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和のインテリアで空間を生かす

インテリア

 
2005年5月のテーマ 
和のインテリアで空間を生かす
  世界の人々が注目する和小物

日本で、アメリカで、インテリア・デザイナーの活動をして気が付いたことに、和のインテリアは世界的にとても人気があるという事実があります。あるきっかけが縁で、和のインテリアをとても上手に表現しているイギリス人ご夫婦のご自宅のインテリア・デコレーションをお手伝いしたことがありました。この方達のリビングへ入ると、目の前に日本製(アンティーク)の屏風や、和紙が使われているあんどん風のフロア・ランプが置かれていました。白い壁に良くマッチしていて、ディスプレイのように空間の中に溶け込んでいる、置き方もうまい……、センスの良さに感心させられました。

そんな部屋にはどんなカーテンが合うのでしょう? カーテン地はなんと、濃紺の浴衣地です。とても素晴らしいアイデアで、でき上がったカーテンはきれいで個性的と、あるテレビ局でも紹介されたことがあります。和のテイストを取り入れたインテリア・デザインは、これからますます世界に広がっていくであろうと確信しました。

花をいけるだけで、もうそこに和のテイストが現れ、部屋の中に溶け込んでいく。折り紙を飾ってみる、お気に入りの焼き物や器を置いてみる、そんな工夫が、空間全体にインパクトを与えます。和のシンプルなデザインの美しさ、素材の良さ、そして日本独自の塗装の仕方など、すべての要素が大きく影響するのです。特にアメリカに住んでいると、意外な組み合わせの発見があるので、伝統文化や芸術も含めながら、インテリアを見直していきたいのものです。

和小物

和小物

 
  障子のある空間

アメリカのメジャーなインテリア雑誌などを見ていると、インテリア、そして小物、食までと、和を意識した物がかなり目に付くようになりました。もちろん、以前から“禅”を意識したインテリア装飾品や布地などは、欧米で人気がありました。特に着物はその代表で、とても魅力的に感じるのだと思います。

欧米では、相変わらずトラディショナル(クラシック)スタイルを好む人達も多い反面、装飾カーテンではなく障子を取り入れ、その外側に箱庭を造るといった空間が好まれる傾向が出てきています。障子は、欧米のインテリア・スタイルにとってもマッチしやすく、見た目もハリのある美しい空間作りに貢献することから、大変人気です。その障子紙は、日光の当たり方により部屋に流れ込む光が変化したりと、とても繊細なシーンを私達に見せてくれます。和室の畳、欄間、床の間、生け花から陶器までと、日本人にとって、生活に当たり前のようにある物の魅力を、私もアメリカで仕事をしながら強く感じ取っています。先入観念に囚われずに、クリエイトする喜びや楽しみを見出す……。和の文化は、粋であり繊細であり、高い技術でありという集合体。この独特の文化は、今世界へ広がりつつあると感じています。欧米の家具や装飾品とうまく和をミックスさせたデザイン、少しスタイルを和風に改良するとヒットするのではないでしょうか。

最近、ニューヨークでは日本食を取り入れたレストランがとても人気で、数ヵ月先まで予約でいっぱいとか……。次世代の衣食住のキーワードは、「健康で快適」「美への追求」。クオリティー・オブ・ライフへの人々の意識がますます高くなっていくこの時代、日本の良い物が世界に浸透し、新しい時代の文化のひとつになる予感さえします。

長い間、私のインテリアの記事を読んでくださった読者の皆様、今回が最後となりました。これからはデザイナー業に専念して参ります。またいつか、新しい経験を含めて、皆様に面白い記事をお伝えできますように頑張っていきたいと思います。ありがとうございました。お元気で……。

和小物

赤池公江:
アメリカ・インテリア・デザイナーズ協会会員。ホテル・ニューオータニ(日本)、モデル・ルーム、駐在員宅、一般住宅などを手掛けて好評を得る。『モダン・リビング』『グラッツィア』など、数々の雑誌で紹介され、シアトルの住宅事情についてエッセイも執筆。ウェブサイト:www.afengshuiinteriordesign.com