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他者から思わぬボディータッチをされて以来人との距離感がうまく取れず困っています

さまざまな分野の専門家が読者の皆さんの質問にお答えします。

他者から思わぬボディータッチをされて以来人との距離感がうまく取れず困っています

< 回答者|ワシントン州認定心理カウンセラー 戸村みゆきさん >

適切な距離感を保つ力を養う
良好な人間関係は、自分と相手が、互いの心と身体の適切な距離を持つことから始まります。距離感とは相手があってのことですが、今回は自分から見た相手との距離感に焦点を絞ってお答えします。
 距離感をつかむ力を持つことは、人間関係における大切な技術です。相手と適切な距離を取ることは、自分の心身の領域を知ることから始まります。
 
自分と相手が互いの心身の領域を尊重することが健康的な関係の基本ですが、一方または両方が相手の領域を尊重することに失敗してしまうことがあります。失敗の度合いは関係の修復が可能な小さな間違い(例:ドアをノックせず開けてしまった)から、修復にエネルギーを注ぐ必要がある中程度の間違い(例:親密さの度合いを見極められず、現在の関係を超えた身体的接触をしてしまった)、修復が非常に難しい大きな問題(例:執拗なハラスメント、暴力)などさまざまですが、いずれにしても問題の度合いに見合った形で人間関係を仕切り直す必要があるでしょう。
 
自分の距離感は、相手が誰かということ(例:親、子供、配偶者、恋人、友人、ビジネス仲間、知り合い、元配偶者、近所の人、他人)と、相手にとっての自分の役割(例:父、母、娘、息子、妻、夫、友人、教師、学生、上司、患者)によって変わります。それぞれの関係性の中でお互いが自分の領域を守り、相手の領域を尊重することができれば、お互いに役立つ関係を保ったり深めるたりすることにつながるでしょう。
 
上記を実践するには、身体と心の距離感を理解することも大切です。

●身体の距離感:他者と接する時に、自分の肌を超えたどの辺までの距離が自分の身体的な領域だと感じるでしょう。例えば生活のさまざまな場で、誰がどこまで自分の身体に近付いてきた場合に近過ぎると感じますか。反対に誰がどこまで自分から離れたら遠過ぎると感じるでしょうか。近過ぎる・遠過ぎる、望まない身体接触や身体接触の欠如などを相手の身体から感じるようであれば、それを効果的に相手に伝えることはできますか。相手はあなたの希望を尊重してくれるでしょうか。

●心の距離感:誰とどこまで自分のプライベートな情報をわかち合いたいですか?あるいは誰のどのような言葉で幸せを感じたり励まされたりするでしょうか。反対に誰のどのような発言で不愉快になったり傷ついたりしますか。自分の気持ちを尊重してくれる、自分にとって大切な相手には素直に心を開くことができますか。反対にプライバシーを侵害してきたり、不愉快な発言をする人にはそれを止めてもらうように伝えることができるでしょうか。そして相手はあなたの希望を尊重してくれますか。

自分の領域を把握してお互いを尊重する

自分の心身の領域を把握することは、自分を知ることにつながる作業で、練習を重ねれば習得できる技術です。好奇心を持って楽しみながら自分のものにしていってください。深刻な場合は専門家に相談することをおすすめしますが、最後に、その場合の注意点をお伝えします。
 
心の悩み、心理的疾患の問題を取り扱う職業は心理系、社会福祉系、教育学系、精神科系に分かれています。しかし、役割が重なることも多く、一般の方にははっきりとした違いがわかりにくい部分もあると思います。まずは家庭医に相談するのもひとつの手です。その場合は、薬の処方とマネージメントのための精神科医や、カウンセリング・サイコセラピーを専門とするサイコロジストかライセンスのあるカウンセラーを紹介してもらうことを視野に入れておくと良いでしょう。
(2013年5月)

ワシントン州認定心理カウンセラー 戸村みゆきさん


ワシントン州認定アジア・パシフィック・アイランド精神衛生専門家、高齢者精神衛生専門家。2002年シアトル大学心理学科修士課程卒業。2010年セイブルック大学心理学博士課程卒業。同大学博士論文賞候補者。学会での発表、出版、セミナーなどの経験多数。

Miyuki Tomura, LLC / PhD, Psychologist