE Bybee Blvd., Portland, OR 97202
TEL:503-775-2900
ウェブサイト:www.eastmorelandgolfcourse.com

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ゴミも減って良いこと尽くしのコンポスト作り
(2008年6月)


今月のレポーター/大石洋子
夫の海外勤務でアメリカに暮らし始めて19年。以前は東海岸に住んでいたが、03年からオレゴンに。雨ばかりの冬にもだいぶ慣れた。趣味は映画鑑賞と読書。ビールも好き。

昨秋、コンポスト(堆肥)マシンを購入。ガーデニングに熱心なわけではない。ただ、ゴミの量を減らせる、という理由による。マシンというと仰々しいが、直径1メートル弱の黒いふたが付いた底なしのプラスチック・バケツのようなもの。下のほうにスライドする窓が付いていて、生ゴミを入れて順次でき上がる堆肥をそこから取り出せる仕組みだ。スワン・アイランドにある「メトロ・ペイント」という店で$35。正規の値段は$80だが、エコ・ライフを地域自治体が応援するということらしい。コンポスト・ターナーというかき混ぜ棒($15)も一緒に購入した。

マシンは、庭の隅にセット。生ゴミを狙うネズミやアライグマなどが入り込まないように、地面に接する部分を土でしっかり固めた。あとは、キッチンから出たゴミや落ち葉などを入れて、日々かき混ぜるだけ。付属の小冊子によれば、「緑色のもの(窒素を多く含む)」と「茶色のもの(炭素を多く含む)」を1対1から2くらいの割合で入れるように、とある。緑色のものとは、刈った芝生、野菜や果物の切れ端、コーヒーやお茶のかす、卵の殻など。茶色のものは、枯葉や土、細かく切った新聞紙やペーパータオル、コーヒー・フィルターなどだ。ネズミなどが寄り付きやすくなるため、肉や魚、乳製品や油ものなどは入れないほうが良いそう。においが気になるのでは……と心配していたが、動物性のものを入れないせいか、あるいは微生物によって片っ端から生ゴミが分解されるためか、イヤな臭気が周囲に漂うことはない。

コンポスト作りを始めて、我が家のゴミは4割減。以前は、週に1度の収集で32ガロンのゴミ・カートのふたが閉まらないこともあったが、今はスカスカだ。キッチンのゴミ箱は、食品が入っていたリサイクル不可のポリ袋や容器のみとなった。これらをいかに減らすかが、今後の課題である。

毎日のように野菜ゴミを入れているから、肝心のコンポストは完成していない。一時的だとしても、もう野菜ゴミをコンポストではなく普通のゴミ箱に入れる気にはならないので、マシンがふたつあると理想的。裏庭でマシンの中をくりくりかき混ぜて、もわっと蒸気が立つ(うまく発酵すると内部温度が上がる)のを見ると、ちょっと心が躍る。コンポストができ上がったら、庭木の根元の土に混ぜるほか、家庭菜園も造ってみるつもり。コンポストひとつで、生活が少しずつ変わり始めた。

Metro Paint
4825 N. Basin Ave., Portland, OR 97217
TEL: 503-234-3000
営業時間:8:00 a.m.~4:00 p.m.(土曜7:00 a.m.~)
休み:日曜
ウェブサイト:www.oregonmetro.gov(Sustainable Livingの項を参照)

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老舗レストラン 1号店のうれしい話
(2008年5月)


今月のレポーター/ユカ
大阪生まれの大阪育ち。友人とおいしいものを食べながら、ワインなどお酒を飲むことがいちばんの楽しみ。
いつか、夫と共に自分達のレストランを持つのが夢。

ポートランドを拠点に国内だけで80店舗を持つシーフード・レストラン「マコーミック&シュミックス」(以下M&S)と言えば、ノースウエスト在住者にはちょっと名の知れた店。

流行のおしゃれなレストランに比べると、地味なように思われるかもしれない。しかし、新鮮な食材はもちろんのこと、各店舗で経験豊富なシェフが腕を振るい、フレンドリーできめ細やかなサービスが提供されるM&Sは、今も変わらず、古くからの常連客を喜ばせている。

1号店のオリジナルM&Sがポートランドにオープンしたのは29年前。同レストランで指揮を執るのは、オレゴン生まれの料理人、ライアン・スミス氏だ。17年のシェフ歴を持ち、誰よりもオレゴンを愛する彼だが、日本人女性と結婚してみそ汁の味を覚えると共に、日本を始め世界各国を回り、高級店から庶民的な店までのありとあらゆる料理の知識を吸収してきた。

メニューは毎日、仕入れる食材により決まり、30種類以上もの魚料理、質の良いステーキと、極上の皿の数々が並ぶ。日本人好みの料理も多数。

前菜の生ガキにはクマモト・オイスターを。小ぶりながらもジューシーかつ濃厚な身は、生ガキはちょっと苦手という人も、これなら!というひと皿。3種類のソースが付くカラマリのフライは大変なボリュームで、カラマリには一家言ある私でも大満足。

ポート・ワインを弱火で長時間煮詰め、少し甘酸っぱく仕上げたソースでいただくメインの魚料理は、リッチな中にさっぱり感が漂い、美味。旬の脂がのった時期に、しょう油だれに浸け込み、グリルでさっと焼き上げられたオレゴン産ビンナガマグロは、仕上げのワサビ入りバターが、そのおいしさを引き立てる。パスタなら、ペスカトーレを。さまざまな魚介がふんだんに使われ、だしが出たスープが何とも言えない。

5月には、ワイルド・サーモンのシーズンが到来。シェフがどんなメニューをクリエイトするのか楽しみである。

老舗らしいバーでは、10年以上勤めるバーテンダーがオーダーごとにジュースを搾り、シェイカーを振りながらカクテルを作る。ビールの種類も豊富。ハーフ・パウンドのチーズバーガーが$1.95になるハッピー・アワー(毎日4:00 p.m.~6:00 p.m.、9:00 p.m.~10:00 p.m.)も人気だ。

The Original McCormick & Schmick’s Seafood Restaurant
5736 NE 33rd Ave., Portland, OR 97211
TEL: 503-249-3983
ウェブサイト:www.kennedyschool.com

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困った時のケネディー頼み
(2008年4月)


今月のレポーター/大石洋子
夫の海外勤務でアメリカに暮らし始めて18年。以前は東海岸に住んでいたが、03年からオレゴンに。雨ばかりの冬にもだいぶ慣れた。趣味は映画鑑賞と読書。ビールも好き。

何もすることがない週末の1日、というのがたまにある。若かったころには、寝られるだけ寝て昼過ぎくらいに起き、テレビを見てボケッとして、その辺にあるものを食べて……という過ごし方ができた。しかし年を重ねた今は、なかなかそういうことができない体になっている。おまけに、エネルギーがあり余っている4歳の娘と外出好きの夫が、1日中だらだらしていることを許してくれない。

でもねえ、天気もいまひとつだし、遠出もできないし。困ったなあ。どこ行く? そんな時に、「じゃあ、あそこに行こう」という場所がある。ダウンタウン・イーストサイドのケネディー・スクールだ。

これは、1915年に開校し、1980年に閉校した小学校を改装して造ったホテル。オレゴン州、ワシントン州の古い建物を次々に改装しては、ファンキーなホテルやブリュワリーに仕立てて繁盛させている実業家、マイク&ブライアン・マクメナミンズ兄弟の手になるものだ。
板張りの長い廊下。外の風景が少しゆがんで見える古いガラス窓。「廊下は走らないように!」と注意する先生の声が聞こえてきそうで、懐かしい気持ちになる。

廊下の壁には、たくさんの絵が掛かっている。マクメナミンズならではの、ちょっとレトロで風変わりな絵ばかり。ひとつひとつ見ながら歩いていると、まるでギャラリーにでも来たようだ。この学校に通っていた子供達の古い写真などもある。

ポップコーンのにおいにつられて廊下を歩いていくと、たどり着くのは映画館。その昔の講堂だ。普通の椅子だけでなく、ふかふかのソファーもたくさん用意されていて、しかもテーブル付き。入り口わきの売店でピザなど買って、ゆっくり食べながら映画を見られる。

思えば娘が生まれてすぐのころ、この映画館に足繁く通ったことがあった。マミー・マチネという、赤ん坊連れOKの映画を見に来ていたのだ。上映されていたのはどれも封切られてから少し時間が経った作品ばかりだったが、映画館で映画が見られるというのがありがたかった。あちこちでひっきりなしに赤ん坊が「ふぎゃー」と泣き声を上げていた館内は、みんなお互いさま、という暗黙の連帯感に満ちていたものだ。

中庭の見えるレストランでランチをして、映画を見たり、ホテルの中をぶらぶらしたりしていると、半日くらいあっという間に過ぎる。
困った時にしか足を運ばなくて申し訳ない……と思うが、いつ来てもケネディー・スクールは、頼りになる古くからの友達みたいに私達を迎えてくれるのである。

McMenamins Kennedy School
5736 NE 33rd Ave., Portland, OR 97211
?503-249-3983
ウェブサイト:www.kennedyschool.com

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ブリュワリーで味わう できたてパンに舌鼓
(2008年3月)


今月のレポーター/大石洋子
夫の海外勤務でアメリカに暮らし始めて18年。以前は東海岸に住んでいたが、03年からオレゴンに。雨ばかりの冬にもだいぶ慣れた。趣味は映画鑑賞と読書。ビールも好き。

パール・ディストリクトにあるブリュワリー「ブリッジポート」。ここでおいしいビールが飲めるのは今や常識だけれど、パンも作られていることはあまり知られていないかもしれない。

「ビール屋でなぜパンを?」と不思議である。が、どちらも麦が材料だし、材料を混ぜて寝かせて発酵させて……という工程にはさほど違いがない。それで、ブリッジポートでは、2年ほど前からパンも作り始めたのだそうだ。

ベーグル、デニッシュ、マフィンやカップケーキなどが並ぶ中、変わり種はセイヴァリー・スコーン($1.75)。スコーンと言えば、レーズン入りのほの甘いクッキーとパンを足して2で割ったようなものを思い浮かべるけれど、これは甘くない。小さく切ったベーコンやタマネギ、ニンジンなどの野菜が入っていて、あっさりした“おかずパン”という感じ。

クロワッサン($1.90)も秀逸だ。アメリカン・サイズに慣れた目には、小ぶりでちょっと物足りない気もする大きさ。かじりついてみると、外側の皮がパリパリとはがれ落ち、空気をたくさん含んだ内側はサクサク、そしてバターがふわりと香る。

アーティザン・ベーカリーと呼ばれるこだわりパン屋が多いポートランドだが、クロワッサンがおいしい店は、なかなかお目に掛かれない。図体ばかりが大きくて、ちっともサクサクしていない、形ばかりの三日月パンをクロワッサンと称して売っている店に、何度がっかりさせられたことか。ブリッジポートのクロワッサンを食べていると、ああそうだ、クロワッサンというのは、食べているうちにこんなふうに皮がはらはらと落ち、指がバターでギラギラしてくるものだったな、と思い出すのである。

チョコレート・クロワッサン($1.90)は、中に挟んであるチョコレートが硬過ぎず軟らか過ぎず、量もきわめて適正。クロワッサン生地のサクサク感とダーク・チョコレートの控えめな甘さが、最後のひと口まで楽しめる。

ブリッジポートのブリューパブ&ベーカリーは、その昔にロープ工場だった建物をつい最近改築したばかり。温かみのある大きな柱やレンガの壁を残しつつ、モダンな雰囲気に仕上げている。

ベーカリーは、毎朝7時からオープン。9時過ぎからは、ショーケースにパスタ・サラダやキッシュも並ぶ。週末のブランチにも最適だ。

Bridgeport Brewpub + Bakery
1313 NW Marshall St., Portland, OR 97209
TEL:503-241-3612
営業時間:7:00 a.m.~12:00 a.m.(金・土曜~1:00 a.m.、日曜~10:00 p.m.)
休み:なし
ウェブサイト:www.bridgeportbrew.com

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*掲載の情報は( )に記された年月時点のものです。

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